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第四十七話


直美は客室で、リム=ザップとエルザ、シノを交えて、これからの事について話していた。

直美の意思は決まっていたが、三人の進退について確認を取る必要があったからだ。これから危険な戦いとなることが分かっているだけに、ここで降りるというのも否定できない話だ。


「それでね。私は、このままセレナたちと戦うつもりなの。ただ帝国軍を相手にする事になるから、安全なんて保証出来ないし、むしろ危険しか無い感じなんだけど、皆はどうする? ここまでにしておくって言うなら、バロックが来るまで、ここでお世話になっておいてそれから逃げる事も出来るよ」


直美の言葉で、皆は一斉に考え込んでいるようだった。静かな時間が流れていく。しかし直美は皆の決断を急がせはしなかった。何と言っても自分の命に関わる事だ。

急かして決めさせるものでは無い。


「ま、そうね。普通に考えたら逃げの一択よね。でも、私は残るよ。一応、私は元軍医だしね。ただ今回、私はコロニーに残ってセレナ様のそばについておくわ。戦闘は得意じゃないし、何かあった時に直美と連絡とれるようにしておいた方が良い気がするのよね」


エルザが一番最初に発言した。彼女はセレナがグリムリーパーに乗っている時も、お世話係をしていたこともあって、セレナのそばに居たいようだ。


「私も残るよ。それに行くところも無いから、このまま艦長と一緒に居るよ。その方が面白そうだからね」


猫族のシノはシッポを揺らせながら、そう言って直美を見つめた。直美は、以前にオオサカから少し聞いたことがある。獣人というのは、あまり良い待遇で扱われないそうだ。

この世界でも差別が根強く残っているようで、猫族は人として扱われず亜人とも呼ばれ、人の劣化版として蔑まれる事が多く、重要な仕事は任されないという。

むしろ、バロックのように管制官という重要な仕事を任せている人は稀だそうだ。そう言った意味では、直美のように猫族のシノを可愛いと思える人はもっと少ないのかも知れない。


最後に口を開いたのはリム=ザップだった。


「……俺は……本当は直美と一緒に船に乗りたい……だが……直美がセレナ様を……守りたいなら……俺がセレナ様のそばで守った方が……」


直美の中では、リム=ザップが一番意外な発言をした。リム=ザップは、てっきり直美やシノと一緒に船に乗ると言うと思って居たが、直美の言葉を受けて彼は自分の身の振り方を考えてくれたようだ。もちろん、彼が射撃手としてグリムリーパーに残ってくれた方が戦い易いのは確かだ。しかし直美の役割も、やりたいこともセレナを守ることだ。そう考えた時、セレナの母や兄弟の事を思うと、ゴルディア・セントラルに居れば絶対に安全とは、言い切れないと思った。


「うん。そうだね。何が起きるか分からないんだもの。最悪の事態を想定して万全を期しておいた方が良いね。リム=ザップ、ありがとうね。それじゃ、リム=ザップとエルザはセレナの事をお願いね」


「それは良いのですが、実際、グリムリーパーに艦長と私だけでは厳しくないですか?」


シノは少し不安そうな声を上げた。彼女も今までグリムリーパーに乗って戦いを見て来たのだ。射撃手も直美が担当すると操縦も兼ねているのに手が回るのか、またはシノが兼任するとなると、レーダー監視と射撃の両立が出来るのか心配なんだろう。


「うーん。そこは、フェルマントさんと相談かな、誰か人を回してもらうしかないものね――」


現時点で答えの出ない懸念なので、一旦、保留にすることにした。直美としては、全員が残ることが確認出来たことだけでも話し合いの意味として十分だった。

その後、会議で聞いた今後の行動について、皆にも説明することにした。



それから、数日。直美とリム=ザップはグリムリーパーの修理を手掛けることにした。

しかし、既にグリムリーパーは外装や副砲は、ほとんど無くなり、主砲も第三は宇宙の彼方に消えてしまったし、第一、第二も熱で駄目になっていた。艦首部分のフレームも同じく熱で曲がっている。無事なのはエンジン回りと居住空間、艦橋内部、あとはオオサカの本体とも言えるAIサーバ群ぐらいだ。


「これは……修理よりも……新たな艦体を作った方が……早い」


リム=ザップの見立てでも、もはや修理をするレベルではないようだ。


「えぇー。この艦体、愛着があったんだけどな。はぁーやっぱり最後の戦いが駄目だったか、分かった。仕方がない新しいのを作ってオオサカを引っ越しさせよう」


直美は、そう言いながらも、せっかく新しく作るのなら戦力は高めておきたいと考えていた。例の超巨大戦艦に立ち向かうには軽巡の火力では無理があるのだ。

しかし、新しい艦体のパンフレットを取り寄せてみると、一つ、大きな問題が見つかった。

それは艦体のサイズと形状だ。火力を上げるなら重巡や戦艦クラスとなる。しかし軽巡で細身のグリムリーパーと比べると、とてつもなく大きくゴツイのだ。


直美にとって、艦体のサイズや外観の形状を変更してしまうのは大きな問題になる。何と言っても、このサイズ、この形状でしか訓練していない。長年、一台の軽自動車しか運転したことがない者に、いきなりダンプカーで巧みな運転をしろと言っても無理な話なのだ。


オオサカいわく、サイズや形状が変わった状態で、再度戦闘シミュレーションを受ける事は可能との事だったが、それは直美が強く拒絶した。


「じゃあ……一から設計して……オリジナル艦……作るか?」


ドンドンと話が大きくなってくる。そこで、オルヴァン軍務長官に相談してみることにした。すると意外にもオルヴァンまでもが、諸手をあげて賛成した。

それと言うのも、そもそも規格の古いグリムリーパーに合わせて一つ一つパーツを加工するよりも、今の規格にあった新造艦の方が手間が少ないそうだ。直美も、そう言われると納得するしかない。


「あぁ、そうだった。ジャンク屋だから古いパーツが手に入ったけど、ここで骨董品レベルの中古品なんて扱っていないよね」


無理やり加工して使うよりも規格通りのパーツが使える艦体の方が、今後のメンテナンスを考えても助かるのも事実だ。


こうして、またしても、とんでもない設計に着手することになった。今度は造船を手掛けるメーカから金属加工業者まで入れて、新たな艦体を作り上げて行く。

前回の魔改造したときと違って、今回は侯爵家が手配してくれた人員も居るし、しっかりとした造船ドッグと設備が使える。しかも侯爵の計らいで資金や資材も潤沢に手配してくれた。


直美たちにとっては、何も足かせとなるものが無い状態、誰も止める者が居ない、やりたい放題となった。直美たちに協力した造船業の設計者たちも、直美に感化され悪乗りしていく。外観のサイズさえ維持できれば、居住空間が無くなっても問題は無いという方針で新グリムリーパーの中は、無残なまでに狭くなっていく。


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