初恋とチョコレート3
さて、ウルフのところから帰ってきたトマコだが、なんだか腑に落ちない。日曜日のロマとの市場めぐりは楽しみで、ウルフがついてくるというまで嬉しいだけだったのだ。
「ねえねえ、私、なんでがっかりしてるのかな。」
一通り聞かされたネズミはため息をつく。
「お前な、それはロマとのデートに邪魔が入ってがっかりしたんだろうよ。」
「へえ!?で、で、で、デートぉ!?」
「トマコはロマが好きなんだろ?」
「えええええええ!!!す、す、す、す、好きだけどもさ!!」
「ロマと会う時はいつもソワソワしてるだろ?」
「う、うん。」
「んで、ロマと会うと嬉しくてちょっとキューンとしたりするんだろ?」
「な、な、な、なんでわかるの!?」
「そりゃ、あれだ。恋だからさ。」
えっへんと威張りながらネズミはそう言った。トマコはその言葉にストンと気持ちが落ち着いた。そっか、私、ロマ先輩に恋してたんだと。
「でも、まあ……。」
枕に顔をうずめて悶えているトマコを見ながらネズミは「向こうはトマコのこと対象外だけどな。」という言葉を飲み込む。そりゃそうだろう、あの、天下のウルフィファルの婚約者だ。まあ、それがなくとも、まったく男受けする感じはないのである。
「そうかあ!恋かあ~~。」
ムフフ~。とベッドの上をグルグルしているトマコは幸せそうだ。
「しかし……。」
随分とウルフはトマコを気に入っているんだな。とネズミは感心した。あのウルフィファルが婚約者のためとはいえ市場の買い物に付き合うなんて。しかし、なんだ。その好意に気付かない、甘えないトマコが可愛いのだ。この可愛さは俺にしかわからねぇとネズミは満足げに思った。
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「ごめんねぇ、ほんと、なんでついてくるのか分かんないんだけど。」
次の日、トマコは昼食の時にヘレナに謝った。別に日曜はネズミが言うようにロマとデートなんてもんでもなくて当初の計画では、ロマ、ヘレナ、トマコの三人にモリスンがくっついてくるといういつもの感じだったのだ。でもいまじゃあ、「デート」という響きに酔いしれるトマコだ。
「ちょ、ちょっと、まったああああ!!!」
「なんだね、アラン君。うるさい。」
「トマコ、今、う、う、う、う、うウルフィファル様が来るって言った!?」
「うん。そう言うことになった。」
「僕も行く!いや、行きたい!!行かせてください!!!」
「えーこれ以上ついて来たらメンドクサイ。」
「ほら!市場なんて危ないし!僕、トマコの護衛でしょ!?」
まあ、これ以上お邪魔虫が増えたってもう手遅れなほどだな、とトマコ。ウルフの冷たい視線を少しでも薄められるならこの際アランも入れてやるかとさらに上から目線。
「護衛なんて思ってないくせに。ま、アランは親友だから、来ていいよ。」
「え……。う、うん。」
ふいにでた言葉にアランは少し固まった。トマコは全く気にしていない言葉だがアランには衝撃的だった。
ヘレナのことをそう思っているのは知っている。でも自分は日頃ちょっといじめたりしている自覚があるのだトマコに良い風に思われてないかも知れないと思っていた。最近はトマコのことをかなりアランなりに買っている、努力家だし、威張らない。不意に優しくて、何よりも一緒にいると楽しいのだ。
「ぼ、僕ってトマコの親友?」
「え、そう思ってたのは私だけ?」
同じ釜の飯を食べた仲じゃないか……と変に確信していたのに聞き返されて動揺するトマコ。
「いや!親友だ!当たり前じゃないか!」
「そうだよね!あーよかった。」
なんだよ、紛らわしいとトマコが胸をおろしているとトマコの袖口が引かれた。
「え、ヘレナも親友でしょ?」
その言葉にヘレナも真っ赤な顔をしてうんうんと頷いた。
「二人とも変なの。」
ガハハと笑うトマコに珍しくアランとヘレナが顔を見合わせてヘレナは下を向いて、アランはそっぽを向いた。




