終章 君たちはダイヤモンドのような煌めきで
風の城には、温室があった。それは、ガラス張りの建物であるために、そう呼ばれているだけだった。この建物の目的は、荒々しい風に、植物が枯らされないよう保護する目的で立てられたのだ。その建物は、現在少し形状をかえて、彼女の部屋として使われていた。
大きな鳥籠のような姿の、ガラス張りの建物。内部は、蔓草と花で溢れていた。
天井から釣り下げられた空中ブランコに、彼女は座っていた。
キラキラ輝く金色の波打つ髪を、花の髪飾りで飾り、とてもグラマーな肉体を持つ女性だった。その背には、風の精霊の証である金色の翼があった。オウギワシの荒々しくも美しい翼。
彼女の名は、風の王の守護鳥・フロイン。
空中ブランコにいる彼女を見上げる、キラキラ輝く金色の髪の青年がいた。彼の背にも、彼女と同じオウギワシの金色の翼があった。髪は半端な長さだったが、キチンと結わえられ整えられていた。
「インジュ」
名を呼ばれ、青年は振り向いた。インファによく似た切れ長の瞳で、白の輝きの中に深い青と緑が混ざり合う、不思議な色をしている。インファの暖かみのある眼差しとは違い、硬質で真面目な光があった。しかし、中性的な容姿で、インファは男性寄りだったが、彼は女性寄りで柔らかだったため、冷たい印象は全く受けなかった。
「何でしょう?リティル」
インファと並ぶほどの長身で、彼よりもずいぶん華奢な精霊。
彼は、インジュ。原初の風の欠片を持つ、インファとセリアの息子だった。
リティルは、身の内にある、ダイヤモンドのような煌めきの宝石の欠片たちに、笑いかけた。その笑みに答えて、インジュはニコニコと微笑んだ。
「シェラがお茶淹れてくれたぜ?おまえ達も来いよ」
「はい」
ブランコから飛び降りたフロインは、空中で金色のオウギワシに化身し、澄んだ瞳でリティルに笑いかけたインジュの肩に、舞い降りた。
風に伝わる至高の宝石を手に入れた、十五代目風の王・リティルは、最上級精霊へ転生を果たし、世界の刃として君臨し続ける。
精霊達、精霊に縁のある者達は、彼を烈風鳥王と呼び讃えた。
しかし、世界から悪意が消えることはない。風の城は永劫の戦いを強いられる。
それでも、鳥達は飛ぶ。奪わせないために。笑って生きていく為に。
これで、ワイルドウインド3終了です
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