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記憶を取り戻す老賢者

思いついたので書いちゃいました! 暇な時にぼちぼち更新予定!

 暗雲立ち込める空の下。


 氷雨が降りしきり、雷鳴が轟く。


 この世の終わりの様な天候。


 そんな時でも儂は暗い自室、たった一人で黒魔術の研究に明け暮れる。


 愚鈍な一般人が見れば、何が何やらわからない様な薬品の数々。魔道具、麻薬、魔薬、魔物の肉片、内臓。

 そんな物に囲まれ、魔法陣を描いていく。


「ククク……、カカッ、キキッ……! ついに、ついに完成したぞ! 若返りの禁術!!」


 儂は喜びのあまり絶叫する。同時に稲妻が我が家へと落ちる。


 そして儂自身が雷に撃たれた様な衝撃。


 途端、儂の脳裏に浮かぶ様々な情景。


 何じゃコレは……!?


 子供達が椅子に座り、勉学に励んでいる。


 それを後ろから眺める儂。だがそんな退屈な光景からは目を背けボンヤリと外の景色に目をやる。


 儂は窓の外を見ていたことを、偉そうな若造に怒られる。


 周囲の子供達が儂を指差して笑う。不愉快じゃ、何故に儂がこんな辱めを……!!


 周囲の子供達に弄られ、暴行を受ける。


 やめろ、やめてくれ! 儂が何を……!?


 何じゃ、何じゃコレは……!?


 暗い部屋に一人座り込む自身。


 危険な外の世界への恐れ、そして逃亡。


 薄っぺらい黒い板に風景が映る。


 これは、テレビ? テレビとは一体……!?


 いや、儂は知っている。テレビが何か知っている。


 家族の嘆きの声が聞こえる。


 心に不甲斐なさ、申し訳なさが広がる。


 すまぬ……、すまぬ……。


 儂は……!


 届く一つの小包。喜びに胸を震わせ、箱を開ける儂。


 ゴーグルを取り出し、ゲームを起動する。


 楽しい。楽しい! 楽しい……!!


 運動な苦手な筈のオレが! 体を動かし、モンスター達をブチのめす快感!!


 他人とは違ったオリジナルなスキル構成で! 自己顕示欲を満たす!!


 例えそれが異端でもマイナーでも、儂は、オレは……、それが楽しいんだ!!


「おぉ……、おぉぉ……。儂は、儂は……! オレじゃったぁぁ……」


 思わず意味のわからない声を漏らしてしまう。


「儂は、思い出したぞ。儂が暮らしてきたこの世界は……。オレが遊んで来たVRMMOの世界そっくりじゃ……!!」


 天を仰ぎ叫ぶ。精神へのショックで体は震え、全身をびっしりと汗が覆う。


 口調がイマイチ戻らないのぅ……。まあ何十年と歳を重ねてきたから仕方ないとも言えるか。


 恐らく、儂はゲーム中に何らかの事故で、死んだ。


 それは良い。どうせあのまま生きておっても、家族を悲しませるだけじゃ……。


 だがオレはこの世界で、生まれ変わった!


 幼少時。


 周囲が剣術にハマる中、オレは一人格闘術を磨き!


 女子達が精霊魔法や治癒魔法に憧れる中、儂は黒魔術に励んだ!


 そして周囲から嫌われ! 爺になるまでネチネチと黒魔術に没頭した結果、ついに若返りの禁術を……!


 あれ……? 儂ってば転生したのにあんまり変わってないのう?


「思えば黒魔術や格闘に精を出したのって、前世のゲーム由来だったんじゃなぁ」


 しみじみと考えに耽り、独り言を呟いてしまう。


「ククッ……。じゃが、この若返りの禁術……! これさえあれば人生、二度目の人生やり直せる!」


 完成した禁術を起動する。魔法陣に己の血を乗せ、魔力を込めていく。


 漆黒の煙が立ち込め、それが儂を包んでいく。


 熱い。身体が焼ける様な感覚。


 骨が溶け出しそうな程の激痛。


 死を覚悟してしまうほどの恐怖。


 そして儂の、オレの意識は暗闇に飲まれていった。

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