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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第二百十五話 「最初の一手」

太田城。


評定の間には佐竹家の重臣たちが集められていた。

上座には当主である 佐竹義重 。

その隣には織田より派遣された軍師、 明智光秀 が座っていた。


部屋の空気は張り詰めている。

誰もが今日、最初の標的が明かされることを理解していた。

光秀は静かに立ち上がる。

そして地図を広げた。

「では申し上げます。」

全員の視線が集まる。


光秀の指が常陸南部を指した。

「我らが最初に攻める相手は――」

一拍。

「 小田氏治 率いる 小田氏 です。」

広間にざわめきが走る。

予想していた者。

意外に思った者。

反応は様々だった。

だが義重は静かに頷いた。

「やはりそこか。」

光秀も頷く。

「北条ではありません。」

「北条と戦うにはまだ早い。」

「まずは足元を固めます。」

光秀は地図を指し示す。

「小田を落とせば常陸は大きく安定します。」

「補給線も短い。」

「佐竹領からの援軍も早い。」

「占領後の統治も容易。」

「何より、戦い慣れた土地です。」

佐竹の重臣たちも納得する。

長年争ってきた相手。

地形も城も街道も知っている。

戦いやすい。

それが全てだった。


光秀は続ける。

「今回の戦の主役は佐竹家です。」

「織田軍は前に出ません。」

「鉄砲。」

「火薬。」

「兵糧。」

「戦術。」

「それらを織田が支援します。」

「戦場の主役はあくまで佐竹です。」

義重が笑う。

「なるほど。」

「関東の戦は関東の武士が行えということですな。」

「左様。」

光秀は静かに答える。

「信長様のお考えでもあります。」


そして。

光秀の声が少し低くなった。

「もう一つ。」

広間が静まり返る。

「戦を長引かせません。」

「一度で終わらせます。」

「再起を許さぬ。」

「二度目の戦を起こさせぬ。」

家臣たちの顔が引き締まる。

光秀は真っ直ぐ前を見る。

「戦が終われば民は畑へ戻る。」

「商人は商いへ戻る。」

「国は治まる。」

「そのためには中途半端は許されません。」

義重も深く頷いた。

戦が長引けば苦しむのは民だ。

それは佐竹の家臣たちも理解していた。


すると一人の重臣が立ち上がった。

「お任せくだされ!」

別の武将も続く。

「長年の借りを返す時ですな!」

「ようやく決着をつけられる!」

「鉄砲まであるのだ!」

「負ける理由がござらん!」

次々と声が上がる。

「我らが先鋒を務めます!」

「我らにも手柄を!」

「佐竹の世を作る時です!」

評定の間の熱気は最高潮に達していた。

光秀はその様子を見て小さく頷く。

これでいい。

兵は勝てると思った時に強くなる。

今の佐竹家中には勢いがあった。


義重が立ち上がる。

「皆の者!」

広間が静まる。

「これは織田の戦ではない!」

「佐竹の戦だ!」

「常陸の未来を決める戦だ!」

「勝つぞ!」

「おおっ!!」

地鳴りのような声が評定の間を震わせた。

光秀は静かに目を閉じる。

盤面は整った。

後は駒を動かすだけ。

遠く安土で信長も笑っているだろう。

関東という新たな盤上が動き始めたことを。

本能寺まであと二百七日。

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