↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/163

32

 松明に火をつけ、地面に置いた。

 ユイを助け出した後、帰り道は暗闇になる。追手が心配される中、ランプの灯でゆっくり歩いて帰るわけにはいかない。松明を目印にして走れば、逃げ切れる確率はずっと高くなる。

 生きていてくれさえすれば、それでいい。俺は、命を賭しても彼女を助け出す。

 何度も自分にそう言い聞かせて、ここまで来た。だが、ユイが攫われて、既に18時間が経っている。まったく無事だということは、あり得ない。

 ワスプに襲われたハイブの女たちが、どんな目に合ったかというのは、風の噂で聞いていた。この18時間の間に、ユイの身に起きたことを想像すると、気が狂いそうだった。

 ショウゴの話では、この先がアジトになっているという。

「タクミは頭もきれる。アジトに地下鉄を利用するなんて、よく考えたもんだ。真っ暗な上に入り組んでいて、おまけに罠まで仕掛けてある。俺のように、元メンバーでなかったら、アジトにたどり着くことすらできないだろう。ヴェスパに唯一の死角があるとすれば、それは油断だ。ハイブを襲う側の自分たちが、まさか襲われるとは思っていない」

「他にも、抜けた奴ってのは、いるのか?」

「タクミがボスになってからは、たぶん俺が初めてだ。奴の求心力は神がかっているからな。それに、ヴェスパのメンバーでいる限りは、恵まれた生活が送れる。食い物にも女にも不自由しない。裏切れば、もちろん殺される。裕福な生活を捨て、殺される危険を冒してまで抜ける奴ぁ、いない」

 そういえば、ノゾミが死んだ日、ショウゴは偵察に行くのを拒んだ。あのときは、相手がワスプかどうか分からなかったが、ショウゴは、自分がノイサンハイブで生きていることを、知られるわけにはいかなかったんだ。

「ショウゴはどうして?」

「俺は、変わり者だからな。あいつの残虐非道なやり方が我慢できなかったんだ。見てしまったんだよ。顔色一つ変えず、子供を殺すところをな。昔、俺には二つ下の弟がいてな。ウィルスで死んじまったけどさ。ちょうどそれくらいの小さい子だった。知ってるだろう?皆殺しにされたハイブの話だ」

 …ナインス。

 さらに、もう一本松明を置いたところで、先に光が見えて来た。

「あそこだよ。松明は何本置いた?」

「十七本だ」

「よし。逃げながら数えるのを忘れるなよ」

 そのとき、遠くに人影のようなものが見えた。アジトの方だ。

「シッ、誰か来たみたいだぞ」

「ちょうどよかった。女が何処にいるのか、聞きたかったところだ。隠れよう」

 歩いて来たのは、一人の男だった。光を背にしてこちらに歩いて来る。懐中電灯を持っているらしかった。

 酔っぱらっているのだろうか。フラフラと歩いてきて立ち止まり、壁にむかって、ズボンのチャックをおろした。

 ジョロジョロと音をさせて用を足し、体を揺すって滴を落とし、チャックを上げたのを見計らって、アキラは首に腕を巻きつけた。男は、慌ててもがいたが、もう遅い。完全に極まったチョークスリーパーは、絶対にほどけない。しばらくして、男の腕から力が抜けるのを確認して、アキラは腕を解いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。