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 時間も時間なので、続きは翌日話そうということになった。

 望巳は、アキラのためにビジネスホテルに部屋をとってくれた。とってくれたと言っても、ただ文字通り手続きをしただけであって、費用はもちろん、アキラの鞄から出た。

 さらに、部屋まで付き合ってくれて、

「こいつがトイレだ。大をしたときには、こっちに回し、小ならこっちに回す。覚えきれんなら、とりあえず、大の方へまわしとけば大丈夫。これが風呂。たいていは、シャワーしか使わない。ああ、体を洗うんだよ。これが温度調整だ。回すと、出て来るお湯が熱くなったり、ぬるくなったりする」

 アキラが理解するまで熱心に教えてくれるので、モーニングコールの使い方まで説明し終える頃には、日付が変わっていた。

「とりあえず、こんなところだ。有料チャンネルの使い方は、今度また教えてやる」

「ありがとう、ノゾさん。でも、俺はノゾさんを知ってるけど、ノゾさんは、俺を知らなかっただろ?初対面の俺に、どうして、こんなに親切にしてくれるんだい?」

 アキラが言うと、望巳は寂しそうに笑った。

「最初は、終電までの時間潰しのつもりだったんだ。家に帰りたくなくてね」

「家に?どうして?」

「妻と折り合いが悪くてね。一緒にいてもギクシャクするから、こうして日曜でも会社に出てるんだよ」

「結婚してんの?!ノゾさん!」

「ああ…。高校のときからの彼女でな。もう5年になるよ。でも、子供ができなくてな…」

 ノゾミが死んだとき、ユイが言った言葉を思い出した。

『ノゾさん、パンデミックの前には、結婚を約束した恋人がいたんだって。すごく綺麗な恋人だったって自慢してたわ。『俺なんかにゃ、もったいない美人だった』って。会えたかな?きっと今頃、一緒にいるよね』

 突然、止めどなく涙が溢れて来て、アキラの頬を濡らした。

「な、なんで泣いてんだよ、お前」

「おめでとう、ノゾさん!ううぅぅぅ…。良かったあぁ…」

「まいったな…。そっちの世界の奴は、みんなこう涙脆いのか?」と、ノゾミは頭を掻いた。


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