トマコの誕生日2
「ウルフ様、大変です。」
珍しく職場までモリスンがウルフを訪ねてきた。ウルフィファル邸も殺伐としているがウルフが常駐している軍部の司令室はもっと……なんていうか男クサイを通り越して独特のにおいがする。おえーっ。
「またどっかの我が儘女がパーティひらくってんじゃないだろうな。」
吐き捨てるように書類から目も上げずにウルフが言う。どっしりでっかい机にでっかい態度で座っているウルフは書類にサインする手を休める気は無いようだった。
「いえいえ。それが、来月のトマコ様の誕生日の事なのです。」
そこで、ウルフの手が止まった。モリスンはニヤリとウルフに気づかれない様に笑った。
「アレの誕生日はまだ先だったはずだ。」
マレノがドレスの生地を半年後に取り寄せるのどうの言っていた話をウルフは辛うじて思い出す。ウルフがトマコの誕生日を気にするのは堂々と甘いものを集められる機会に過ぎない。
「それが、シド様にお聞きしましたところ、書類上の誕生日は孤児院に来た日に登録されているとのこと。今日、トマコ様のお部屋に参上しましたところ、トマコ様のカレンダーにトマコ誕生日と書かれていました。トマコ様の本当のお誕生日だと察します。」
「……。」
「いかがされます?」
「今日中に国中の甘味処を回って根回ししろ。それと、いいか、あの女にこのこと絶対漏らすなよ。祝いはあくまで内輪だけ……いや、俺だけでいい。」
「畏まりました。その方がトマコ様に特別感が伝わりましょう。」
言い終わるとウルフの手がまた書類のサインに戻る。しかし、顔のニヤケは止まらない。
来月のスケジュールを秘書に丸投げして、思いがけずの甘い物三昧。書類上の誕生日だって毎回祝ってやる。うはは、万歳。……ウルフは上機嫌だった。
一方モリスンもニヤけが止まらない。ウルフ様が独占欲まる出しで婚約者の祝いをしようというのだから!と。そこは、あれだ、まあいつもの妄想力。
「それでプレゼントはどうします?」
「適当に見繕っとけ。」
「では、私めが。」
……モリスンの妄想力が爆発する瞬間だった。
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「はうっ」
その頃トマコに悪寒が走った。とてつもなく嫌な予感だ。それに抗える方法なんてトマコはもちろん持ち合わせていない。どこかで乙女なおっさんがトマコのプレゼントを探しているのだろう。
「トマコ、剣の授業始まるよ!なあに?まだ用意してないの?」
「だってさあ、これ、ワタ……ボクにはおっきいでしょ?この模造剣!」
剣道の竹刀くらいにしてくれないと、と愚痴るトマコ。そりゃあ、木製だし鍛練用でもマッチョ軍団の使う物だもの。2回振り上げられるかもアヤシイ。
「もう少し、背中のほうも鍛えたほうがいいかな。全体のウエイトを上げるのもありだけど……。ま、トマコには確かに大きいね。先生に言ってあげるよ。」
「ほんと!?」
どうしてか筋肉とトレーニングの話には異常に親切なアランがそう言った。アランにとってトマコに魅力があるなら筋肉でしかない。しかし、アランの余計な助言によってトマコは基礎体力強化プログラム組に組み入れられてしまうことになった。




