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最強スキル【スパチャ】でダンジョン無双 ~攻略全振りオタクと世話好きギャルのダンジョン配信、たまに同棲生活配信~  作者: はむばね
第2章

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第32話 個々人、葛藤する

「それはそうと」


 コホンと一つ、龍造寺さんが咳払い。


「このブラウニー、美味しそうに焼けていますわね?」


 卯月さんの手にあるお盆へと視線を落とす。


 やや白々しい響きを伴って聞こえるのは、エレガンスドラゴンさんの件から話題を逸らす意図が含まれているからなんだろう。


「にへへー、でしょでしょ? ちょっとした自信作~」


 それに乗ったのか単に素の反応なのか、卯月さんは嬉しそうに微笑んでいた。


「ま、トースターで出来る簡単レシピのやつだけどね~。最近ちょっとハマってんの、トースターレシピ」


「あぁ、一人暮らしの男性宅ですとオーブンはないでしょうしね」


「そそそ。てか、トースターもほとんど使われてなかったっていうか……」


「ていうか?」


「呪いの食パンくらいしか焼いたことないっぽくて、なんだか不憫だったから……」


「あぁ……」


 次いで、揃って微苦笑を浮かべ合う。


「………………」


 そんな二人を眺めながら、俺はぼんやりと考え事をしていた。

 さっきの、本人バレのくだりで連想していたことだ。


 かつて俺が、ダンジョン探索を始めた頃……『スパチャ』なんていうスキルの性質上、配信も同時に始めざるを得なくて。

 だけど当然の如く、無名な配信者のところに来てくれる視聴者なんていなくて……もう配信者も探索者も辞めようかなんて思ってた頃に、初めて来てくれた視聴者さんがいた。


 その人のHNは、Shineさん。

 初めて俺にスパチャしてくれた人でもあり、今の俺がいるのは彼女のおかげだ。


 尤も……Shineさんが女性だったというのがわかったのさえ、つい最近のことだった。


 それから。


「ん? どしたん?」


 俺に向かって首を傾ける卯月さんが、Shineさんその人であるというのも。


 先日……判明した経緯も、事故的なものではある。


 だからなのだろうか。


「あ~? さてはオタくん、この一番おっきいブラウニーを狙ってるんでしょ~? しょうがないにゃあ、ほら家主特権だよっ」


 この通り、卯月さんは──当日こそ動揺していたものの──何事もなかったかのように今までと変わらない。


 触れるなということなのか、それとも本当に今となっちゃ何も感じていないのか……。


 いずれにせよ、俺から話題に出すのも躊躇われて……どういう態度で接するべきなのか、未だに測りかねている俺なのだった。



   ♥   ♥   ♥



 オタくんからの、どっか含みのある視線を感じる。


 最近は、割とよくあることではあった。


 や、ね? わかってはいるんよ。

 だってこうなったのは、例の……浅草ダンジョンでの一件があってからだしさ。


 オタくんが言いたいことっていうのは、つまり……ウチが、Shineって名前で昔オタくんの配信にいた件についてだよね?


 なんつーかこう、『告白』しちゃったのはやむを得ない流れというか……勢いに任せたところがあってぇ……その後のことは何も考えてなかったわけでぇ……なんかこう、どういう顔で話せばいいのか……何を話せばいいのか、何もわかないんだよねぇ……。


 ……ていうか、そもそもさ。


 ウチは、オタくんとどうなりたいんだろうね?


 そりゃ、その……カレカノ? みたいな?

 そういうのに、憧れる気持ちは間違いなくある。


 だけど、雅ちんも含めた今の関係性が心地よく感じてるのも間違いなくて。


 改めて触れたら、何かが決定的に変わっちゃいそうで。


 ウチは、何事もなかったみたいな態度を続けることしか出来ていないのだった。



   ◆   ◆   ◆



 先日から、直孝様と煌梨さんの間に独特の空気感が漂っております。


 間違いなく、例の件……煌梨さんが、『Shineさん』だと判明したことが影響しているのでしょう。


 少なくとも当時の直孝様は『Shineさん』が男性か女性かも認識していなかったわけで、それは恋愛感情とは別のものだったはず。

 けれど今やその正体が露見し、ましてや……煌梨さんという、可憐な女性であるとわかったのです。


 無論、女性としての魅力で負けているつもりはございません。

 けれど、わたくしと煌梨さんでは好みが分かれるのも事実。


 もしも、直孝様の好みが向こうであれば……いえ、それ以前に。


 直孝様にとって、煌梨さんはいわば『初めての人』。


 それは、強力なアドバンテージたることでしょう。


 なれば、わたくしも『エレガンスドラゴン』でという名で以前からご支援差し上げていることを吐露すれば……? いえしかし、やはり『初めての人』との差異は大きいのではないでしょうか……今や、支援額で言えば文字通りに桁違いでこちらの方が多いとは思いますけれど……数字はあくまで溢れた愛の結果であり、それ自体で愛の軽重を測ろうとはあまりに下品……そもそもエレガンスドラゴンがダンオタ様を推す気持ちと龍造寺雅が戌亥直孝様をお慕いする気持ちは別物であり……。

ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。

「面白かった」「続きも読みたい」と思っていただけましたら、少し下のポイント欄「☆☆☆☆☆」の「★」を増やして評価いただけますと作者のモチベーションが更に向上致します。


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