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Wizards Storia   作者: 薄倉/iokiss
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宣戦布告

――王国歴1503年 ミクマリノ プラウダ城 城門


第二次大陸大戦の宣戦布告を決定づけた、ヴィクトの演説は以下の通りである。


「民衆の皆様、原魔結晶石破損に対する恐怖に怯える日々に疲れたでしょう。私が今から、あの祠で起きた全てを話します。この話を聞いて、恐怖の真実を理解し、脅威として対抗するべく心に火を灯していただきたい。

 あのドッドヘブルでの爆発は、原魔結晶石が故意的に破壊された際に溢れ出した大陸内部の魔力の膨張によるものでした。皆さん、落ち着いてください。これは、私にとっても信じがたい話で、動揺はしています。

 しかし、皆さん、心を強く持って、その耳で聞き、真実を見つめてください。私があの祠で見たのは、今まで秘匿とされてきた石守の一族が原魔結晶石を守っている姿でした。各国の王族や、一部の幹部はそれを知っており、大陸の秘密として、大切に守ってきました。これは、大陸内部に膨大な魔力が貯蔵されており、その栓としての役目を担う原魔結晶石が、人の手に渡らないようにするためです。

 私は、新年の祝いとして祠の内部に入り石守と接触しました。大陸の守護者である石守の一族は、誇り高き存在で、神々しささえ感じました。ですが、まもなく轟音が鳴り響き、異常を確認するべく原魔結晶石の鎮座する部屋に到着しました。

 すると、どういうことでしょう。ルストリア国軍のベガ大将が石守の格好で、原魔結晶石を破壊していたのです。私は、すぐに捕えようと試みましたが、それよりも早く原魔結晶石から噴き出した魔力の渦に巻き込まれ、命からがら逃げだしてきました。ええ、私の逃亡を責めていただいて構いません。

 しかし、私はどうしても許せなかったのです。私と同郷で共に戦ってきた最高幹部であるヴァルヴァラは爆発に巻き込まれ死にました。そのまま守雷帝ベガと戦って討ち死にでもしてしまえば、この事実は闇に葬られてしまいます。それならば、いち早く外に逃げ出し、我が君主の愛する民の皆様に危険を知らせたかったのです。

 いいですか!? ルストリアのベガ大将は、この新年の祭りを利用し、ミクマリノの幹部が集まる場所で原魔結晶石を破壊し、その爆発で全てを無に帰すという暴挙に出ました。これは、決してあってはならないことです!

 これは突然偶発的に起きた悲劇などではありません!

 ルストリアによる侵略行為、破壊活動だったのです!

 そのうえ魔力除染部隊を編成して救助を行う?

 彼らはどれだけ我々の気持ちを裏切るのか!

 自身で破壊して、それを自身で救済?

 これがルストリアのやりかたです!

 わかりますか!?

 

 …… 

 

 今シーナと言うこの土地は復興を遂げようとしていました。それなのに彼らは、大陸の自由と平和を謳い、逆らう者の処刑を強行したのです!

 何が大陸の平和だ!

 何が自由だ!

 一部の者が勝ち取るだけの不条理な平和に付ける名があるならば私はそれを『醜悪』と呼ぶ!

 今こそ気高きミクマリノの民は、立ち上がらなくてはいけない。今回の事故で家族を失った者もいるだろう、自身の家を失った者もいる、失ったままでいいのか!

 我が君主レオンチェヴナ皇帝は、あの日、自身の体が魔力で侵されていることを隠し、必死で皆を勇気づけていた。それこそ、立つことがままならなくなるまで、君たちを必死で勇気づけた!

 いいのか!?

 それで!

 君たちじゃない!

 君に言っているんだ。この言葉が届いている君。この大陸の平和を誰より願う君の心に訴えかけている!


 さあ!

 立ち上がれ!

 戦う相手は得体のしれない恐怖などではなく、単純な脅威だ!

 その手は、寒くて震えているのか!?

 恐怖に震えているのか!?

 そうではない!

 怒りに震えているのだ!

 さあ、立ち上がれ!

 ミクマリノを守れ!!

 ミクマリノ民よ!!!」


――


 この演説は、民衆を大いに沸かせた。熱狂が熱狂を生み、地響きが起こるほどの雄叫びが、ルストリアに届きそうなほど鳴り響いた。



――王国歴1503年 スルト地区・ミクマリノ間国境要塞


 ヴィクトの大演説の後、ミクマリノは正式にルストリアに宣戦布告を行うこととなった。レオンチェヴナは、ヴィクトに対する疑心を完全に取り除くことは出来ず、石守とのやり取りで更に疑いの眼差しを持つことになったが、ヴィクトとの数十回に及ぶ一対一の話し合いで、宣戦布告の正当性を見出すことになり、一か月かけて、その重い腰をあげることになった。

 ここで言う宣戦布告の正当性とは、原魔結晶石が破壊されたことによるシーナ地区の住人が住まうことが出来る国土の減少に伴い、国土の拡張が急務になってしまった。その為、第一次大陸大戦の際に二分したうちのもう片方であるスルト地区の開放を願いでる、という点に起因している。

 しかし、そのスルト地区の国土のいたる所にルストリアの軍事施設があり、これを明け渡す、ということは少なからずルストリアにとっては武力の減少につながってしまう。現にヴィクトは数度、この案をルストリアに提出しているがその全てを却下されている。これの影響は「亡命」という形で現れ、ミクマリノ国民がルストリアに流れ出ている。


 レオンチェヴナとしては本意ではないが、ルストリアに宣戦布告し、その武力を示したところでスルト地区の分割、あるいは譲渡を願い出ることによってこの交渉が成り立つと考えた。つまりは、こちらには武力が充分にある、ということを示しつつ、お互いが本気でやり合えば相当な被害になるので、領土を頂きたい。と、そんな具合である。


 しかし、宣戦布告の後、国民の想いに勢いが付き始め、最早それを止めることが困難な状況になってしまっていた。当然、ルストリアという国は巨大で、強大なので、これくらいの勢いが無ければ、拮抗はおろか対抗すら不十分である為、それを止めることも出来ない。これは、ヴィクトの情報操作により、国民のルストリアへの憎悪を膨れ上がらせる仕掛けがうまく作動したためであった。

 そもそもで言えば、レオンチェヴナはヴィクトとの一対一の面談において操魔法を施されている。それでも、その魔法に対して一か月間耐えたのは、レオンチェヴナの強い精神力があってこそだが、結果としては宣戦布告をその口で行い、民を奮い立たせてしまった。




――こうして勃発した【第二次大陸大戦】


 ミクマリノが仕掛けた主戦場での戦いは、既に半年間以上にも及んでいた。


 その戦闘の激しさは第一次大陸大戦を彷彿とさせるものであった。それでも、互いに魔法で応戦しているにも関わらず、国境要塞が形を保っていられるのは、第一次大陸大戦の際に、ヴィクトがスルトのバーノン大王に侵略すると脅迫されたため、スルトに加担した、という言い分がそのまま聞き入れられたことにより、そのようなことが再発しないように、武力をあまりもたないミクマリノは国境要塞を強化することを許可されたためである。

 その為、他国、とは言っても現在では比較がラミッツしかないわけだが、そのラミッツの国境要塞の倍の厚さで、その壁面に使用されている資源は魔法を散らす効果が期待できる珊瑚を練りこんである。これにより、国境要塞を魔法で抜く、という荒業は不可能になり、主な戦闘は白兵戦、週に一度ほど互いに様子を見ながら魔導兵が投入され、鎬を削りながら好機を伺っていた。


 双方、死傷者はかなり多く、魔法使用過多によるオーバーフローの続出も重なり、ルストリアは出兵条件の中にある年齢を引き下げ、若くても魔法適正があり、戦闘の才能が充分であれば投入することを決断した。ミクマリノの戦力は、ルストリアと敵対するには不十分であると思われたが、ヴァルヴァラの育成した魔導騎士団の投入により、ルストリアの精鋭を退けるほどの実力を示し、劣勢ながらも対抗している状況であった。

 しかし、先月に入ってからは状況が変わり、シーナ地区から次々に入隊希望者が集まり始め、ついにミクマリノにも優位な状況が発生した。これは、ウィレムが直々に訓練をつけたシーナ地区の住民たちであり、彼らはものの二か月ほどの訓練で実戦に投入され効果を挙げるのであった。

 二か月前の段階で、ルストリアはミクマリノを攻め切ることが出来ていればこのようなことにはなっていなかったが、仮に、このラインを抜いたとしても、隣り合う国同士、分散して別の箇所から攻められれば、必然的にその地域の防衛は脆くなってしまっている為、やはり、この展開は逃れることは出来なかったと言える。


 これにより、スルト・ミクマリノ間の国境要塞付近で大規模な戦が始まる事となった――。

お読み頂きありがとうございます。

励みになりますので、いいねやポイント評価を頂けますと幸いです!


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是非見てみてください!

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