縁故
「追いかけなくていいの?」
「渚、いたのか。悪いうるさくして。追いかける必要は、ないよ。俺とあいつは元々敵だったし、方向性が違うんだ。最初からこうなる運命だったってわけだ。」
そう、そうなんだ。そう俺に言い聞かせなければだめだ。俺にはやらなくちゃいけないことがあって、それにはあいつが邪魔で、突き放せばその邪魔が消える。
「本当に良いんだ。なら、追いかけるのをやめる。」
「渚、ごめんな。記憶が無いんだが、俺が記憶が無くなる前。まぁ、俺が愛理を失って取り乱してるとき、お前を人形だなんて言って傷つけちまってさ。」
「気にしてない。それに、それほど愛理が大事だった。というより、優斗にとって愛理は欠かせない人だったとわかったし。あんなふうに取り乱すのもわからなくはないと思う。」
大事、か。確かに今思えば愛理はただ大事な人という一括りには置けないかもしれない。愛理は、昔の俺を知ってて俺も昔の愛理を知ってて。俺は愛理に救われ、今の俺という優斗を作ってくれた。
「愛理のこと聞きたい。昔、優斗と愛理はどんな関係だったの?」
「………わかった。」
遠い昔のこと、俺は父親を事故で亡くした。母親は父を失って鬱になり、俺のことなど気にかけてくれなかった。当時小学生の俺からしたらかなりのショックだろう。そんなとき、そばに愛理がいてくれた。ただ、それだけの事だった。俺の命を直接助けたわけでもない、けど、俺にとってはそれが最大の救済だった。
「それだけあなたにとって大切な人だったのね。」
「だから、報いたいんだ。……馬鹿げてるよな、あいつ結婚してるんだぜ。」
「結婚しててもいいと思う。大切な人を思う気持ちくらい誰にだってある。それに、あなたたちは姉弟みたいだった。」
俺が、姉弟みたいだったか。なら、姉の仇は必ず討つのが弟に託された使命だよな。愛理。
「………なら、俺は必ず仇討ちをしなきゃだめだな。」
「でも、そこまでやる必要はないんじゃないの?だって、愛理がそれを望むかどうかはわからないけど、優斗はそのままの優斗で愛理に報いるほうがいいと思う。それが愛理にとっての一番の幸せなんじゃない?でも、あなたが思う一番の報い方がそれなら、私は何も言わない。」
愛理のために、俺のままでいるか。
「俺が、俺のままで報いる。そんなこと、出来ない。俺が俺のままでいたから愛理は死んだ。だから、俺は変わって、愛理に報いる。そのためにハザンを討つ。」
「わかった。じゃあ、何も言わない。あなたがそうなる理由もわかるから。けど、照は関係ないから、仲直りは必要だと思う。」
「いや、その必要はないだろ。元の形に戻ったんだ。俺とあいつは元々は敵だし、勝手についてきただけ。俺とは縁が無かった。」
「でも、あなたの命を直接救われた。それでも?」
「………そうか。」
「これは命令。照をもう一度ここに戻して。ここに照がいないなら、私はここから離れる。」
とは言っても俺が直接行くと怪しまれ、最悪の場合殺される。なら、
「渚、お前に託す。探してくれ。そして、連れてきてくれ。俺が行くなんて無理だ。」
「………わかった。」




