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「別人よ。そんなこと、あるわけないじゃないの」。ユイは、写真を一瞥して言った。「だって、パンデミックは、アタシが7つのときよ?この子は、どう見ても15~6歳。高校生って、いくつでなれるんだっけ?ええっと…、ほら、やっぱり、それくらいの歳よ。だいたい、あんただって、十年前からアタシのこと知ってるじゃないの。アタシがそんな格好したことあった?」
夕食後、アキラが子供部屋に持って来た写真を見て、ユイは言った。
「分かってるけど…、だけど…」と、アキラはまた写真を見た。
それにしても、似すぎている。目元のホクロの位置までぴったりだ。とても他人とは思えない。
「姉さんがいたとか?」
「一人っ子です」
「でもなぁ…。どう思う?」
アキラは、タケルに写真を見せた。
「あっ、姉ちゃんだ。スゲー!いつ撮ったのさ、こんな写真」
「ねえたん、つげー」。アシタが真似した。
いつの間にか、横に来ていた9歳のヒカリが、「うわぁ、セーラー服だ。いいなぁ、お姉ちゃん。私も着てみたいなぁ…」
「だから、アタシじゃないってば…」。ユイが頬杖をついて、嘆息した。「そりゃあ、こんな世の中じゃなけりゃ、そんな格好もしてみたいけどね」
「そーか…。やっぱ別人か」
冷静に考えれば、本人のはずがない。
ユイは、汚れてボサボサの髪を後ろで束ねているが、写真の女の子は毎日でも洗っていそうな清潔な髪をしている。ユイのように日焼けもしていないし、笑い方一つとっても、まるで幼い子供のように、くったくがない。
最初は驚いたが、よくよく見てみると、別人のような気がしてきた。
「それで?その商人さんは、どうして、そんな写真を持ってたの?」
「さぁね…。大方、パンデミックで亡くなった妹だとか、恋人だとか、そういうんじゃないのかな?」
「なんだか、やるせないね」と、ユイは暗い顔をした。
そうだ。彼も、一人の人間なのだ。自分たちは、ノゾミを殺したあの男たちを憎んでいるが、こちらも、向こうの仲間を二人も殺しているのだ。
もし、パンデミックが無かったら、こんなに憎み合うことも無かっただろう。今よりずっと平和に、裕福に暮らしていただろうし、ひょっとしたら、友達になっていたかもしれない。
「さぁ、そろそろ行かないと」
「見張り?」
「ああ、見張りだ。ただし、ヒザキのな。ちゃんと見ていないと、あいつ、おっさんを殺しちまう」
「ヒザキさんって、そんなに怖い人なの?」
「いいや。でも、あいつ、ノゾさんが死んだの、自分のせいだって思ってるから。あの日、違うビルの発掘を提案したこと、後悔してるから…」
そのとき、リクが大きな本を広げてアキラのところにやって来た。
「兄ちゃん、これ」
「ん?どうした、リク?」
それは、鳥の図鑑だった。アキラたちは発掘の際、面白そうな本を見繕ってハイブに持って帰ることがある。二階の空き部屋の一つは図書室になっているが、もはや入りきらない量だ。本が好きなリクは、子供部屋にある物は全部読んでしまっていて、毎日のように図書室に出入りしているようだった。
「モリフクロウ?ああ、この間の…」
「こんなのだった。あのね、フクロウが夜目が見えるのって、網膜の細胞の密度が、人間の八倍もあるからなんだって」
「そいつは、すげえや」と、アキラは適当に返事した。リクは六歳だが、難しい本も読む。文字を判別する能力は大人以上だ。知識の量でも、遠にアキラを凌いでいる。
「でも、こんな顔した人なんて、いるわけないだろ?」
「うん、だから、あれ、お面だったんだと思う。遠かったから、分からなかったけど…」
「バーカ、誰が、そんな趣味の悪い面を…」と言いかけて、アキラは黙った。
奇妙な面をかぶった男…?




