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令和百物語  作者: みるみる
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第七十三夜 アセンション


これまで本など読んだ事がない俺だったが、社会人になってからは自己啓発系の本を時々読むようになっていた。そのうちスピリチュアルな本にもはまっていき、ついにはネットで知り合ったヒーラーさんのスピリチュアル関連の講習にまで行くようになってしまった。


それで、今も田舎からわざわざ東京までやって来て、2万円もする講習を受けているのだった。


「皆さん、今日はよく来てくれました。」   


人気の女性ヒーラー、有栖川さんが壇上に上がると、参加者30人ほどが拍手で彼女を出迎えた。


僕がネットで知り合ったのが、この有栖川さんだ。ネットの写真よりも年配でケバいのはご愛敬で。


「‥では、私の講義はここまでとします。せっかくなので、皆さんで輪になって繋がりませんか?」


有栖川さんがそう言うと、会場の隅に控えていたスタッフ達が何人かやって来て、長テーブルを片付け始めた。


すると、参加者達も各自椅子を持って動き出し、少しずつ間隔を調整して大きな輪を作るのだった。


「‥では今から私が見るビジョンを、皆さんと共有したいと思います。」


彼女がそう言って両隣りの人と手を繋ぐと、暗黙の了解で皆んなも手を繋ぎ始めた。


「‥目を‥閉じて下さい。‥‥今皆さんは暗闇の中にいます。暗闇の中で‥‥ひとりぼっちでいます。‥‥不安ですね。でも、後ろから光がやって来ました。とっても明るい光です。‥あなたはその光に包まれました。‥先程までの不安な気持ちは消えて‥‥この上ない幸福感に浸っています。」


地震?会場が大きく揺れています。


ガタガタガタ、ガタンッ、ガタンッ、


ガタガタガタガタガタガタガタ、ガターン、ガターン、ガタン、


「‥‥。」


「‥皆さん、今大きな揺れがありましたが安心して下さい。今は揺れも止まりました。それに私達は誰も怪我一つ負っていません。」


参加者達は相変わらず手を繋いだまま、彼女の話に聞き入っていた。


「‥私達はアセンションしたのです。‥‥ゆっくりと目を開いて下さい。目の前には、どこまでも広がる花畑と天使達が見えます。」


俺は目を開いて、目の前に広がる光景を見て驚いた。


確かにそこには光輝く世界が広がっていた。花畑は微かに良い香りもしたし、空には天使がいた。


「私達は、選ばれたのです。心の美しい私達は、災害やウイルスや戦争のある地球での生活から、解放されたのです。コングラチュレーション!おめでとうございます!」


彼女がそう言った途端、俺も含めて会場にいた参加者達が大歓声をあげた。


俺達はどうやらアセンションに成功して、滅びゆく地球から、この光輝く世界へと救い出されたのだった。


俺は全ての苦悩から解放されたのだ!!




「‥‥ここでしょ。地震で建築現場の足場が倒れてきて建物が潰れたのって。‥中にいた人達が全員亡くなってしまったのよね。」


「そうそう、ここなんだけど。地震のあった日も何かのセミナーをやってたみたい。‥‥亡くなった人達皆んな輪になって手を繋いだままで発見されたってニュースでやってたわよ。」


「‥‥可哀想にね。運が悪かったのね‥。」


潰れた建物のあった場所には、沢山の花が供えられていた。辺りには微かに菊の香りが漂っていた。


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