序章 僕、アメーバ
初めまして!しゃじなっぽといいます。
まずは、貴重なお時間を使い
『S級転生チケットを盗まれたので、アメーバからやり直します!』
にアクセスしてくださった事、心より感謝申し上げます。
初めて書いてみた物語なので読みにくかったり
ツッコミどころが多くなってしまうかもしれませんが
皆様に思いもよらずアメーバになったじいさん
海部陸太の物語を楽しんでいただけたら光栄です。
11/2までは書き溜めているものを順次投稿していきますのでお付き合いいただければ光栄です。
---ぷつん---
『死亡しました。389回目の転生を行います』
頭の中でいつもの声が聞こえる。
--さっきは食べられたか?
明確な感覚は無い。
微かな感覚で、周囲を感じる。
無重力のように漂う身体。濡れているような、常に変わり続ける身体の境界。
味覚も痛覚もない。
そんな身体で送る人生
何とも『はっきりしない』と言った言葉がぴったりの僕の人生。
--アメーバの人生。いや、アメーバだから「アメーバ生」と言うべきなのだろうか。
そんなしょうもないことを考えつつ、もったり、もったりと漂いながら
「ちょっと分裂でもしてみるかなぁ」
なんて考えていると--ブチっ!と特大の衝撃が襲ってきた。
---ぷつん---
『死亡しました。390回目の転生を行います』
また、あの声だ。
「なんだ、今のすごい衝撃は。車か? ゾウか?」
そう驚くと同時に
(今のは7秒も生きてないんじゃないのか?)
なんて、落ち着いている自分もいた。
微細な感覚しかないので、出来事を想像で補完するしか無い。
かろうじて識別できる微かな明暗と電気。
そんな状態で、生まれては死んでの繰り返しだ。
(僕はいつまで、こんなアメーバとしての時間を過ごせばいいのだろうか…)
アメーバになってから、そろそろ400回に届く勢いだ。
長かったような、短かったような--そもそも日付の感覚がないからサッパリ分からないんだけどね。
これまでのアメーバ生--物忘れのせいか、よく覚えていないこともあるが、僕の記憶する限り一番長生きできた時でも、せいぜい1年程度。
といったところだと思う。
生まれた瞬間に意識が消えたり、モゾモゾっとした感覚のあとにゾウリムシか何かに捕食されたり。
他にも寒さで水面ごと体がカチコチに凍りついて動けなくなる「凍死」もあれば、変な化学物質や酸性雨が混ざったのか、体がジワジワと溶けていく「水質汚染」なんて悪夢もあった。
それに、一番精神的にキツかったのは「乾燥」だ。
乾燥しそうになると、スキルの効果で硬い殻を作って『シスト』という休眠状態に入る。
だけど、結局水が戻ってこなければそのままカラカラに乾ききって死ぬだけ。
シェルターに籠もったまま干からびるのを待つだけの時間は、なかなかに堪えた。
あとは餓死だ。周りに捕食対象がなくなって、ぼーっとしていたらそのまま死んでしまった。
と言っても、実際はどうだか知ったこっちゃ無い!
結局アメーバだから痛覚もなければ、まともな感覚自体が存在しない。
ほんのり「なんとなくこうかな?」と自分で想像して補っているだけだけどね。
何度か分裂に成功したこともあった。
ただ、この分裂というのは妙に変な感じなのだ。分裂した先の自分に意識があるのか、それとも元の方に意識があるのか?
分かれてしまえば会話もコミュニケーションの取りようもないから、確かめようがない。
そもそも、アメーバなのになぜ僕にはこんなにはっきりした意識があるのか?
ふふふ、それは僕の固有スキル【折れない心】のおかげなんだよ。
最初にアメーバへ転生した時
『固有スキル【折れない心】に加え、種族スキル【変身】を獲得しました』
というアナウンスのような声が頭の中に流れたのだ。
アメーバとして生きている最中は、スキルの詳細なんて分からないのだが、死んで転生するわずかな時間だけ、自分のステータスのような画面が見える。その時に色々と調べてみたのだ。
何せ、390回も経験すればこの少しの時間の使い方も慣れたものなのだ。
【変身】というのはアメーバ特有の種族スキルらしく、独自の分裂や形態変化を行うための、言わばアメーバの生態そのものだ。
「だがだが、なんと!【折れない心】は違うだよ!性能が違うのだよ!」
どうやらこれは、僕がアメーバになる前の人間として送っていた前世で獲得した、固有スキルのようだ。
このスキルのおかげで、記憶と自我が魂に定着しているようで、精神的タフさも上がるようだ。
そして死の繰り返し、正直このスキルがあるからこそ耐えられているのだろう。普通なら400回近くも死と転生を繰り返していたら、精神が崩壊してもおかしくないと思う。
なんたって『普通なら狂うでしょ……』と、転生中にどこからか呆れた声が聞こえたことがあったのは覚えている。
おそらく僕が転生する時に通った、あの[転生省]の職員の声だろう。
踏み潰され、凍りつき、溶かされ、干からび、食べられ、飢えて、燃やされて死ぬようなアメーバ生を、もう390回も繰り返しているんだから普通なら耐えられないよね。
(僕自身、自分の異常さに少し引いてます。)
「ほんと……あと何回繰り返したら人間に戻れるんだろうか……」
そんな愚痴をこぼしながら、またしても僕の体に何かが覆いかぶさっていく--そして、ゆっくりと意識が消えていくのだった。
そもそも、僕がなぜこんなアメーバなんかに転生する羽目になったかというと---
話は僕の葬儀まで遡る--




