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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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トマコの誕生日3

「うう。」

肩が鉛のように重いトマコはベッドで呻くしかない。

「なんなんだ、あの、集団は……。」

それもそうだ。未来の筋肉マッチョ集団の中にいるトマコはポンぽこタヌキだ。

アランは基礎体力メニューをトマコの部屋に嬉々として貼って行っただけで労いもない。気持ちを分かち合おうにもニートのネズミは何もいうまい。

「このまま生き残れるのかな……。」

しかし、生き残ったとしてもマッチョトマコの出来上がりだろう。

「うう。」

こんな時は、とトマコはベッドの横の木箱に手を伸ばした。よろよろと木箱を開けるとそこにはウルフからクスねてきた甘味が入っている。キャンディー、キャラメル、ゼリー……。

「あれ……!?」

カサりと音がしてトマコは探る手を止めた。

「……。」

思わず体を起こして木箱の前で正座する。

「しまった……。」

トマコの手にはウルフからの一枚の写真……指令書があった。

「週末まであと、3日しかない。……この人がどこにいるのかも、この学園の地図さえわかんない。」

頭を抱えたトマコが次にとった行動は……

「……取りあえず、……。」

寝ることだった。


*****


怒涛の2週間ほどが過ぎていった。

チャラりらーん。トマコは筋力がUPした。とほほ。なんだかんだと授業についてくるトマコをクラスのメンバーも面白そうに眺めていた。ついていかなくたって女の子だもん、で済んだのに、それを知らないトマコは持ち前の素直さでコツコツとがんばっている。変に真面目なものでさぼりとか元々頭に浮かんでこない性質らしい。「男色家のウルフィファル様が選んだのだから……。」という声もちらほらと聞こえて来ているのをトマコは知らない。……奴ら、脳筋だから。太陽に向かって走る青春な輩だから、努力と根情を愛しているんだよ、トマコよ。


幸いなことに例の指令書のことをウルフに問われることもなかった。ウルフ邸に行くのに少し遅刻して怒られることはあったが、新作のお菓子の試食があったのでそれほどウルフの機嫌も悪くなかった……とトマコは思う。


トマコのクラスは軍人コースだが、その頭には「エリート」が付く。軍人だけの学校なら校外に専門校があるからだ。トマコは学園内でのクラスメートの姿しか知らない。その上数も多いし、汗と埃にまみれた筋肉マッチョでしかない。制服も一限が始まる前にトレーニングウェアに着替えるし、暑いときは皆基本上半身は白いタンクトップのようなものしか着ていないことが多い。前までは裸の奴もいたが「トマコ」に対する一応の礼儀としているらしい。まあ、そんなこんなでただでさえ多いクラスメートをトマコが学園の外で見つけられるわけもなく、その週末の休みの日はウルフに命令された最近女子で流行っているスイーツを買い出しに街をふらつくトマコだった。


「ここですね。」


「左様ですね。」


トマコのお供はお花畑のモリスン。トマコはアランとヘレナで行くつもりだったが、なぜかモリスンがごり押ししてきたのである。もちろんモリスンはトマコの誕生日プレゼントを物色するのにヒントを得ようとしての行動なのだが、その手段が二人を睨み付けて制するという強引過ぎる行動でトマコはドン引きだった。

 最近ウルフィファル邸でのトマコ……いや、トマコはかなりの甘党で通っている。ま、当然の結果ではある。基本週末はウルフの私室で過ごすのだが、トマコにはお菓子の情報を集めてウルフに献上するという使命もついて回る。最初の頃はその辺のものでも嬉しがられたが、最近はウルフも舌が肥えてきたのか、マンネリしたものでは満足してくれなくなっていた。「めんどくせぇ。」とはトマコ談。しかし、ウルフの甘党を誰に知られて良いわけでもなく、ヘレナのか細い声をヒントに「ちょっと変わったお菓子を出す店が出来た」という情報を得て裏路地を探っていた。


「小さいけど可愛いな。」


こじんまりとした目の前の店は小さな看板がかかっているだけで知らなければ見落としてしまいそうな所にあった。トマコはこういった素朴なほうが落ち着くし、可愛いと心から思ったが


「地味ですよ。」


とフリルとお花畑の執事は言った。……モリスンの趣味と自分の趣味と交差する時は来ないと断言できるとトマコは思う。扉を押してトマコは店の中に体を滑り込ませた。少し薄暗い店の中にはガラスのショーケースが有り、焼き菓子が並んでいた。この世界のお菓子のほとんどは焼き菓子で、クリームはバタークリームだ。プリンや生クリームのショートケーキ、シュークリームが恋しいトマコはちょっとがっかりしてショーケースを眺めた。日持ちを考えると焼き菓子主流も頷けるのだが。


「あれ!?」


と、ショーケースの端っこにこちらでは見たことのないものが陳列していた。これは、まさか。トマコは期待で胸がいっぱいになる。ここであったが百年目。その味を思い出して思わず声が出てしまう。


「チーズケーキ!?」


……その声を聴きつけてやってきたのは体格のいい一人の青年だった。




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