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第十二話


直美が、ジャンク屋の親父さんを回収デッキに案内すると、親父さんは「少し時間をくれ」と言ってデッキに積み上げられたジャンク品の山に向かって行った。


「ねえ、オオサカ。直美は凄いですわね。私にはエンジンなんてさっぱりわかりませんわ。それを専門家の人と語り合うなんて」


直美がジャンク屋の親父さんにジャンク品の説明をしていると、後ろでセレナがタブレットのオオサカに話しかけているのが聞こえてきた。


「ああ、あの艦長はんはな。めっちゃ記憶力がええんや。一度見たものや聞いたことをスラスラと覚えてるんや。そやから、宇宙船の墓場で色んな船の残骸を見ながら、ワイの説明を聞いて、部品探ししとったら、全部覚えてもうたわ。細かい部品まで説明してへんけど、大まかな部品と働きは、もう知っとると思うで」


直美は、後ろから聞こえてくるセレナたちの会話がなんだかくすぐったく感じた。

暫くすると、ジャンク屋の親父さんも確認が終わったみたいだった。


「よっしゃ、変なゴミも無いし、買い取れる価値があるものばっかりだ。ただなぁ、ワシの店だけでは、この量は買い取れんから、他の仲間にも声を掛けても良いかな。ちゃんとワシが窓口になるからよ。あっと、それから酸素生成装置か、メーカーと型番は? ああ、それなら誰か持っとるだろうから、ついでに聞いておくよ。明日の朝、もう一度仲間連れて来させて貰うよ」


ジャンク屋の親父さんはそう言って帰って行った。


「ふっふふ。あの方、ちょっと楽しそうでしたわね。きっと直美と技術的な話が出来て楽しかったのかも知れませんわね」


「うん。私も楽しかった。あの町工場のような雰囲気、ちょっと職人気質のようだけど、臨機応変に対応する技術の話は参考になったよ」


「さぁて、船の方は、これでええな。次は二人の為の食料を補充した方がええんやけどな。さすがに、あの不味いレーションを食べ続けるのは嫌やろう?」


直美とセレナは目を合わせて頷いた。

仕方がないから食べていたが、出来ればもう少しまともの物や野菜なども食べたいのだ。


「あ、そっか。お金がないんだよね」


「そうでしたわ。私のカードが使えれば問題なかったのですが……オオサカ、このカードが使えるようにするには、どうすれば良いのかしら?」


「調べてみたけど、どうやら凍結を解除するには、帝国中央銀行、第一区画本店での本人確認手続きが必要らしいわ」


「その、帝国中央銀行、第一区画本店ってのは。何処にあるの?」


「“ゴルディア・セントラル”私の祖父母が統治しているコロニーですわ」


セレナが言うには、セレナの母、ラフィーネ・リュクシアナ・ヴァルディス皇妃の生家があるコロニーのようだ。


「じゃ、そこに行くのが安全っぽいね。このまま、ヴァルディス帝国の母星ペルデギウスに行くと、絶対捕まっちゃいそうだしね」


「ええ、その方が良さそうですわね。祖父は古くからある侯爵家で、私も小さい時に、よく遊びに行きましたわ。とっても優しい祖父母なので、力になってくれるかもしれませんわ」


「オオサカ、ここから、“ゴルディア・セントラル”までの距離を考えると、どのぐらいの食料が必要になるかな」


「そやな、結構あるから、そもそもメインエンジンが直らんと、二人が生きているうちに辿り着くのは無理や。メインエンジンが直る前提なら、途中にあるコロニーに立ち寄って補給しながら行くんなら何とかなるで」


「良し! それ前提で動こう。明日の買取金額と、ジャンク屋のラスティさんがくれるというピストンとリング、それと酸素生成装置が手に入るかどうかってところね」



――翌朝

どうにも不味いレーションをかじりながら、売り物以外の部材で船を修理していると、ラスティさん達がトラック数台に乗ってやって来た。様々な年代の人たちだったが、どこか似たような雰囲気がある。


「よお、お嬢さんたち。これから買い取らせてもらうぞ。こいつらは、ワシと同じくジャンク屋をやっとる連中だ。まっとうな値段で買い取るように釘を刺しとるから、安心してくれ。おっと、それから、これが昨日言っていた、ピストンとリングだ。これは無料だから好きに使ってくれ」


ラスティさんは、そう言うと二メートルくらいのピストンを数人がかりで作業台の上まで運んでくれた。リングも直美が二人ぐらい入れる大きな物だった。


「ピストンは接続部分を加工すれば使えると思うぞ。リングは、ここの余計な出っ張りを削って……こっちには留め具を溶接すると良いかもな」


「ああ、なるほど。確かに形状は似ているね。これなら何とかできそうだよ。ラスティさん、本当にありがとうございます!」


「いーや、こっちも置き場に困っていた物だから構わんよ。それと……おーい。酸素生成装置を持ってきてくれ」


男の人が四人がかりで運んでくれる。


「こっちは、この男の店にあったやつだ。これの代金はジャンク品の買取から差し引かせてもらうが、それで良いよな?」


「はい! もちろんです。ありがとうございます。これ探していたんですよ!!」


直美は嬉しそうにほほ笑んだ。それを見たおじさんたちも、つられて嬉しそうだった。


「それじゃ、これは俺たちで船内まで運んでやるよ。さすがにこれをお嬢さんが運ぶのは無理だからな」


酸素生成装置は、セレナが案内しながら、空調室まで運んでもらうことにした。

その間、直美はジャンク品の山に群がるジャンク屋を相手に部品の説明などをしていった。


昼頃になると、また、一台のトラックがやって来た。


「みんな、お昼を持って来たよー」


車の窓から、恰幅の良い女性が身を乗り出して声を上げる。

トラックがドックの中ほどまで進んでくると、荷台から女性たちが降りてきた。

彼女たちは、荷台から組み立て式のテーブルを降ろすと、手慣れた様子で組み立てていく。


「やあ、あんたが、商品を持って来てくれたんだね。最近は、ここらにも海賊が出るとかで、ジャンク品の回収業者が来てくれなくってね。売り物が乏しくなってきたから、いよいよ自分たちで、船を雇って探しに行こうかと言う話をしていたから助かるよ。さあ、さあ、あんたも一緒に食べな。これはサービスだよ」


彼女たちは各ジャンク屋さんの奥さんたちだった。普段も、ジャンク品の回収業者が入港すると、こうやって、みんなで集まって、食べながら買取価格の商談するのだ。



「はぁ~。食べたー。久しぶりにおいしいご飯を食べれました。ありがとうございます!」


直美は、久しぶりにレーションから解放されて、パンとスープ、それ以外にも肉料理や新鮮な野菜をお腹いっぱい食べる事が出来た。


「はっはは。うちの亭主もよく食べるけど、あんたもなかなかの食べっぷりだったね。その細い体でよく入るよ」


そう言ったのは、始めに直美に声を掛けてくれた恰幅の良い女性、ラスティさんの奥さんだった。


「すみません。ここの所、とんでもなく不味いレーションしか食べる物がなくって、ガッツいてしまいました」


「へぇー、何だい食料を切らしてしまったのかい」


「はい。次の航行に向けて、食料も買い込まないとなぁって考えていたとこなんですよ」


直美がそう言うと、奥さんが隣にいたラスティさんに声を掛けた。


「あんた、物はついでだよ。卸問屋のザイカルさんを紹介してあげたらどうだい。あそこなら、ほとんど卸値で買えるんじゃないかい」


「おう、そうだな。それじゃ後で連絡しておいてやるよ。この近くで貿易船相手に食料品を卸している奴がいてな、そいつからなら店で買うより安く買えると思うぞ」


お昼を食べた後は、商談が始まり、直美たちが運んできたジャンク品の山は、各店の店主たちによって無事に買われて行った。



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