あぁぁぁぁ
開いた口が塞がらないでいる私に、お父様はにっこり微笑みかけました。
静かにドアが閉まる音にはっとして、寝転がっていた姿勢を正します。対するお父様は、ゆるりとした足取りでベッドへ向かってきます。
ど、どどどどうしよう。
かなりやばいことを口走っていたような気がします。
どこまで聞かれたでしょう。
も、もふもふさ~ん!!!
対するもふもふさんは、ふわ~りふわ~り呑気に舞っています。
『大丈夫ー。やばいところは大きな声じゃなかったから、聞かれてないよ~』
そうなんですか?
『君が前回壊したベッドにも魔法がかかっていたでしょ?このベッドにも同様の魔法がかかっていてね、その作用の影響で、この結界の中にいる限り多少の声なら簡単に外に聞こえないようになっている。大きな声は別だけど』
では、お父様に聞かれたのは最後だけ、と判断してよろしいでしょうか?
『うん、大丈夫。彼には聞こえていないよ。もしその危険があれば、さすがに止めてるよ』
そうかなぁ?と、思わなくもないですが、今はその言葉を信じるしかありません。
ベッドに腰掛けたお父様をにこりと出迎えました。
「なんでもありませんわ。それより、お仕事は終わられたのですか?」
すると、お父様は若干疲れた顔で私の頭をなでました。
「あぁ、とりあえず今日のところはね。それより、随分遅くまで起きているんだね」
「えぇ………、課題をまだ終えていなくて………申し訳ありません。ベッドで寝転がって本を読むなんて、お行儀の悪いことをしてしまいました」
「かまわないよ………と言ったらパトリックに叱られてしまいそうだが、今ここはティアナの部屋でもあるんだ。多少の行儀の悪さは気にせず、くつろいでくれたらそれでいい」
あぁ、なんて温かい言葉。先ほどまで心がささくれ立っていたところに、その言葉はとても嬉しいです。
「しかし、ティアナがこんな時間まで課題を終えていないなんて珍しいね。めったに褒めたりしないパトリックが絶賛する程ティアナの覚えがいいと言っているのに」
そう言われると、ますます身が縮こまります。
「うぅぅ、すみません。これを明日までに読むよう言われたのですが、読めておりません」
本を示すと、これまで優しかったお父様の顔が急にこわばりました。
「………これを明日までに?」
「はい………?」
問いかけ以上の何かを感じて思わず首を傾げましたが、お父様は答えることなく本を手に取りました。
「わかった………今日のところはここまででいい」
「ですが―――」
言い募ろうとする私を制すと、お父様は包み込むように抱きしめました。
「今日はもう遅い。子供はもう寝る時間だよ」
耳元で囁く、優しい声。
「さぁ、もうお休み。何も心配は要らないから」
その声に背を押され、お父様の胸に頬を寄せました。
とくん、とくん
心地よいリズムで生を刻む音がします。
温かい。心地よい。
落ち着く、場所。
その心地よさに意識を寄せ、やがて優しい眠りの世界へと誘われたのでした。




