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電車内で殺意の波動に目覚める

 ぶっ倒したいもの。


 チカン。むしろ張り倒す。


 朝、席に座ろうとせず吊革持って空席を死守する謎のにいちゃん。

 誰かが座ろうとすると進路妨害したり一度座ってまた立つような真似をしてでも死守している。怖そうなお兄さんとかだと通す。それも毎日なので意味不明。(※ある種の障害をもつ人はいつもの場所でないとダメという話を後日伺った)


 細かいことだが片足立ちしてもう片方の靴底を席の後ろやドアや壁に当てているやつ。カッコいいとでも思っているのかしら? あんたの汚い靴底付きの扉や壁や席の裏に子供が触れてコロナ感染とかしないのかしら?



「と、思うのだけど」


 ぴこん。

 ラインに小首を傾げる動物キャラクターのスタンプ。

 咄嗟にスマートフォンを取り出してなにか打ち込み始めたと思ったら。


「あの。私あなたの目の前にいるので、できたら会話に専念していただきたく存じまするが」


 この言い方であっているのか? まあいいや。


 りょーかいというスタンプののち、素早くスマートフォンを仕舞った彼女はすました顔で俺をみている。


 とはいえ、あえて話す話題がない。


「さっきから私しか話していませんが、あなたの話を聞きたいのですがいががでしょうか」


 なんかバタバタして『ごめん』ポーズを連打しているが、日本とあっちの意味が同じかわからない。


 喋れないってわけではないと思うけど、ほんとうに一言も発しないまま数ヶ月。週に一回以上顔を合わせているのに考えてみれば彼女の本名すら僕は知らない。SNSのアカウント名とかはわかるけど。


 思うに、僕はこの日、機嫌が良くなかったのだろう。


 腕を広げてパタパタしているので思わず詰め寄る。


 赤かった頬が青くなる。

 思わず手を止めて謝る。


 パーソナルスペースは大事だ。

 にしても彼女のそれはかなり広い。

 そこに彼女の後ろから鳴き声がした。


「ミャア」


 猫だ。かわいいねと気が緩んだ時、ビクッとなった彼女が抱きついてきた。



「……! ヒャ! ファ! ちがう! 事故!」

「いや、わかるけど、猫ダメなの?」



「あまり、私の国にはいない」

「へえ」


 しばらく見つめあっていると、思いっきりひっぱたたかれた。


「いったあ……」


「ごめんなさい! ごめんなさい! そんなつもりじゃなく!」


 そして「ヒッ」というと子猫のように逃げ出した。

 なんなのいったい。


 子猫が僕の足元で戯れてくる。


 なお、この野良猫は後日僕の住むビルの住民となった。

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