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月花蜜水夜 ペリドティ・アルーア  作者: タカル・ファ・グライス
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二十二章 大きな花火があがった夜



 魔法で大きくなった船マリカローズ号に乗り、夜会を目指す空の道。


 雲が大きく陰ったりするのを触ろうとしたりするのかと思っていたのです。


 着替えを終えてマジックペンの説明の練習にタカルが夢中になるのは、意外でした。



 夜会はすでにはじまっていて、煌々と明るい室内は立食式。


 今宵はお金持ちが主催する舞踏パーティーで、その会場にキリシア姫もいました。


 身分が知れるといけないので、キリシア姫は「キーリー」と名乗っています。


 赤と黒の着物ドレス、紅真珠の髪飾り、厄払いの紅化粧に、黒いブーツ。


 キリシアは人酔いをして、ひとりで庭に出ました。



 会場は一階の広間で、庭はすぐそば、そして庭は広大です。


 疲れて一息ついたキリシアが、ふと視線をよこすと、そこには空飛ぶ船。


 ぽかんとしていた姫の前にでっぷりとした魔法の船から、縄梯子が放られます。


 スーツに腰飾りのアクセサリーをしたタカルが降りてきます。


 そしてそこに、船の中にいるポコナミが顔を出します。


「これ、忘れてるよ~」


「え?」


 投げられた目元仮面をキャッチしたタカルの顔を、キリシアは見ました。


 仮面をつけたタカルと、ポコナミを交互に見ます。


 キリシアは、「この前の占い師の、ポコナミだわ・・・」とつぶやきます。


 偶然それが聞こえて、「ポコナミさんを知っているの?」とタカル。


「ん?あ、ええ・・・あなたは?」


「僕は、シュガーホール」


「あの、物書きの?」


「そうなんだ。魔法使いに弟子入りをしたはずの者さ」


「そうなの、この空飛ぶ船は誰の持ち物?」


「僕」


「・・・本当に?」


「そう。君、名前なんて言うの?」


「キーリー」


「髪の根本は天然の色なの?」


 キリシア姫の髪の毛は長く白く、そして根本は紫色です。


「天然なの」


「ふぅん・・・パンジー・・・」


「なんて?」


「あ、ううん。まるで花みたいだと思って。君、会場で一緒に踊らないかい?」


「そうね・・・ええ、そろそろ舞踏会も盛り上がりを増すでしょうからね」


「もしかして先約があった?」


「いいのよ。気にしないで」


「もしかして具合が悪いの?」


「それよりもあなた、うわさの『マジックペン』の説明は必要じゃなくて?」


「そうそう、あれ?なんで知ってるの?」


 キリシアはきびすを返し、そして振り向きます。


「会場はこちらよ」


 素直についていくタカルは、庭先の警備に捕まり身分証明をしました。


 そしていつの間にか室内に入っていたキーリーの姿は見えません。


 仕方なく会場に登場し、『マジックペン』で自分の名前を書いて見せます。


 そしてそこには、『シュガーホール』と書いてあって、会場がざわつきます。


 最近シュガーホールの名前は有名で、最先端の彼らはもちろん彼を知っていました。


 それが話題の火だねになって、タカルに「お話をしてよ」と会場が言い出しました。


 タカルはサプリスカの弟子みたいなもの、から、シュガーホールへと変わります。



「お話する作品の題名は、『星の恋人』、短いお話なので聞きやすいかと思います」


 シュガーホールとして、タカルがお話を始めました。


 =====

 

 その名は「星の恋人」。


 綺麗な光を放つ宝石があった。


 宝石の中に光が宿っているのだ。


 別の星から来た希少な存在は、その石に選ばれた美女ごと国宝扱いを受けた。


「この石は未知のパワーを秘めているらしいの。


 絶対に中身を取り出してはいけない」

 

 美女がそう言った希少な石が盗まれ、叩き壊された。


「お金ならあるのよ」


 犯人はそう言った。


 叩き割られた宝石の光は、どんなにその星のお金をかき集めても解決しない、


 病原菌だった。


 =====

 

「おしまいです・・・」



 拍手やら笑い声やら他にも感想やらが色々で、タカルの周りは人だかり。


 タカルはその中に、キーリーはいやしないかと目くばせをしています。



 どうしてこんなに気になるんだろう?



 タカルはひとにもみくちゃになった状態でそう思い、


 なぜか始まった胴上げで空中に投げられた時、


 視界の中にキーリーを見つけ、


 そして何度目か目があったので、


 身軽に床に着地して見せると、彼女の元に歩いて行きました。

 


「あら・・・ごめんなさい、警備のこと」


「あれは仕方ない。お気になさらず」


「あなた、シュガーホールと言うのは本名でして?」


「・・・初めて聞かれた」



 しばらくの間があって、解放された理由を知るタカル。


 打ち上げ花火が始まる時間になったのです。


 乾いた破裂音が外からして、歓声が沸きます。



「あなたの・・・」


「見に行かないかい?花火」


「え、ええ。よくってよ」



 最初周りが淡く明るくなる緑色。


 小ぶりな赤がいくつか咲き、


 中くらいの花火がキラキラと散る。


 フィナーレには、


 我先にとかさばるくらいの金色の大輪。



 感動もひとしお、キリシアは「帰る」と言い出します。


 振り向いたタカルは思わず、踊らないのかい?と彼女に聞きます。



 そんな気分じゃないの、とキリシア。


「ごきげんよう・・・」


 なぜか陽気に振舞おうにも、キーリーを気にしてしょぼくれてくるタカル。



 キリシアは側近たちのもとに戻ると、気力で平然を保った分倒れかかりました。


 その身体を支え、「よく頑張りました姫」と側近たち。



「踊りたかったわ・・・それから、ポコナミさんがいたの」


「誰ですって?」


「占い師のポコナミよ・・・」


「・・・なぜ?」


「知らないわ」



 キリシア姫は間もなく気絶をしました。



 武官たちが姫の話が本当かどうか確かめるために庭に出ますが、


 空飛ぶ船は見当たりません。


 ポコナミが花火が見えずらいのはイヤだろうからと、気を使って移動したのです。


 この庭は広大で、地面に降りた船を隠すほどの森が偶然ありました。


 そんな事情を知ることができず、武官たちは「姫は疲れで幻を見た」と報告。


 側近は眉根を寄せて、「ポコナミを調べておこう」とつぶやきました。

  


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