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第19話 大和タケル(8)

「ミサキちゃん!」


化け物がミサキちゃんに迫るのを見て、俺は無意識に走り出していた。

化け物に向かって思いっきり体当たりするが、やっぱりびくともしない。


「うわぁ!」


それどころか、次の瞬間には強烈な力によって俺の身体は思いっきり吹っ飛ばされてしまった。

ちくしょう……このままじゃミサキちゃんが……!


「おい、若いの」


「えっ?」


不意に声を掛けられ、横を向くと1人の爺さんが壁に寄りかかるように倒れていた。

頭からは血を流していて、何だかヤバそうだ。


「だ、大丈夫ですか?」


「儂の事はいい。それよりお前さんにこれを……」


そう言って爺さんは震える手で刀を俺に差し出した。

まさかこれであの化け物を倒せって?


「どうにかしてこれを……奴の身体に突き立ててくれんか」


やっぱり!

つい今しがた、あの化け物に挑んで吹っ飛ばされたばかりなんだけど!?


「……まさかあの子に、危険を冒してまで助けに来てくれるような友達がおったとはの」


この爺さん、もしかして(かんなぎ)の?

けど、なんか微妙に失礼なこと言ってるような……


「上手くやってくれた暁には、イチコとの交際を認めてやろう」


はい!?

いやいやいや!

何勘違いしてんだ、爺さん!


「あのおっぱいを他の男にくれてやるのは非常に惜しいが……」


こら爺さん!

確かにさっき巫の身体に思わず見惚れてしまったのは事実だけど……

いやいや、俺には巫のおっぱいよりミサキちゃんのおっぱ……って馬鹿!


「頼んだぞ。突き立ててくれさえすれば、後は儂が何とかする」


何とかって……そんな身体で何する気だよ爺さん。

でも、だからこそこれは俺がやらなきゃいけないよな。

何より、ミサキちゃんを早く助けに行かないと!


……って、あれ?

化け物がミサキちゃんじゃなくて巫の方へ向かっている。

ひとまずほっとしたけど、今度は巫が危ないじゃないか!


「ま、待て! この化け――」


爺さんから託された刀を持って慌てて立ち上がり、化け物の背中に向かって突進する。

でも次の瞬間、俺のすぐ目の前で化け物が物凄い勢いで真横に吹っ飛んだ。


「うわっ! えっ、ベル!?」


化け物の頭に思いっきり飛び蹴りを喰らわせたのはベルだった。

けど、なんか姿が……


「お馬鹿! 人間界で“力”を使うことは禁じられていますのよ!」


ここまですっかり影の薄かったミカエラが叫ぶ。

そういや初めて会った日にそんなこと言ってたけど、あれって本当だったの!?


「んなこと言ってる場合じゃねーだろ! ここでダチを見捨てるなんて(おとこ)じゃねー!」


いや、元々お前は漢じゃねえだろ。

そんなことより、その姿は一体……


バチバチと音を立てて、稲妻のような赤黒い光がベルの周囲を駆け巡っている。

頭からは小さな黒い角が2本、背中にはこれまた小さく黒い蝙蝠のような羽が生えていた。

それと矢印のように尖った尻尾がスカートの下から飛び出していて、それはまさに悪魔と呼ぶに相応しい姿だった。


「お前……本当に悪魔だったんだな」


今更だけど、この姿を見ると改めてそう思い知らされる。

やっぱりこの2人って、人間じゃなかったんだな。


「あぁ!? そんなの当たり前だろ! 本気を出したアタイは無敵だぜ!」


ふふん、と鼻を鳴らして平たい胸を逸らしたベルがふわりと浮き上がる。

さっき吹っ飛ばした化け物に止めを刺すべく、拳を振り上げてそのまま突進していった。

おお、これなら俺が頑張らなくても化け物倒せるんじゃ――


「ふぎゃっ!」


あれ?

化け物に突っ込んでいったはずのベルが、とんでもないスピードで俺の前を再び横切った。

そのまま向こうの壁に激突して転がったベルの頭の上には、星やヒヨコやがくるくる回っている。

おい、最強じゃなかったのかよ!?

あれだけ派手に変身しておいて、何一瞬でやられてんだ!

あと、気絶のし方が古い!


「ぐぅ……! おかしな気配だとは思っていたが、まさか同族だったとは」


ベルをカウンターで吹っ飛ばした化け物がいつの間にか俺の目の前に!

これってかなりヤバいんじゃ……


「同族でありながら人間なんぞに肩入れしおって。まずは貴様から八つ裂きにして喰ってやる」


化け物の眼がギラリと光る。

目の前の俺の事なんか完全にアウトオブ眼中(古い!)のようだ。

それなら俺はこのまま大人しくしていれば……

って、違うだろ!


「くそっ! これ以上好き勝手やらせるかってんだよ!」


化け物の前に立ち塞がり、刀を正面に構える。

これでも子供の頃は時代劇が大好きでよく観てたんだ!

福本清三さん、俺に力を貸してくれ!


「それ、斬られる側の人だから」


巫のツッコミが聞こえたような気がしたけど、気にしない気にしない!

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