002:『対空戦闘に三式弾を撃って校長室に呼び出される』
やまと まほろばの転生戦艦
002『対空戦闘に三式弾を撃って校長室に呼び出される』
グラウンドを取り巻くように対空警戒配置についていた月形防空駆逐艦、秋月、冬月、照月、涼月、初月、新月、若月らがいっせいに長10サンチ高角砲を上空に指向させ、25ミリ対空気銃は早くも射撃を始めた。午後の休憩に入っていた他の月形、霜月、春月、宵月、夏月も、それぞれの生徒席から射撃姿勢をとり、ほかの艦艇も余裕のあるものから射撃を開始した。
ダダダダダ ダダダダダダ ズドン ズドン ズドドン ダダダダダダ ダダダダダ
対空戦闘に自信のない旧型駆逐艦や駆潜艇は、速い足と小回りの利く体で観覧者たちの避難誘導に当たる。校舎の端に船体を寄せ、頭にナースキャップ、腕に赤十字の腕章を着けたのは、氷川丸を始めとする病院船の者たち。いずれも過ぐる大戦で死ぬまで、あるいは終戦のその日まで任務を果たした者たち、対応が早く動きに無駄がない。
本部席では来賓たちを避難させた後、東郷校長は朝礼台に立ち「校長、司令塔に避難してください!」と叫ぶ教頭たちに「おいは、ここでよか」とツァイスの双眼鏡で上空を睨んでいる。その後ろでは理事長の素戔嗚命が剣を抜いて「天斑駒をよこせ!」と叫び、妻の櫛名田比売が「あれで飛べたのは東映アニメの中だけです!」と夫の蛮勇を諫めている。
蛮勇という点では東郷校長も同様なのだが意味がある、東郷は、右手を上げると大きく右に振った。
「南上空に対空砲を指向させよ!」
校長の意を悟った通報艦たちがメガホンで駆逐艦たちに伝える。
グィーーーーーン!!
校長の判断通り、南の雲の切れ間からドーントレスの三機編隊の三つが急降下をかけてくる!
ダダダダダダ ドドン ドドン
指向が間に合った菊月と照月が射撃、三機を撃墜するが、残り六機が投弾に成功する。
ドドドドドドン!!
四発はグラウンド、残り二発は校舎を飛び越えて外の道路に大穴を開けた。
「武蔵、第二次攻撃が来るぞ!」
校長に続いて上空を警戒していたやまとは、南中を過ぎた太陽の中から百機近い敵編隊の来襲に気が付いた。
「三式弾ね!」
「熱くなるな、三割も堕とせればいい。バラけた敵は駆逐艦に任せろ。照準、わたしにリンクさせよ」
「了解!」
「3000……2500……2000……テーー!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
18発の三式弾が放たれ、射線の近くを飛んでいたデバステーターが二機あおられて墜落、次の瞬間、距離1800まで近づいた敵編隊の半数近くが撃破された。残りのほとんどは散って逃げてしまい、5機が投弾に成功、3発が着弾し、一次攻撃の命中弾と合わせ、まほろば高校の運動会をめちゃくちゃにしてしまった。
「おねえちゃん、損害の半分はわたしたちの三式弾だね……(-_-;)」
「ああ、そうみたいだなあ……」
大和型戦艦の主砲を撃つときは、艦内に警報が鳴り最上甲板に居る兵員は全員艦内に避難することになっている。武蔵はミッドウェーにおいて、手違いから警報が間に合わないまま主砲を発射、最上甲板で対空射撃中の兵員を全滅させている。それを思い出して元気がない武蔵だ。
「だいじょうぶですよ、大和型の凄さはみんな知ってますから、犠牲者は出ていませんよ」
顔を煤だらけにした秋月が慰めてくれる。
「でも、校舎グチャグチャ……」
「あはは、それは仕方ないですよ……」
秋月が頭を掻いていると、通報艦の信濃丸がやってきた。
「やまとさん、武蔵さん、お二方に電信です」
「うむ」「電信?」
「発、まほろば学園校長東郷平八郎、宛第一艦隊やまと、武蔵——至急、校長室に出頭せよ——以上です」
ビシっと敬礼を決めると、被災状況の掌握に向かう信濃丸。秋月も小さく敬礼すると、救助活動をやりはじめた駆逐艦たちの中に戻って行った。
「射撃を命じたのはわたしだ、いくぞ」
「う、うん」
肩を落とした武蔵の肩を叩くと、校長室の有る半壊状態の校舎に向かうやまとだった。
☆彡 主な登場人物
・やまと 転生戦艦、まほろば学園の女生徒
・素戔嗚命 まほろば学園理事長
・東郷平八郎 まほろば学園校長
・仲間の戦艦たち 武蔵 陸奥 伊勢 日向 金剛 比叡 榛名 霧島 扶桑 山城
・他の艦艇 信濃丸 秋月 氷川丸 間宮




