第25話 竹細工
「さて、始めるか」
カズハを見送った後、俺も竹林を見上げる。
まず作るべきは……。
カズハから預かったノコギリを振るい、まず1.5メートルほど、俺の身長より少し短いくらいの竹の棒を切り取った。
そしてその片方を、斜めに切り直す。
――[タケの槍]を作成した!――
[タケの槍] ★★
種別:武器/槍
攻撃力:32 重量値:3 耐久値:20/20
攻撃(小)
解説:|竹から作られた槍。古来より受け継がれし、伝統の武器。
これで結構攻撃力も上がった。カズハの店でも武器は売っていないようだし、今のところ入手できる最強の武器だろう。
……最強武器、竹槍か……。
まあいいや。次!
手ごろな竹を選び、節のすぐ下で水平に切る。
そして節と反対側を、10センチほど、いやもう少し長く切る。
――[竹のコップ]を作成した!――
そういえば、カズハは食器とか持っているんだろうか。
あとでいろいろ言われそうだから、もうひとつ作っておくか。
――[竹のコップ]を作成した!――
それと、前から作りたかったものがある。
こんどはコップより少し長く、両端に節を残して竹を切り落とす。
片方の節にナイフで穴を明け、別の木を削って作った栓でふたをする。
――竹の水筒を作成した!――
これは多めに作っておこう。
ポーションとか、薬の容器に使える。
他のゲームだとガラス瓶だったりするが。
はて、カズハ遅いな。
なんか問題でもなければいいんだが。
――竹箸を作成した!――
――竹串を作成した!――
――竹のフォークを作成した!――
――竹の食器を作成した!――
「……ただいま」
調子に乗って色々作っていると、ようやくカズハが帰って来た。
「……ええと、作りながらでもいいから、聞いて」
「ああ」
ある程度はできたし、作業は中断する。
「……まず、カエルのときの『事故』なんだけど」
「お、おう」
目と目が合うと、カズハの顔が赤く染まる。
戦闘中は興奮状態のせいか気にならなかったが、時間が立つと急に恥ずかしくなったんだろう。
なぜわかるかというと、俺もたぶん同じだから。いつになく顔が熱い。
さ、最近のVRのアバターは出来がいいなあ。
「……あれは、純粋な事故ってことになった。ただし、今後アップデートで修正されるまで悪用しないようにって」
「悪用する気はないが、あれ、痴漢行為前提みたいなもんだからなあ。やろうったってできるもんでもないだろ」
「……痴漢行為前提ってわけでもない。ふたりの同意があれば……怒られるだろうから、やらないけど」
なんか言ってるが、深く考えないことにしよう。
「……その2。ああいう丸呑み系のモンスターは、キャラクターひとりずつしか入れないような調整が決定した」
「やっぱりあれも問題だったのか。さすがにふたりは狭すぎた」
「……ああいうのって、外から攻撃して助けるのが普通なのかな」
「いや、今回カラスに攻撃されてあの状況だから、うまく動きを止めないと中の人が大変なことに」
「……ゲンと一緒だったからまだマシだったけど、ひとりだったらパニックになってかも」
「それは、俺も否定できないなあ。このゲーム、まだ調整の余地があるんじゃないか」
「……まあ、うん……こちらからは、以上、かな」
「じゃあ、もう少しだけ竹の加工をしたら帰るか」
「……ん」
――竹の棒(長)を作成した!――
「……それは?」
「テントの支柱用。そういえば、布とか売ってる?」
「……あんまり高級なのはない」
「それでいい。拠点にテント張るだけだから」
多めに作っておいた棒アイテムも、追加でカズハに売る。そうして得たお金で、ノコギリ、そしてテント用の布を購入し直した。
「あ、そうだ。これも渡しとく」
先ほど作った竹のコップを1つ取り出し、カズハに渡す。
それを受け取ったカズハは……。
「……ふ」
「ふ?」
「……ふおおおおぉぉぉぉ」
「何事!?」
突如、カズハのガイドフォンから、えらく大げさなファンファーレのような曲が大音量で流れ出す。
「だから何事!?」
竹のコップを大事そうに両手で包み、どこか焦点の合っていない目つきでカズハはつぶやく。
「……家宝にする」
「いやゲーム内アイテムを家宝にするな! 普段使いしろ!」
まだコップを見つめ続けるカズハに、俺は呆れた声を掛ける。
「さて、拠点のエノキの広場に帰るぞ」
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