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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第23話 はじめての共闘

 ホームに戻るため、森に戻ろうとした時、獣道の入り口から少し離れたところに、雰囲気の違う場所があるのに気付いた。


「あれは!」

 思わず声が出る。


「……? あの森が、何か?」

竹林(ちくりん)だよ竹林! 竹さえあれば、これまで作れなかったものが色々作れるぞ」

「……ええと、フィラメント、とか?」

「いや世界観!」

 ゲームのマニュアルはちらっと見ただけだが、電球のあるような科学文明の発達した世界ではなかったはず。


「皿とか鍋の代わりにもなるし、米さえあればご飯も炊ける」

「……じゃあ、がんばってお米も探さないと」

「その前に、あいつを何とかしないといけないみたいだな」

 俺たちが竹林に近づくと、それを迎え撃つようにのっそりと歩み出したものがいた。

 その外見は、普通のヒキガエルに見えた。ただし、その大きさは、現実世界のトラックに匹敵する。それこそ、人間ひとりくらい丸呑みにできそうな。


 そんな巨大なカエルが、まっすぐ俺たちの方へと向かってくる。

 動きは遅く、走れば逃げられそうではあるが。


【ギガトード】 魔獣 Lv.8


「そういやあ、魔獣って何だろう」

「……ある種の魔力の影響を受けて変化した生き物、という設定」

「もしかして、魔法使ってきたりする?」

「……中ボス以上ならともかく、レベル一桁ではそれはなさそう。ただ、小エリアのボスになっていることも多い」

「ということは、竹の素材が欲しければ、あいつを倒せと?」

「……多分」


 改めてその姿を見て、俺はカズハに言うでなく、ぽつりとつぶやいた。

 

「なんか、いやな予感がするなあ」

「……そう?」

 俺と反対に、カズハの声にはなにやら嬉しそうな響きがあった。

 ちらりと横目で見ると、これまで見たことのない笑顔を浮かべる彼女の姿があった。

「な、なんかいいことでもあった?」

「……ん。誰かとこういうゲームする機会はこれまでなかったから、なんていうか、興奮、してる」

「え……?」

 戸惑う俺を、カズハは呆れたように、いわゆるジト目で見つめてくる。

「……あのね、興奮って、別にえっちな話だけじゃないんだよ」

「い、いや、そういう話じゃなくて」

「……あ」

 カズハの驚いた顔とともに、俺とカズハの上に影が差す。

「しまっ……!」

 ノロノロ歩いていると思っていたギガトードが、いつの間にか俺たちのすぐそばに来ていた。

 さすがにモンスターの前で今の会話は、油断しすぎだ。


 大きく開いたカエルの口から舌が伸び……。


    ◇


 余談であるが、英語でカエルを意味する単語には少なくとも2つあり、ジャンプ(りょく)の低いヒキガエルがトード(toad)、一般的なよく跳ねるカエルはフロッグ(frog)と呼ばれる。

 なんてウンチク披露してる場合じゃない。


 丸呑みされた。


「……今、点灯する」

 暗闇の中、いつになく近くからカズハの声が聞こえた。

 急に視界が明るくなる。カズハのガイドフォンが光源となり、狭い洞窟のようなカエルの体内を照らしていた。


 そこでようやく、現状が判明する。

 人がふたり入ればかなり窮屈な場所で、四つん這いになった俺の上から、カズハがうつ伏せで覆いかぶさっている状態だ。別の見方をすれば、カズハをおんぶした状態で前に倒れたような形。

 どうしてこうなった。

 いやこの体勢は多分、とっさにカズハをかばおうとしたせいだとは思うが。


「……ねえ、これ、よくマンガで見るやつだよね」

「丸呑みが!?」

「……ううん。二人で閉じ込められるやつ」

「それ普通、ロッカーとかでやるやつじゃないか」

「……確かに、ロッカーに閉じ込められるのはよく見る」

「カエルに丸呑みも何かのラノベで見たことあるぞ」

「……以前わたしが貸したやつ」

「ふたりまとめて丸呑みは見た事ないが」

「……もしかして、高校生には見られないところにあったりする?」

「高校生だから知らんけど」

「……で、どうする? ふたりで暴れるには狭すぎるし、ひとりが暴れたらフレンドリーファイアなくてももうひとりはもみくちゃになりそう」

「う……またなんか変なトラウマ発生しそう」


 俺の視界に赤い3という数字が浮かび、下にスライドして消えた。

「やっぱり、ダメージ発生してるな」

「……消化、されてる?」

「このままヒットポイントが0になるか、その前にドクターストップがかかるか」

「……ねえ、こっち、向いて?」

「いや無理!」

 こんなおんぶ状態でもやりにくいのに、向き合うとか心臓の負担が大きそうだ。

「……ゲンの女性恐怖症も、ちょっとは改善するかも」

「荒療治すぎる!!」


 いや、むしろこのままドクターストップがかかる方が一番いいのか。一瞬そう思ったが、それだとカズハが置き去りである。

 カズハひとりなら何とかなるかもと思ったが、その前にできることはやっておきたい。

 

 とはいえ武器も振りかぶれないこの状況で、大ダメージを与えられる方法なんて……。


 そんなことを考えていると、体が持ち上げられるような感覚があった。


「……きゃあっ!?」

 ゆっくりと浮いたと思ったら、急に元のところに落とされる。

 3度、4度と、同じようなことが繰り返された。

 まだひとりならともかく、カズハとまとめて振り回されるのは非常にやりにくい。

「……なにこれ? 地震?」

「いや、カエルが動き出したみたいだが、さっきまでと動きが違う」

 最初に見た時は、もっとゆっくり歩いて近付いてきていた。

 こんな軽めの絶叫マシーンみたいな揺れが発生するとは思えない。


「様子がおかしい。このカエル、何かから逃げて……いや、襲われてる!?」

 直後、衝撃が体を突き抜ける。カエルの体内で拘束されたまま、体が一回転する。たぶん、カエルごとひっくり返された。


「ぐはあっ!」

「んにゃあっ!」

「ごめん。悪いけどあまり体重をかけないでくれるか」

「……ごめん、無理」

 そういやこの体重ってリアルの……いや今そんな場合じゃない。


「……絶叫マシーンみたいなのははじめてだけど、ひとりじゃなくてよかった、かも」

「こんなバカップル御用達(ごようたし)みたいな絶叫マシーンがあるか」


 さらに、衝撃がカエルを襲う。

「ひゃあっ!?」

「待てしがみ付くな! いやしがみ付くのは仕方ないが、もう少し力を抜いてくれ!」

 カズハが戦士職についているせいだろうか、ハグを通り越してベアハッグと化している。ちょっと痛い。


 カズハに声を掛けようとして、上体をひねる。

 フレンド以上、ほぼ恋人みたいな距離で、目と目が合った。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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