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通用門の向こうに、冷たい街があった。壁の一部をくり抜かれて造られた通用門は、横にスライドして開くタイプのものだ。正門ほどではないにしろ、大きなもので、一人では開きそうにない。鉄の門に手をかけると、既に冷えてかじかんだ手が、さらに冷えて痛みさえ感じた。
今は、輸送隊でもらった黒のブルゾンを着ている。
お気に入りのオレンジのダウンジャケットは、破れたところに血が染みて、もう使い物にならなかった。ブルゾンの裏地は、たまたまオレンジ色で、そこだけは気に入っている。
マサトが、真剣な表情でこっちを見た。
「この間の話だが、考えてくれたか?」
輸送隊に入らないかという話のことだ。アキラはうつむいて、頭をポリポリと掻いた。
願ってもない話だが、今は先のことを考える気にはなれなかった。輸送隊に入るとも、入らないとも。生きるとも、死ぬとも…。
「タクミの目玉を吹っ飛ばしたのは、お前たちだな」
驚いてマサトを見る。答えなかったが、彼は肯定したとみなしたようだった。
「奴は生きている。生きているが、生死の境を彷徨っている」
「今となっては、どっちだっていい。…ずいぶん、奴らの事情に詳しいんだな」
「気になるか?お察しの通りだ。ヴェスパはワスプだが、俺たちの顧客の一人だよ。今じゃ、ファームを除く、一番のお得意様だ」
アキラは、「ハッ!」と笑い飛ばした。「ワスプと戦う正義の輸送隊が、聞いて呆れる」
「だが、心配するな。お前が俺たちに加わるのなら、必ず守ってやる。例え、奴らと敵対することになろうともな。ヴェスパは確かに客だが、ハイブを皆殺しにするようなタクミのやり方は、俺たちも気に入らない。いっそ、このまま死んでくれればいいと思っている」
そのとき、門の向こう。はるか彼方に、立っている人影が見えた。ずっとそこにいたのか、たった今現れたのか分からない。
フクロウ…!
こちらを見ている。アキラには、ボロ布を纏い、奇妙な仮面をかぶったそれが、自分を呼んでいるように見えた。
『もし、私の頼みを聞くのなら、どんな物でもくれてやろう。どうだ、取引しないか?ようく考えることだ。何でも手に入る。死んだ者にも、また会える。会いたい者がいるだろう。身を焼くほどに、会いたかろう』
まさか、そんなたわ言に騙されはしない。だが、奴は行き倒れた俺を助け、輸送隊まで送り届けた。どうして、そこまで俺にこだわる?奴は、たくさんのハイブを渡り歩いて、何かを探していた。俺を探していた?何のために?
それを知らなければならないような気がして、アキラは通用門を開けようとした。が、重くて開かない。
「どうした?何も、今出ていかなくても、傷が癒えてからでいいんだぞ」
「そうじゃない!フクロウだ!フクロウがこっちを見ている。ここを開けてくれ」
「何?!」
マサトは、通用門の脇にある、ぶら下がった鎖に手をかけた。ジャラジャラとチェーンブロックを回すと、通用門が少しずつ隙間を広げた。
やっと人が通れる広さになったところで、アキラが飛び出した。




