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日和見主義だった俺が揉めすぎる演劇部で全国大会を目指したら青春すぎた  作者: 溝野 重賀
第6章 張り切る部活と春大会

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第183話 リハーサルの打合せ

 俺たち二年生が教室に戻ると、何やら先輩たちと後輩たちが盛り上がっていた。

 ん? 何だろう?

 状況をよく観察すると、なんとなく池本が話の中心にいる気がした。

 そう思い池本と視線を合わせるが、一瞬で目をそらされる。

 なぜ?


「杉野ん! 君ってやつは……!」


 俺が何かを反応する前に轟先輩が叫んだ。

 そして俺と池本の直線上に割って入った。


 えー、また俺のせいですか。


 そう目で訴える。しかし何故か津田先輩や木崎先輩、金子までもが冷たい目で俺を見てきた。

 田島も池本の背中擦っているし、何この雰囲気。

 周りを見ると樫田や椎名が、お前また何かしたのか的な目で見てくる。


 いや! 知らん知らん!


 慌てて首を横に振る。


「なんですか! 一体何の話ですか!?」


 轟先輩に聞く。今回ばかりは理解が追い付かなかった。

 目を泳がせながら、先輩は答えた。


「い、いや~、別に~。何でもないよ~」


 上擦った声に怪しみを感じながらも、俺はこれ以上話が進めないことを感じた。

 同じことを思ったのか樫田が俺の横に立ち、助け舟を出してくれた。


「まぁ、杉野が何かやらかすのはいつものことなんで、部活再開していいですか?」


「おお! そうだった! 昼休憩終わり! 午後の稽古を始めよう!」


「まったくだ。大会はもう目前だってのに、なぁ?」


「……だね。切り替えて稽古と行こう」


 手のひらを返すように、樫田の意見に賛同する轟先輩。

 津田先輩や木崎先輩が呆れながらもその流れを作る。

 すると、さっきまでの雰囲気が嘘のようにみんな稽古の準備を始める。

 ……うーん。納得いかないような仕方ないような。

 そんなことを思いながら、午後の稽古が始まった。



  ――――――――――――――



「午後の稽古に入る前に、明日のリハについての打合せをする」


 教卓に立った樫田が、そう言うと俺たちの空気は緊張感が増した。

 一年生たちだけはその言葉にピンと来なかったかのだろう。そこまで雰囲気が変わらなかった。

 それを見た樫田が丁寧に説明していく。


「田島は知っているかもしれないが、他の二人は知らないだろうという前提で話す。高校演劇にはリハーサルがある。決められた時間内で、実際のホール、実際の機材を使って行う。内容的には主に音響照明の確認、大道具などのバミリ……場所の確認などだ。時間が残れば演技の時間に費やしたいが、まぁ、まず残らないと思ってくれ」


 池本と金子は樫田の話を聞くと、息を呑んだ。

 特に金子は、自分にとってそれが重要な時間であると理解したのだろう。


「っす。貴重な時間ってことっすね」


「そういうことだ。やってみれば分かるが音響照明、特に照明は時間を予想しても、それ以上に時間がかかると思ってくれていいだろう。その間、役者も場の雰囲気を実感したり声の響きを確認したりとやることはある……まぁ、見ている限り声の大きさとかは大丈夫だとは思うが」


 そう言いながら、樫田は黒板にリハのスケジュールを書いていく。

 チョークの音が響き渡るほど、俺たちは静かになっていた。


「まぁ、ざっとこんな感じだ。同時並行で行っていくため、それぞれリーダーを決める。この辺は既に先輩たちと話した。まず音響については木崎先輩が金子にマンツーマン指導だな。照明は津田先輩が。それと本番は俺も照明に入る。で、役者についてだが――」


 そこで一度樫田の言葉が止まった。

 教卓から全体を見た樫田は、一瞬俺と目を合わせた後に決意したのかのように口を開いた。


「杉野。お前が中心になって動いてもらう」


『!』


「……は?」


 思わず、アホみたいな声を出してしまった。

 みんなの視線が俺へと集まる。驚きと困惑に数秒静かになったが、すぐに反論が飛ぶ。


「待って。なぜ杉野なのか理由を聞いてもいいかしら?」


「私も理由が知りたい。何で杉野なの?」


「予想外。なぜ?」


 二年女子の三人が一斉に樫田へと尋ねる。

 特に椎名と増倉は納得いっていないのだろう。語尾が強くなっていた。

 そして俺自身その指名に驚きを隠せなかった。

 樫田はみんなの行動を予想していたのか、疲れたような表情で答える。


「さっきも言ったが、これについては先輩たちと既に話した結果だ。決定事項だ」


 断言する樫田を前に、女子たちは言葉を失っていた。

 すると大槻がゆっくりと手を挙げて樫田に聞く。


「まぁ、俺は別にそれでもいいけど、純粋に大丈夫なのか? って思っちゃうんだけど」


「だねー。杉野が悪いってわけじゃないけどさー。順当に行くなら椎名か増倉なんじゃないって思うけど―」


 同じように思ったのだろう。山路も続けて樫田へと投げかける。

 激しく同意だった。なぜ俺が?

 二年生全員からの疑問を受けて、樫田は眉をひそめる。


「それについては――」


「私から説明しよう!」


 待ってましたと言わんばかりに叫び、轟先輩が教卓へと昇った。

 やはり元凶はこの人か。

 樫田は黙って場所を譲り下がった。

 腕を組んで胸を張りながら、轟先輩が声を張った。


「ずばり! これは今後を考えての選択です! 真剣な話なので直球に言いますが、あなたたちが望む部活をするためには! これは必要な事です! それは誰が部長になってもです!」


『……』


 吸い込まれそうになるほどの真っ直ぐな瞳で、轟先輩は言った。

 ストレートだからこそ、その言葉には考えさせられるものがあった。

 望む部活、か。

 俺に足りないものを経験させようとしているのは分かった。


「杉野ん! 君が嫌だというなら無理強いはしない! どうだい!?」


 轟先輩が一直線に聞いてきた。

 みんなも再度俺の方を向く。

 悩む前に、本能が俺に決断させていた。


「分かりました。やらせていただきます」


 俺の喉から、すっと言葉が出ていた。

 そして、轟先輩は満足そうな笑顔で頷いた。


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