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細川ガラシャになる前の明智玉でした。父の謀反を止めないと私が燃えるので必死です  作者: れんれん


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第二百十六話 「北条の憂い」

小田原城。


北条氏政は一通の報告書を見つめていた。

部屋には重苦しい空気が漂っている。


報告を持ってきた忍びも緊張した面持ちだった。

「間違いないのだな」

氏政が確認する。

「はっ」

忍びは頭を下げる。

「里見の使者は再び織田へ向かいました」

部屋が静まり返る。


氏政の隣に座る北条氏照も眉をひそめた。

「またか」

短い言葉だった。

しかしその意味は重い。

一度目は探りだった。

様子見だった。

だが二度目となれば話は違う。

明らかに関係を深めようとしている。


氏政はゆっくりと息を吐いた。

「何を求めたと思う」

重臣たちへ問いかける。

すぐには答えが出ない。

やがて松田憲秀が口を開いた。

「同盟かと」

別の家臣が続く。

「あるいは人質」

「婚姻の話もあり得ましょう」

様々な意見が飛び交う。

だが。

どれも決め手に欠けていた。

なぜなら。

織田は遠い。

関東とはあまりにも距離がある。


それでも氏政の表情は晴れない。

「遠いからこそ厄介なのだ」

その言葉に部屋が静まる。

氏照が頷いた。

「兄上の言う通りですな」

もし相手が上杉なら分かる。

武田なら分かる。

だが織田は違う。

直接ぶつからない。

だからこそ動きが読めない。


氏政は地図を見つめた。

房総。

江戸湾。

そして海。


もし。

本当にもしだ。

里見が港を開放したら。

織田船が出入りするようになったら。

どうなる。

「兵が駐留する可能性もございます」

誰かが言った。

氏政は黙って頷く。

それが最も嫌だった。

織田軍そのものではない。

織田の存在が関東へ入り込むこと。

それが問題だった。


交易。

金。

鉄砲。

情報。

全てが流れ込んでくる。

気付けば織田の影響力が広がっている。

そうなれば里見はさらに強気になる。


氏照が腕を組む。

「放置は危険ですな」

「だが攻めれば織田との関係が悪化する」

氏政も苦い顔をした。

里見は長年の敵だ。

だが今は以前とは事情が違う。

敵の背後に天下人の影が見え始めている。

それが判断を難しくしていた。


しばらく沈黙が続く。

やがて氏政が口を開いた。

「まずは情報だ」

全員が顔を上げる。

「何を話したのか」

「何を約したのか」

「それを知らねば動けぬ」

忍びたちへ追加の命が下る。


里見。

房総。

そして織田。

徹底して調べる。

氏政は窓の外を見た。

関東は今までと変わらない。

上杉との睨み合い。

里見との争い。

各地の小競り合い。

だが。

どこかで流れが変わり始めている。

そんな予感があった。


一方その頃。

安土城。

信長は里見からの提案を改めて読み返していた。

口元に小さな笑みが浮かぶ。

関東。

誰もまとまらない土地。

だからこそ面白い。

信長の目はすでに関東のさらに先を見据えていた。

誰も気づいていない。

その視線がどこへ向かっているのかを。

本能寺まであと二百七十二日。

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