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儂の瞳に乾杯

「ステータスが見たいのぅ」


 昼飯時、冒険者ギルド備え付けの食堂で注文を終えた儂は呟く。


「またジジイは訳のわからん事を」

「クロス、ステータスって何なの?」


 テーブルに肘を置き、アンニュイな儂を見てエイラとメフィストが声を上げる。


 誰がジジイか! 悪魔のお前の方がよっぽど年寄りではないか!


 右腕の魔力を高め、太陽のコロナを拳に込める。放つ炎の一撃。


灼炎焦(アタッコ・ディ)熱波(・メテオリーテ)!!」


「おおおお! 何度もその手を食うかあぁぁ!!」


 メフィストが立ち上がり、両の手で儂の拳を受け止める。


 受け止めたメフィストの全身が炎に包まれる。


 やがて奴を中心とした炎は宙に浮かび、儂の手から離れる。


 さながら太陽の如く。


「爆ぜよ」


 左手を太陽へとかざし、握り締める。


 太陽フレア。


 炎は爆散し、衝撃波が中心にいるメフィストへと収束する。


「ぐぁあああ!! ジジイ! 覚えていろ、この怨みは必ずやーー」


 周囲に被害を出すこと無く、奴の体が塵となって消滅する。


「ステータス、それは人の持つ力を数値化した物。ステータスオープンと唱えると現れる画面じゃ」


 もう見ることの出来ない過去の思い出。前世でプレイしたVRMMOに想いを馳せる。


「クロスはその、画面って奴が見たいの?」


「あぁ、最早叶わぬ夢じゃがな……」


 そう悲しげに呟く儂の元に料理が届く。


「おまたせしました。前菜(オードブル)、オークのローストでございます」


 彩り野菜を添えられたロースト肉、小洒落た綺麗なソースが食欲を掻き立てる。


「あの、クロス……? 本当に私も食べて良いの? すっごい高そうだけど……」


 何じゃ、せっかく大陸で一番の富豪国に来たのに。エイラはみみっちいのぅ。


「せっかくのセレブティア王国じゃぞ? 遠慮せずに食べんか」


「けど……」


 ええい。


「エイラの瞳に、乾杯じゃ」


 彼女の手を握り微笑む。それを見たエイラがはにかみ、微笑みを返してくる。


 揺れるサイドテールの金髪が可愛らしい。


 ほほ、この高層ギルドから眺める一面の景色。それすら彼女の笑顔の前に霞んでしまうわい。


「お客様、よろしいでしょうか?」


「何じゃ? せっかくの雰囲気を邪魔するで無いわ」


 躾のなっとらんウェイターじゃ。


「失礼しました。先ほどのお客様の会話が聞こえたものでして」


 先ほどの話? あぁ、ステータスか。それが何じゃと言うのか。


「ステータスが閲覧したいご様子。私めの情報で良ければお話致しましょう」


 何じゃと!? そんな手段があるのか!!


 思わず儂は立ち上がり、テーブルに手をつく。


「昔の話でございます。とある魔導具にて人々の能力を数値化し、見ることが出来るアイテムが存在したのです」


「ほう、続けよ」


「それは私が遠く離れた大陸へと渡った際、偶然目にした物。ですがそれは些か不完全でして、一般化されたスキルや外見からわかる能力しか表示されません」


 ふんっ、そんな事だろうと思ったわい。


 闇の瘴気を高め体へと漲らせる。足に力を込める。


闇龍脚(ドラグフォールレグス)……」


「お待ちくださいお客様。まだ話は終わりでは無いのです」


 じゃが儂の足は止まらん。込められた闇の魔力が龍となってウェイターの顎へと向かう。


「ステータスを閲覧するアイテム、それと似た物。より優れた物がこの国にあるとしたら、如何でしょう?」


 その言葉を聞き儂の足が止まり、ウェイターが儂の靴の汚れを拭き取る。


「そんな物が存在すると言うのかのぅ?」


「えぇ、噂ではありますが……。この国の南西、町外れのダンジョンの奥地。あるのですよ。全てを見通すとされる真理の宝玉が……」


 ふっ、面白い。


 その言葉を聞き、懐から金貨を1枚取り出す。これ一つでこの国の上級宿でも三日は暮らせる金額。


 それをウェイターへと投げつける。


「チップ、ありがたく頂きます」


 受け止めた彼が恭しく礼を取る。


「聞いておったか、メフィスト」


 虚空へと話しかける。


「そこへ行きたいと言うつもりか?」


 黒い霞状の塵が集まり、それらが人の姿を形取る。消し飛ばした筈のメフィストが姿を現わす。


「当然じゃ、まあダンジョンに行ったら危険じゃし。お前は留守番でも良いぞ?」


「ふん、舐められた物だな。私は悪魔だぞ? 着いていってやろう。他所で貴様に死なれたら、魂の回収が面倒だからな」


 メフィストがニヤリと悪逆な笑いを見せる。


「ちょっと待って二人とも! ダンジョンの奥なんて、そんなとこ危険だよ!」


 エイラ、心配してくれるのか? じゃが。


「エイラよ、儂は冒険者じゃ。危険など承知の上、その上で儂は己の欲望には逆らえんのじゃ」


「けどクロスーー」


 両脚へと生命の波導を込める。それらが稲妻の如く迸りを見せ、儂の強靭な足を滾らせる。


覇獣走(ザ・フェンリル・)閃狼(ゴッドスピード)!!」


 右腕にエイラ、左にメフィスト。二人を両脇に抱えて爆走する。


 ギルドの一面ガラス張りの窓を破り、空へと躍り出る。


「クロス! ここ80階建てーー」


 上空を走っている為か、風で良く聞こえんわい。


「何じゃ? 最近耳が遠くてのぅ」


「ジジイ、エイラならもう眠っているぞ」


「そうか、いきなり豪華な国へ来て疲れたのかも知れん。着くまで休ませてやるかのぅ」


「あぁ、それが良いだろう。エイラはただの人間だからな」


 ただの人間、か……。やれやれじゃわい。


「目指すは南西ダンジョンじゃ! 待っておれ真理の宝玉! 儂が有効活用してやろう!」


 吹き荒ぶ風を受け、その爽快感とアイテムへの期待に、儂は高らかな笑い声を上げた。

金貨一枚で三日暮らせるって書いたじゃないですか。

以前ヴォル…、クロス君は金貨1000枚で一ヶ月って言ったんですよ。

加えてメフィストは一年暮らせると訂正しました。


受け取り方は読者の皆様にお任せします( ・×・)


今日も読んで頂き、ありがとございました!

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