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 とある商店街の路地を進んだ奥の奥にある、ひどく年季の入ったビル。いくつかの窓は割れ廃墟と見紛う程のそのビルの二階に、ひっそりと存在する雑貨店があった。


 切れかけた蛍光灯が一箇所ついているだけの薄暗い廊下に、その場に不似合いな制服姿の女子高生が三名、雑貨店で入手したばかりと思しき物を見せあっている。


「おまじないとか小学生の時以来なんですけど」

「ガチで信じてる訳じゃないけどさぁ」

「効果あったって言ってる子たちもいたし……」


 三人が手にしているのは、手のひらにのる大きさのクマのぬいぐるみだった。

 愛らしくデフォルメされたクマは、首元を大きなリボンで飾り、白い無地の旗を二本、体の前に抱えている。


挿絵(By みてみん)


「頭の裏の溝に自分の髪の毛入れて」

「リボンの裏にある筒の中に好きな人の体の一部を入れて……って、ムズくない?」

「筒に巻きついてる細い紙に相手の名前を書く、のはすぐ出来るわ」


 雑貨店から渡された説明書きを読みながら、クマのぬいぐるみをあらためる三人は、平静を保とうとしていても効果への期待からかどこか声が弾んでいた。


「この旗は?」

「一個ずつ、【恋】【叶】って赤いペンで書けって」

「えー、あたし字汚いから書いてよ」

「心を込めて書きましょうって書いてるし、自分で書いた方がいいんじゃない?」


 誰からともなく歩き出し、女子高生たちはその場を離れていく。彼女たちの会話は、雑貨店の中にまでよく聞こえていた。

 店内でほくそ笑むのは雑貨店主の翁である。


「こりゃあ、アイツにもっと作らせにゃあ」


 オカルトグッズらしき物が溢れている店内にあって、先の女子高生達が手にしていたものと同じクマのぬいぐるみは違和感しかないのだが、店主は気にしないらしい。


 カウンター下に置かれた電話の受話器へといそいそと手を伸ばし、発信履歴の一番上の番号をコールした。


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