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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第三章 海で遊ぼう

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第41話 星空を見上げて

「天の川か……久しぶりに見たな」

「ええっ!?」

「そんなに驚くようなことか?」

「……いつ……いや、誰と!?」

「昔、両親と旅行に行った時に」

「……あ……ごめん……」

「いや、そのことはもう、気にしなくていい」

 俺の両親はすでに他界して、遠い親戚の世話になっていたが、色々あって今では一人暮らしだ。

 そのことはカズハにも、現実の方で話している。


「……ねえ……もう少し、一緒に、星、見ない?」

「わ、わかったから足を引っ張るな」


 彼女の用意したシートの上に、並ぶように横になる。もうちょっと大きいのはなかったのか?


 真上に目をやれば、現実でも見たことがないような無数の星たちが輝いていた。


「この世界にも、天の川はあるんだな」

「……え? それは、あるけど」

「っていうか、星空なんてそれこそランダムドットとかでもいいんじゃないか」

「……それはさすがに、ムードがない」

 いや、ムードって。


 まさかゲーム内とはいえ、女子と二人で星を見上げることになろうとは。

「……アニメとかでたまにあるシーン、やりたかった。あれが彦星(アルタイル)で、あっちが織姫(ヴェガ)

「それであれがデネブで、離れたところの赤い星がアンタレス、って待て、この世界って地球なのか!?」


――アクションスキル【ノリツッコミ】が習得可能になった!――


「だから待て収拾付かなくなるだろ!」


――リアクションスキル【ツッコミ】が習得可能となった!――


 助けを求めるかのようにカズハを見れば、腹を抱えて笑いを押し殺していた。

「……あ、あのね、この世界の真実についてはまだ秘密だから。それを解き明かすのも、プレイヤーの役目」

「ああ、わかった」

 それを解き明かすというか、そのうちこの人が失言しそうな気もする。


 再び空を見上げる。

 言われてみれば、天の川の周りにはひときわ目立つ三つの星がある。わし座のアルタイル、こと座のヴェガ、そしてはくちょう座のデネブ。いわゆる『夏の大三角』というやつだ。視線を動かせば、赤みを帯びた一等星がもう一つ。これはさそり座のアンタレスだろう。


 星だけではなく、モンスターではない動植物は、確かに地球というか、日本のそれだったが。


「……それより、星見よ? 現実だと、なかなか見られそうにないから」

「確かに、大三角はともかく、天の川とか満天の星は都会じゃ見られないからな」

「……え? 大三角はともかくって、《《あっち》》でも大三角見られる、の?」

「暗い星は街の明かりにかき消されるけど、夏の大三角とかの一等星は一応見えるぞ」

「……それってもしかして、学校でも見える?」

「うちのアパートから見えたから、学校でも見えるだろうな」

 しかし、こんな星空を見てしまうと、大三角と少しの星しか見えない都会の空は寂しく感じるかもな。

「……それじゃあ、現実世界でも」

「あ、流れ星」

「……え、どこ!?」

「流れ星は一瞬だから、もう消えたぞ」

「……えー、見たかったな」

「現実世界に似てるなら、夏はペルセウス座流星群の季節だから、ある程度たくさん流れてると思うけど……」

「「あ!」」

 もうひとつ、星が流れる。

 ばん、とカズハが手を打ち合わせる音がした。


「……現実でも、友達と一緒に星が見られますように……現実でも、友達と一緒に星が見られますように……現実でも、友達と一緒に星が見られますように」

 もうとっくに流れ星は消えた、なんて野暮なことは言わないが……それにその願い、一体誰に……?


 それを聞いてもいいものか、俺が考えていると。


――ユニークミッション【48の夏イベント:夏の大三角】をクリアした!――

――ユニークミッション【48の夏イベント:流れ星】をクリアした!――


「そういえばこの48の夏イベントとかいうやつ……」

「……レアアイテムレアアイテムレアアイテみゅっ⁉」

「いや物欲! 最後まで言えてないし!」

 俺が少し前からの疑問をぶつけようとするが、カズハはまた新しい流星に願い事を唱えていた。


 すぐに消えるはずの流星は、白い軌跡を引きながら角度を変え、なおも飛び続ける。


「おいちょっと待て様子がおかしい」

 慌てて上体を起こす。

 さすがにここに降ってくることはなさそうだが……。海の方向、南の空へまっすぐに流星は落ちてゆく。

 行動が下がるにつれ、反比例するかのようにその輝きが増した。

 夜闇に姿を消していたはずの海面が照らし出され――。


「これ落下地点近くないか!?」

 さっきからカズハの返事がない。

 彼女のほうを見れば、膝立ちの態勢で流星のほうを凝視したまま固まっていた。


「カズハしっかりしろ! 目と耳をふさいで口を開けろ!」

「……え」

 まだ状況を理解で来ていないようだ。

 いや、何か別のトラウマでも刺激されたか。


「ごめん!」

 少々強引だが、両手でカズハの耳を(ふさ)ぎ、自分は目を閉じて口を開ける。

 口を開けるのは、近くで爆発が起きた時の対処法らしい。衝撃を受けた時に、口から空気などを抜いて内臓破裂を防ぐらしいが、現実的に、ましてやゲーム内でどの程度の効果があるかは不明。

 なんとかカズハの耳と俺の眼が使えれば、そんなことを考えていると、一瞬まぶたの裏が明るくなった気がした。

 音はしなかった。いや、遅れてくるのか。

 何者かに両耳を塞がれる。いやカズハだろう。そうじゃなかったら怖い。

 光から3秒ほど遅れて、轟音が俺たちを包む。

 さすがに中身が一般人のプレイヤーに災害みたいなのを見せたらトラウマになりかねない。光や音はだいぶ緩和されているのだろう。

 さらに、風が吹く。

 実際には衝撃波か何かが来るのかもしれないが、ゲーム内ではただの風だけ。それでも、気を抜けば倒れそうなくらいの勢いはある。

 まだお互いの耳から手を離せないまま、強風に耐える。いつまで続くかと思ったが、実際には10秒足らずだったのではないか。


 さらに10秒ほど動きを止めて、俺はため息とともにカズハから手を放し、目を開く。一瞬遅れてカズハの手も、俺の耳から離れる。


「……ごめん。ちょっと昔のいやなこと思い出してた」

「気にするな。誰にも苦手なもんはある」

 さすがに隕石落下はなあ。

 あたりを見回せば、作ったばかりのテントや四阿は無事のようだ。ゲーム内施設だから、何らかの形で保護されているのかもしれない。


「……これで、もう大丈夫だよね」

「これ以上、爆発はないだろうが……いや、待てよ」

 もう暗くなった海を見ていた俺は、はたとある可能性に思い当たる。


「まさかこれ、津波とか発生するんじゃないか!?」

「……ええっ!? ちょっと待って、調べる」

 ガイドフォンを取り出し、あわてて操作するカズハ。


「……あ、大丈夫みたい」

 そして、視界の端にメッセージが表示される。


――【紺碧の浜辺】沖に隕石が落下した!――

――イベントフラグ『流星からの物体????』が発生した!――

――このイベントによる津波の心配はありません――


 ま、またやらないといけないことが増えた……。

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