09 ログインドッキリ
ラブピにログインした。
「ぎゃあ!」
そしてすぐさま目に入ってきた光景に悲鳴を上げる。
「な、なんで鳥が……!?」
前回のログアウト時のまま壁にもたれている私の視線の先には、私を襲ってきたカラフル鳥がダクスの体を羽でふぁさふぁさしている光景が。
「ダクス!!」
「キャン!」
お腹を見せた状態で横たわっていたダクス。
鳥にやられたと思い大声を出すと、「おかえり」とぱっと起き上がりこちらに駆け寄ってきた。
「生きてた……!」
尻尾を振りながら前脚をしゃかしゃかしてくるダクスを抱きしめる。
良かった……!
「ダクスあの鳥! ていうかなんで!? ここセーフティー! チカチカさん!」
混乱している私に、カラフル鳥がすたすたと近付いてきた。
鳥ってこんなすたすた歩ける……?
「ぴちゅ」
「ひえっ…………えっ?」
まさか。
「今のあなた?」
「ぴちゅ」
そう、「おかえり」とダクスと同じ事をカラフル鳥が言ってきたのだ。
「えっ? なんで? 言葉がわかる? えっ?」
もはやパニック。
そんな時にチカチカさんの声が聞こえてきた。
「敵じゃない」
「あっチカチカさん! 敵じゃないって?」
「そのままの意味」
管理人は詳しい事を教えてくれそうにもないので、目の前にいるカラフル鳥に視線を戻す。
そのカラフル鳥はいつの間にかくちばしにくわえていた果物のような物をころんとこちらに転がしてきた。
「ぴちゅ」
「……ご飯? え? いいの? ありがとう……」
……鳥に餌付けされてしまった。
恐る恐る果物のような物に手を伸ばす。
「ぴちゅ」
「あ、はい」
皮をむいて食べろと指示までされた……。
ダクスもカラフル鳥にじゃれついているので、鳥は安全な生き物なのはわかった。
なのでキウイに似た形のそれを皮をむいてひと口かじる。
それはとても美味しかった。
「メロン! 何これメロンの味がする!」
美味しい。
つい鳥の存在そっちのけでむしゃむしゃメロン味の何かを食べる。
「うわ~。メロン! うわ~」
まさかゲーム内でメロンを食べられるとは。
正確にはメロン味の何かだが。
そのままがつがつ食べ終わると、カラフル鳥は他にもいくつか果物を転がしてきた。
ふと『ころん餌付け』としょうもない言葉が頭に浮かんだ。
「ありがとう!」
「ぴちゅ」
「え? 名前? あなたに?」
またまたまさかの展開。
「チカチカさん、名前付けてって言われました」
「つければいい」
「はあ」
いいのか。
というかこの鳥はなんだ。
「名前はつけるね。その前にあなたは何? 敵じゃないのはわかった。でも昨日私を追いかけてきたよね?」
「ぴ」
「えっ……。追いかけてたんじゃなくてここに誘導するためだった……?」
なんと。
でも確かに私に攻撃はしてこなかったし、進行方向に回り込んだりしてた。
「えっと、ありがとね」
「ぴちゅ!」
羽をむしってやるとか考えててごめん。
「ここに誘導って事は……チカチカさんの関係者?」
そうとしか考えられない。
「木の精霊その2」
……嘘だな。
でも絶対木の精霊で押し通してくるんだろうな……。
なにがそこまで頑なにさせるのか。
「……じゃあ管理人さんその2って事で」
「ぴ!」
勇まし気に羽をバサバサしているカラフル鳥を見ながら、名前について考える。
「…………名前は【キイロ】で」
単純に見た目の色から決めた。
頭部のモフがクリアイエローだし。
が、名前をつけた瞬間、かっと眩しい光に包まれた。
「うおっ」
とっさに腕で顔を隠す。
このゲーム光に包まれる系多くね。
「キャン!」
「ぴちゅ!」
ダクスとキイロの声が聞こえてきたので腕を下ろすと、キイロが誇らしげに胸を張っていた。
その胸にはさっきまで無かった“K”という白文字をメインにしたような紋様が。
「え? どしたのキイロそれ? かっこいいね」
「ぴちゅ」
はるも、と手をつつかれたので見てみると、私の左の手の甲にも同じ紋様が金色で刻まれていた。
私の場合は“K”の部分がキイロのシルエットになっている。
「なにこれ! かっこいい!」
私の名前はすでにキイロに知られていて、個人情報はもれまくっているがそんな事は関係ない。
紋様かっこいい。
「これって私がキイロをテイムしたって事?」
「ぴちゅ」
どうやらテイムではないらしい。
「チカチカさん、これなんでしょう?」
管理人に聞いてみるも「仕様」としか返ってこなかったのでもうそういう事にしといた。
手の甲をまじまじと満足するまで観察すると、メロン味の果物を食べた時の手のべたつきが気になってきた。
しかしここには水場はない。
なので創造魔法の練習ついでにちょっとした水球を創り出して手を洗う事に。
が、昨日のウォータボールのイメージが強すぎたのか、水球はその場にとどまらずに壁にひゅんひゅんぶつかっては消える。
違う違う!
そして早々にMPが0になってしまった。
「才能が欠片も感じられない……」
「キャン!」
「ぴちゅ!」
「キュッ!」
うなだれていると、知らない声が耳に飛び込んできた。
「今の声――――え?」
ぱっと顔を上げると、家の中に鳥の羽を生やしたペンギンがよちよち歩いて入ってきた。
……羽ペンギンに不法侵入されたんですけど。