表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和百物語  作者: みるみる
54/100

第五十四夜 夫デスノート


私の家には一日中お酒を飲んでゴロゴロ寝ている父と、働き者の母がいます。


私が小学校から帰ってくると、いつも母は居なくて、かわりに父だけがいました。


奥の部屋でいびきをかいて寝ている父を、起こさないようにそーっと歩いて台所へいき、冷蔵庫からおやつをとって食べました。


「やった!お母さんの作った蒸しプリンだ。」


私は嬉しくて、思わず声に出して喋ってしまいました。


「おい、うるせー!殺すぞ、黙れ!」


私の声は、案の定父を起こしてしまいました。


「おい、水!」


「‥はーい。」


「飯は?」


「まだだよ。」


「今すぐ作れ!」


「えー、今から友達と約束が‥‥。痛い、痛、痛‥。」


‥‥私は、友達と宿題をしたり遊ぶ約束をしてましたが、父の機嫌が悪いので電話で断りました。


私は先程父に捻られた腕をさすりながら、卵と冷や飯を冷蔵庫から取り出して、父のチャーハンを作りました。


私は父の食べた食器を片付けると、お風呂掃除をして、洗濯物を取り込みました。


父は、居間でTVを見ながらまたお酒を飲んでいます。テーブルの上の灰皿には、沢山の煙草の吸い殻がのっていました。


父は、今吸ってるタバコをその吸い殻の上にのせると、また次のタバコを吸い始めました。


ガチャ、


「ただいま。沙羅ちゃん、遅くなってごめんね。」


「お母さん、お父さんのご飯済んだよ。お母さんのチャーハンもあるよ。お風呂もわいてるから。」


「沙羅ちゃん、ありがとう。」

   

私は母がご飯を食べてる間に洗濯物をたたんで、箪笥にしまいました。


そして、自分の宿題を済ませてから、明日のお茶をわかしました。


母がお風呂を済ませると、自分もお風呂を済ませて、母と一緒に布団に入ります。


「お父さんまたお風呂に入らずに寝ちゃったね。」


「‥きっと疲れてるのよ。お母さんも寝るよ。沙羅ちゃん、おやすみ。」


「あっ、お母さん携帯貸して。動画見ながら寝るの。」


「‥ほどほどにね。」


「はーい。」


私は隣で母が寝たのを確認してから、携帯の『夫デスノート』のサイトを開きました。


私は母になりすまして、この夫デスノートに毎晩書き込みをしてはストレスを解消していたのです。


私の書き込みを見てみると、55いいねが付いてます。


今日も書き込みをしようと思います。



〝死ね死ね!急性アル中でもいいから死ね!″

本当にやだ!私だけ仕事に行かせて、自分は一日中酒飲んでゴロゴロ。お風呂も入らずにまた寝てる。汚い!いったい何日風呂入ってないんだよ!家族の為に死んでくれ!チャーハンに「○の素」と「塩胡椒」を沢山入れてやった。水に「○ソニン」砕いて入れてやった。″


ヨシ!


私は夫デスノートに書き込んでから、寝ました。



「沙羅ちゃん、寝た?」


スースー、


私は沙羅が寝た事を確認してから、自分の携帯を沙羅の手から取り、検索履歴から沙羅の書いた夫デスノートを開きました。


書き込み時間と内容からすぐに沙羅の書き込みだと分かりました。


私は沙羅の夫デスノートを開き、来てるコメントを読みました。


コメントには、沢山の応援と共感メッセージが届いていました。私はそれらを読んでから、


「明日は旦那にもっとアルコール度数の高いお酒を買ってきてあげなきゃ。お酒のつまみはお惣菜屋の天ぷらとカツにして、ご飯には沢山のお塩入りのふりかけをかけなきゃ。」


なんて考えながら眠りました。




三ヶ月後、


「沙羅ちゃん、もう寝た?」   


スースー、


私は沙羅の手の中から、携帯を取り、沙羅の書き込んだ夫デスノートを開きました。


〝やっと死んだ″

旦那がやっと死んだ。酒飲んだまま倒れてるのを朝発見。病院でそのまま死んだ!


もの凄い数の「いいね」とコメントが届いていました。


私は沢山の祝福コメントを読みながら、


「ありがとう。私と娘は夫の保険金と遺族年金で親子二人充分食べていけます。次はあなた達の番よ。頑張って。」


なんて思いながら眠りにつきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ