ハッピーエンドは湯煙の向こうに
エピソードです。
翌朝。
支配人とカメラマンは駆けつけた警察に連行され、事件は無事に解決した・・・が
当たり前だが旅館にいた刑事さんには、こってり絞られていた。
「だって、翔さんが刑事だと・・・」
みのりは何とも腑に落ちないらしが
仲居さんと若女将は、お互いに疑い合ったことを少し反省したのか、
ぎこちなくも一緒に宿泊客を見送っている。
『人魚の涙』を取り戻した功績により、翠明閣の若女将からみのりたちに次回の無料宿泊券が贈られた。
「いやー、一時はどうなるかと思ったけど、私の旅行プラン、結果的に大成功じゃない!?」
旅館のテラスで、みのりは朝日に輝く温泉街を見下ろしながら笑っていた。
「みのりのせいで、寿命が5年は縮んだわよ……」
あいりは呆れつつも、どこか遠い目をして、昨夜触れられた額をそっと指でなぞっていた。
そこへ、みのりのスマホが鳴る。
画面には、目の下にひどいクマを作った涼介の顔があった。
『みのり……! 無事か!? 怪我はないか!? 泥棒には何もされなかったか!?』
「 大丈夫よ。涼介のアドバイスのおかげで、犯人をバッチリ逮捕できたよ! ありがとね、
私の優秀なおまわりさん!」
みのりが画面に向かって満面の笑みで投げキッスを送ると、涼介は一瞬で真っ赤になり、
『も、猛烈に心配したんだから!
お前の大好きなハンバーグ、山ほど作って待ってるからな!』
と、照れ隠しで通話を切った。
「ふふ、相変わらず仲が良いね」
あいりが微笑む。
「あ、そうだ! あいりは翔さんのこと、本当に良かったの? 逃がしちゃって」
みのりの質問に、あいりはポケットの中の小さな紙切れに触れた。
翔が去り際に、彼女のポケットに滑り込ませていたメッセージカード。
そこには、流麗な文字でこう書かれていた。
『次は、君のハートを盗みに伺います。 ――S』
「……いいの。またきっと、すぐ捕まえに行くから」
あいりは少しミステリアスな笑みを浮かべ、澄み切った秋の空を見上げた。
ドタバタな事件は終わったが、二人の女子旅、そしてそれぞれの恋の事件簿は、まだ始まったばかりだった。
(終)
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