第七十二話
今日は、もう一本追加で投稿!!
「正面の防御シールド最大出力!!」
敵からの砲撃が正面モニターいっぱいに映る。迫り来る真っ赤な光が隙間なく自分たち目掛けて向かって来るのだ。
直美の席からも、シノとエルザの顔が引きつっているのが分かる。おそらくセレナやバロックも同じような顔をしているだろうが、そっちは見ている余裕は無い。
少しでも砲撃の直撃を避けるのに全神経を集中させる。
警告音と警告表示が艦長席に届く。背後からミサイルが接近していることを表している。
バロックも必死になって戦艦二に砲撃を加えている。正面に位置する副砲も主砲も使った全砲射撃だ。斉射だとクールタイムが発生するので交互射撃のまま突撃する。
「いっけー!!」
直美の叫び声と共に戦艦一をすり抜け、正面の戦艦二に正対する。
「くっそー、落ちろーー!!!」
バロックも叫び声を上げながら射撃を繰り返す。
モニターには砲撃の光がいっぱいに広がり、正面も碌に見えていないが、元居た場所から想定して直美が操縦桿を捻り、フットペダルを踏み込む。
「バロック、仰角六十! 六十五……七十……」
艦体を真横に傾けながら天上方向を戦艦二に向ける。戦艦二の存在位置を予想しながらバロックに指示を出していく。
ズゥゥン!! ドォォン!!!!
大きな音と振動がグリムリーパーを天下方向に押しやる。
「よっしゃ! 戦艦二が爆散しよったで! ただ、こっちのダメージも大きい! 対艦ミサイルの発射装置が五門やられた。魚雷の発射管も三本駄目や」
オオサカの言葉は、対艦ミサイルはこれから一発づつしか発射できなくなり、致命的ことに魚雷も半数の三本しか打てなくなったことを意味する。
「デカブツに近接魚雷三発発射!」
直美は渾身の一撃をデカブツに放った。その瞬間、背後から迫っていた対艦ミサイルがあちらこちらで爆発し始めた。何発かは敵に命中し何発かは、敵の砲撃に飲み込まれて誘爆したのだろう。爆発したエネルギが今度は、グリムリーパーの背後から押し出す。
「あ、マズイ!! 制御が持ってかれる!!」
艦内に叫び声が上がる。もはや誰の声か分からない。
その瞬間、正面に見えていたデカブツの大きな艦体に赤い炎が三点灯るのが見えた。魚雷が命中したのだ。
目一杯操縦桿を引いてグリムリーパーの離脱を試みる。
「総員、衝撃に備えて!! ぶつかる!!」
直美が叫ぶ。
モニターにはデカブツの艦体が大きく映し出された。もはやモニターにはデカブツしか映っていない。
ズゥゥン! ガリガリ!! という大きな音と衝撃が艦体を揺する。さらに金属のこすれる音、あちらこちらで爆発するような音が入り混じる。
直美の必死な操縦によって鼻先から追突するという事態は防げたがグリムリーパーの腹面を強くデカブツの艦体に打ち付けた。
「オオサカ、ダメージレポート!!」
「エンジンは生きとる! 主砲は二番三番は大丈夫やけど一番、四番はアカン。魚雷管は三本とも大丈夫、対艦ミサイルは全滅。副砲は九割アカン。操縦は何とか可能や、今やったら離脱出来るで! ただ、艦長はん……」
「……オオサカ! リム=ザップを艦橋に!」
「……分かった。今すぐそっちに向かわせるわ」
「バロック、貴方を艦長権限で艦長代理に任命します!」
「はぁ!? 何を言ってるんだよ、お前は、こんな時に代理って……お前、まさか! どこか怪我したのか!」
「ううん。怪我はしていない……ただ、魔力の残量がね」
直美も、魔力切れという状態は初めての経験で、残量把握の仕方さえも知らないのだ。
「なっ! お前でも魔力が切れる事が……あるのか!?」
こんな状況にもかかわらず、あえてバロックがふざけて見せる。しかし直美にも分かっている。これはトンデモなくマズイ状況なのだ。
戦闘機動をしないにしても戦艦クラスのグリムリーパーをバロックが一人で動かせるとは思えない。しかし、エルザもシノも魔力という観点では足しにはならない。
「それで、どうする? わかっていると思うが俺の魔力は大したことはない。リム=ザップを呼んでも、あいつは魔力なんぞ持っていないぞ」
「あの、それって、私の出番って事ですか?」直美の後ろから声が聞こえた。
「ええセレナ、貴方、皇族というだけあって、魔力……あるよね。バロックに協力してグリムリーパーを動かして欲しいの」
「はい! 操縦は出来ませんが、魔力供給だけなら私でも出来ますわ」
「おい、ちょっと待て! それでお前は何をするつもりだ!? リム=ザップを呼んだのは何か訳があるんだろ?」
バロックがそう言ったとき、ちょうどリム=ザップが艦橋に到着した。
「皆、しっかり聞いてね。デカブツに四発当てても平気で、さっきの攻撃で三発追加したけど、やっぱり撃沈はしないみたい。このまま続けても勝ち目はないし、あっちこっち壊れたグリムリーパーでは逃げ切るのも大変。そこで、デカブツに乗り込んで内部から破壊しようかと思ってるの」
直美も戦いながら、色々と考えていた。一旦逃げるだけなら、逃げれるとは思って居る。しかし、ユーグがコロニーを人質に取ってセレナの身柄を要求されたらどうなるだろうと。
連邦政府としては、苦し決断に迫られるだろうが、国民の命を優先にしないと大義名分が立たない。
また、セレナ自身も国民を人質に取られたら、自分の身を進んで差し出すだろう。
それなら、帝国軍に、これ以上の戦闘継続は無理だと思わせないといけない。
だからこそ、ここでデカブツは沈める必要がある。
「ちょっと、そんな事をして、直美はどうなるのよ! 嫌よ! 友達を犠牲になんかしたくないわ!」
直美の説明を聞いて、セレナが涙目になりながら訴える。
「ええ、私はセレナの護衛よ。必ず生きて戻る! そのためにリム=ザップに強力してほしいの」
「……白兵戦……しかし……直美は……戦闘力が……」
「うん。わかってる。私が戦うのは無理だよ。銃もまともに撃てないと思うし。だから……オオサカ、デカブツのAI乗っ取れるよね?」
「あぁ、なるほどな。最近の艦体はAI無しでは碌に動かせんもんな。そのAIが狂ったら……なるほどな。艦長はん、これは行けるで! これだけ張り付いとけば、タブレットだけ持って行けば本体から干渉出来るわ。それにリム=ザップはんも、艦長はんも弄るのは得意やしな」
「リム=ザップは、私をデカブツの演算室かインターフェースが取れることまで連れて行って欲しいの。それで向こうのAIを乗っ取ったら、連絡艇か何かを借りて脱出する。連絡艇ぐらいなら、私の残魔力でも動かせるから」
「ええ、この敵だらけの中を連絡艇で脱出すなんて無理よ」
「ううん、エルザ、大丈夫だよ。AIを味方に付けてユーグが乗っているフリをすれば攻撃なんてしてこない」
「だぁぁ、全くお前って奴は次から次へと危ない橋を渡りやがるな。しかも俺はグリムリーパーを操縦しなきゃなんねぇから、突入部隊にはいけないし、直美をこっちに残してもグリムリーパーの操縦が出来ないし、くっそー」
魔力供給者が居れば推進力にはなるが、そもそも艦長または操縦者にも魔力が必要なのだ。今の直美ではグリムリーパーの操縦さえも出来ないほどに枯渇してしまっていた。
「わぁったよ。その代わり、ぜったいに生きて帰って来いよ。リム=ザップ……頼むぞ」
「もちろん……命に代えても……」
「もう! リム=ザップもちゃんと生きて帰るんだからね。それじゃ、皆、あとは頼むね」
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