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外に見張りを立てる必要もない。今やヴェスパは、この町最大の勢力だ。何に警戒する必要があるというのだろう。
「そいつは都合が良い」
そう言って、ストラスは、壁のブレーカーを落とした。
電灯のスイッチは階段の脇にあるが、電気設備全体を司るブレーカーは、奥の壁にある。地下室は、一瞬で闇に包まれた。
「クソッ!灯を消された!逃がすな!階段の前を固めろ!」
リーダー格らしい男が指示を出す。
やれやれ。馬鹿は死ななきゃ治らないか。
ストラスは仮面に手をやり、側面にあるスイッチを入れた。暗闇に閉ざされたはずの地下室が、白黒の映像で浮かび上がった。
仮面の中に、赤外線暗視装置を仕込んである。
ボロの内側から包丁を二本抜き取り、両手に一本ずつ、逆手に握る。手探りで出口へ向かおうとしている男の一人に狙いをつけると、音も無く忍び寄り、喉笛を掻き切った。
男は、何が何やら分からないまま、切られた喉を押さえた。ゴボゴボと血でうがいをしながら、苦しそうに地面に転がった。
文明の衰退した世界において、闇は驚異だ。人間は、獣のように夜目が利かないし、卓越した聴覚や臭覚も持ち合わせてはいない。闇を味方につけたストラスに勝てる者はいない。
二人…、三人…。
闇の中で男たちが、次々と血の海に沈んでいく。
「な、なんだ?!どうしたんだ?!何が起きてる!クボタ!ヤギ!大丈夫か?」
喚き散らす男の視線は、頼りなく宙を彷徨っていた。
「返事が無いところを見ると、その二人は既に死んだようだな」
耳元で囁くと、男は悲鳴とともに腕を振り回した。
難なくかわし、血に染まった包丁を首に突き刺した。
男は、首に包丁を突き刺したまま、声もなく床に倒れた。
ストラスは、切れ味の悪くなったもう一方の包丁も投げ捨てると、ボロの中から新たに二本の包丁を抜き出し、両手に構えた。
あと二人…。
一人は、恐怖で腰を抜かしてしまい、床でジタバタしていた。小便を垂れ流している。
「まったく…。人の命を奪っても何とも思わないくせに、自分が殺されるとなると、この体たらくか。見苦しいな」




