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蛍光灯によって現れた装置は、想像を絶する巨大な物だった。地下聖堂は、天井こそ低いが、奥行きはかなりあって、ひょっとしたら、上にある教会そのものより広い。その半分以上が、ランプやスイッチのついた鉄の箱や、剥き出しの無数の配線、それらが複雑に絡み合った装置によって埋め尽くされていた。
「誰だよ、あんた。どうして俺を付け回す?」
パンデミック前ならいざ知らず、今の世の中には、あるはずのない巨大な装置に圧倒されて、少し動揺しながら、アキラは訊ねた。
「お前が、選ばれた者だからさ」
「前にも、そんなことを言ってたな。俺の、いったいどんなところが、特別だって言うんだ?ただの、死にぞこないのガキだぜ」
「私と取引する気には、なったのか?」
「取引?」
「望みを言え。この世界で望まれるものなら、たいていのことは叶えることができる」
「この世界?」
教会の地下は、天井が低く、コンクリートで固められているので、やたらと声が響く。表情を変えないフクロウの面が、じっとアキラの顔を見つめていた。なんだか、得体の知れない物と喋っているような、まるで夢でも見ているような気持ちになった。
「望み…」とアキラは復唱した。望むことなど、一つしかない。だが、この人物にそれが叶えられるとは思わない。もう、終わってしまったのだ。彼女も、自分も…。くだらないたわ言に、その神聖な名前を汚して欲しくはなかった。だから、決して言うつもりではなかった。それなのに…。
「ユイを…」。口が、勝手に零しやがった。
「承知した」。フクロウは答えた。
「何だと?」
「自分で頭を打ち抜いた女。あの女に会いたいというのだろう。承知した。会わせることは可能だ」
「見ていたのか?!」
「厳密には、彼女であって、彼女ではない。だが、間違いなく彼女だ。それでも良ければ、また会わせてやろう」
「デタラメを言うな!」
「だが、そのためには、私の言うことも聞いてもらわねばならん。それで、良いな?」
アキラは黙った。
良いさ。何だって良い。ユイに会えるのなら、何でもする。死ねば会えるというのなら、死んでやる。
いいや、そうじゃない。この男が嘘をついていても、良いのだ。デタラメでも、良いのだ。いまさら、何も失うものはないのだから。
そう考えると、不思議と笑いがこみ上げてきた。アキラは、自嘲的に笑った。
「いいぜ。何でも言ってみな。この俺の身一つで足りるのなら、何だってやってやるよ」
フクロウは、それを聞くと満足そうに肯いた。




