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40話:独立して新しい事業を始めるなら前職場の人とも仲良くしとかないといけないね

「よお少年。強いクセになんでイジメられてるんだ?」


「強い? 違う。私は強くない。それに苛められてはいない」


「手足を切られてダルマになって、目玉抜かれて、耳と鼻と唇を削がれて。腹ン中も空っぽ。オマケにトゲの縄でグルグル巻きに吊るされてんだろ」


「これは生贄の儀式。このまま地と風と雪に清められて、春になれば女神様の遣いの鳥たちによって天へ運ばれる。私は生贄に選ばれた」


「そっかー。なんでお前さんが選ばれたの?」


「……私と弟は親に捨てられた。盗みや売春をして暮らしてたけど……ある日、餓死した弟の肉を食べちゃった。それを偶然見た人が自警団を呼んで。逃げる途中に斧を投げつけられて、その斧が貴族の子供の頭を割った。結局私は捕まって、弟も貴族も私が殺したことになって。でも、どんな罰を受けても死ななかった。不死身なんだって。この不死身の体は、きっと生贄になるためのものなんだろうって。私の穢れた魂は、生贄になることで救済されるんだって。って司祭様が言ってた」


「そっかー。穢れた魂なんて誰が救済するの? どんな物好きなん?」


「女神マジメガミデス様が」


「ははっ。そりゃ嘘だ。オレ様その女神と知り合いだけど、そんな親切さんじゃねえもん。それにアイツ色んな世界の神様やってるけど、この世界にはもう飽きて放置状態だよ。だからレンタル事業のテスト地としてオレ様が借りてるんだけどさ。べらぼうに高い金取られた」


「嘘? 放置? レンタル? 何を言っているのか、私には分からない」


「まあ良いから良いから。お前さんの魔力はちょっと惜しいし、宇宙最強の天才神であるルキフェ様が色々教えてやるよ。少年」




 …………




「それが、だいたい十万年くらい前。私が十一歳の頃。鮮明に覚えている。師匠との出会い」


 宇宙最強マンが語った。

 突然現れ助けてくれたルキフェという男は、おそらく我の祖父であるルキフェロイオンの若かりし頃。

 レンタル事業のテストとは、レンタル召喚獣のことだろうか。あれは祖父が考案したと聞いている。もしくは戦争用の兵器や兵力のレンタルかもしれないが。


「私は師匠に力の使い方を教えて貰って、失った顔や四肢や身体の中身を再生した。数年間、戦い方も教えてもらった。師匠には一度も勝てなかったけど……師匠の孫なら、あなたの強さも頷ける」

「我がその師匠の孫であると、あっさり信じるのだな」

「だって。あなた強いから」


 宇宙最強マンは想い出話を喋りながらも、ビームやらなんやらを撃ってくる。器用な奴だ。

 我も反撃した方が良いのかどうか迷ったが、


『敵が自分語りを始めた場合は最後まで聞くものだよ。適度に相打ちしながらね。その方が盛り上がる』


 と以前マートが言っていたのを思い出し、とりあえずビームを避けながら聞くことにした。

 祖父殿の過去には、我も興味が無いわけでは無いしな。


「”マジメガミデス”……っ!? げっ、ここってあの”ヤベーの”が管理する世界だったの? やっべー。そんなトコで不覚にも”首ちょんぱ”されちゃったわよ私……ボーナスに”影響”したらどうしよ。でもこの世界、女神の気配を感じないから”セーフ”よね? ”セーフ”であれ!」


 宇宙最強マンの話に出てきた『マジメガミデス』という単語を聞き、関係者席でレイスが焦っている。


「マジメガミデス……聞いたことはあります。今もいくつかの星では信仰されている、宇宙最古と言われる宗教ですが……」


 と呼び出しマンが、この世界におけるマジメガミデスなる宗教概念を軽く説明してくれた。


 マジメガミデス。我も聞いたことがある。

 マートと共に行った『超無敵ロボの世界』の管理神も同じ名であったな。複数の世界を管理しているのか。

 レイスの焦り方を見るに、やはり最上級レベルの神であるようだ。


 ただ有名な神ならば我やマートがその名を知らぬはず無いのだが、知らなかった。

 おそらくマジメガミデスとは本名では無く、世界管理の時にだけ使っている芸名のようなものであろう。


 宇宙最強マンの記憶を信じるのなら、我の祖父殿とも知り合いであったらしい。


「最初の三年間、師匠は私に付きっきりで修行してくれた。その後は、年に数回たまに来るくらいだったけど……ある日──」




「独立するつもりで故郷を出たら、裏切り者~なんて言われちゃってさ。逃亡中なんだよねー。もうここには来れねえかも。放置されているとはいえ一応アイツが管理してる世界だし。まっ元気でやれよ少年。お前さんは今、この世界では間違いなく宇宙最強だかんよ」




「──それが最後の会話。でもあなたに会えて良かった。孫がいるってことは、故郷の追手から無事逃げ切れたんだ」


 良かった。などと言いながらも相変わらずビームを撃ち続けている。

 我も避けるのはそろそろ面倒臭くなったので、


「喋るのか攻撃するのか、どちらかにしろ」


 ビームを打ち消した閃光に紛れ、宇宙最強マンの背後に回り、両腕を掴み捻りあげた。

 腕の骨がみしりと軋むが、宇宙最強マンは表情を変えず、


「師匠は元気にしてる? 出来れば会いたい。私、師匠相手にやり残したことが二つあるから」


 とマイペースに喋り続けた。一応攻撃をするのは止めて大人しくなってくれたが。


 しかしこやつ、祖父殿に会いたいのか。

 気の毒だな。


「会うのは不可能だ。もうとっくに死んでいる」

「……そう」


 宇宙最強マンは、どこか寂しそうな声になった……ような気がする。


「寿命? それとも『故郷の奴』ってのに殺された?」

「いいやどちらも違う。殺されたというのは合っているがな」

「誰に。あの師匠を殺すなんて、かなりの手練れ」


 我は実際、祖父殿に会ったことがない。我が生まれる前に死んだからである。

 なので祖母や叔父叔母からの伝聞になるのだが、



「殺したのは我の父上。つまりルキフェロイオンの息子だ」



 我がそう伝えると、しばらくの沈黙があった。


「…………どうして?」

「父上が祖父殿を越えたことを皆に認めさせるため、と聞いている。まあその父上も神──つまり『祖父の故郷の奴』に殺されてしまったがな。ちなみにその神は我が殺した」


 つまり我が一番強いという事だ。ゥハーッハッハッハ。

 と笑う感じの雰囲気ではなかったので、我は空気を呼んでそこまでは言わなかった。


「……分かった。やり残した二つの内、一つは諦める」

「そうか。残念だったな」

「うん。でも、もう一つは──」


 直後、宇宙最強マンの腕を掴み拘束していた我の手が、力の行き先を失った。

 宇宙最強マンが己の両腕を自傷し引き千切り捨て、無理矢理脱出したのだ。


「あなたで叶える。師匠を殺した男を更に殺した奴を、また更に殺したあなた。あなたなら十分。私の100%を超えた、限界以上の力。試す」


 宇宙最強マンの胴に、もう新しい腕が生えている。

 一方、我が持っている千切れた腕はピクピクと動いており、


 突如爆発した。


「私もあなたのお父さんと同じ考え。師匠越えを示しておきたかった」


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