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ガールミーツガール

 空も赤く染まり始めた夕刻。

 市立清峰学園のある一室、窓際に置かれた机につき、1人の女子生徒が日誌をつけていた。

「生徒会活動記録。来年度各部活動の予算案の話し合いと、連続している」

 ボブカットに切り揃えられた髪をかきあげ、呟きながら少女は記入を続ける。やがて記入を終えると、くりっとした大きい瞳を紙面に走らせ、不備がないか確認し。

「よし、今日の活動しゅーりょー」

 グッと大きく伸びをしたその時だった。

「ゴメン、会長まだいる?」 

 勢いよくドアが開かれ、慌てた様子で1人の女子生徒が入室してきた。

 その様子に、用件を察したのだろうか。完全に帰宅モードに入っていたこの部屋の主、上石百合はこれから起こるであろうことを予測し苦笑いを浮かべた。

「はいはーい、みんなの生徒会長はここですよ」

「体育倉庫が大変なの、ついてき」


「こりゃまた、ずいぶん派手にやられたね」

 女子生徒に連れられて訪れた、体育倉庫。その庫内の様子を目の当たりにし、百合は思わずそう漏らした。

 体育館に隣接している、体育館での体育の授業や部活動で使用する器具を保管している倉庫。しかし、本来ならそこで保管されている卓球台や、マット、飛び箱等がバラバラに切り裂かれていたのだ。

「部活終わりに体育館のモップ掛けしようとした一年が見つけてさ」

 そう口にし、女子生徒は体育館の隅に視線を送った。そこでは、数人の女子生徒が身を寄せ合い、怯えたような視線を倉庫に向けていた。

 なるほど、どうやら彼女たちが発見した一年生たちのようだ。

「私らはもう慣れちゃったから、あぁまたかって感じだけど、入学間もない一年達は怯えちゃってさ」

「まぁ、それが普通の反応だよ」

 女子生徒のボヤキに返し、百合はおもむろに倉庫内へと足を踏み入れた。

 倉庫内はあらゆるものが切断され、辺り一面に散らばっている。ふと、足元に転がっている元はマットだったものの一部を手に取る。その断面は、とても鋭利な刃物のようなものできり裂かれたようだった。

「ねぇ会長、やっぱまだ犯人見つからない感じかな?   今年度に入って五件目だよね、学校の備品が壊されてるの」

「そうだね、警察に連絡とかしてるみたいだけど、

全然みたい。先生たちも頭抱えてるよ」

 背中から投げかけられた問いかけに返しながら、探索を続ける百合。

 始まりは、去年の夏頃だった。

 更衣室のロッカーから始まり、グラウンドのサッカーゴール、理科室の人体模型、校庭の木と、人の手には無理だと思われるものも含めて切断、破壊されているのだ。

 そして今回も。

「やっぱり、まただ」

 それを見つけ、百合は小さくため息をついた。

 鉄製の、バレーボールのネットを張る支柱も切断されていたのだ。

 やはりこれも、およそ人の手で出来るとは思えない。

 倉庫内を一通り確認した百合は、出入り口で様子を見守っていた女子生徒に向き直り。

「先生たちには私から報告しとくから、みんなはもう帰ってもらったほうがいいかな。念のため、極力集団でね」

「いいってことよ、会長さんにまっかせなさーい」


「とは言ったものの、さすがに疲れたー」

 すっかり日も落ち、そんな闇夜を明るく照らすターミナル駅前。一人歩く百合は、ため息とともに誰に伝えるでもなく一人ごちた。

 あの後教師たちに報告し、現場の確認に立ち会い、日誌の修正。ようやく学校を後にした時には、すっかり日も落ちていたのだ。

 人混みの間を縫い、帰路を急ぐ。そんな時だった。

「えっ!?」

 不意に背後から腕を掴まれ、思わずこぼれた声。

 驚き、弾かれたように振り返る。すると、そこにはまるで雪のように真っ白な長い髪をたたえた少女がいた。

 もっとも、その少女も切れ長の瞳を驚きに見開いているが。

「えっと……何か?」

 恐る恐る声をかける。すると我に返ったのか、少女の磁器のように白い肌がみるみる赤くなっていく。

「い、今からお茶でもどうかしら?」


 これが上石ゆりの日常が変わる運命の出会い、ガールミーツガール。



 

 


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