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新聞をパラパラと捲って、スポーツ欄に行き着いた。
『プロ野球。新人王に巨人、諏訪』
プロ野球か…。
野球のことは、小さい頃見たテレビのことが、うろ覚えに残っていた。ハイブのおっさん連中にも、野球が好きだった人はけっこういて、昔話を聞いたこともある。
ひょっとしたら、テレビで観られるかもしれないぞ。
そういえば、スーコも小さい頃、野球をやっていたという話だ。残念ながら、彼がボールを打ったところは見たことがない。スーコにバールで殴られた奴が、5mも吹っ飛んだのは記憶に新しいが…。
ん?諏訪?
「スワァ?!」と、アキラは、記事にあった写真を見て大声を出した。
「どうしたんだ?」
「こ、こいつ、スーコだ!」
「なんだ、巨人の諏訪がどうかしたのか?」
「諏訪って、下の名前、何て言うんだよ?」
「何だったかな…」と、望巳は拳で頭をコツコツと叩いた。
「コウサクだ。諏訪耕作」
ちょうど出来上がった朝定食、もとい『もうにんぐ』を持って来た店主が、代わりに答えた。両手に大きな皿をのせている。カリカリに焼いたトーストと、ベーコンエッグ、ツナサラダ、ナポリタンが、まるで刺身でも盛りつけるような和風の皿にのってあった。
「そうそう、耕作」と、望巳が同意する。
「やっぱり!こいつ、スーコだよ。ハイブの仲間の!そうか、あいつ野球選手になったんだ。ハイブの奴らが聞いたら、驚くだろうな!」
「なんだ、お前、諏訪の知り合いか?」。興味深そうに、店主が訊いた。
「というか、何というか、複雑なんだ」と、代わりに望巳が答えた。
「今度諏訪に会ったら、伝えといてくれ。お前、近頃、チヤホヤされて、いい気になっていないかってな。パワーはたいしたもんだが、足が遅せぇんだよ。いくらスラッガーでも、全打席ホームランってわけにゃいかねぇんだ。少しは精進して、走る練習でもしやがれ」
「言っとくよ。確かに、あいつ、俺より足が遅いんだ」
「頼むぜ」と、老人はアキラに向けて親指を立てた。




