学園都市での想像から(後日談)
裕樹とひばりの旅行話の続きです。
結構いい出来と自分では思ってますが……
「ふーん、そんな話したんだ?」
「うん。なんだか盛り上がっちゃって、本当に行こうって話が出ちゃった位で――」
「…………」
「? どうかしたの?」
「――なんだか最近、ユウ兄ちゃんとひばり姉ちゃんがとても仲良しになってくれて、すごくうれしい」
「ふぇっ!!?」
所は、ひばりの住む寮の部屋。
最近はすっかり2人の生活が板につき、2人で囲う食卓もひばりにとっての当たり前になりつつあった。
そして現在は、2人で並んでソファーに座り、旅行番組の流れるテレビを見ながら、裕樹とした話を話題にして話している。
「それより、旅行かあ……私も行きたいなあ」
「もっ、勿論、裕香ちゃんも一緒って前提で話してたよ」
「それなら、電車の中でトランプしたり、ご当地の美味しい物を食べたり、一緒に記念撮影とったり、ひばり姉ちゃんと一緒にお風呂入ったり、豪華な夕御飯たべたりしたいな」
「うん、あたしも裕香ちゃんと一緒なら、きっと楽しい旅行になると思うよ――旅行かあ」
「? どうしたの、ひばり姉ちゃん?」
「――ううん、なんでもない。それよりひゃっ!」
ひばりの言葉を遮って、裕香がひばりに抱きついた。
「ふふ~♪」
「もうっ、裕香ちゃん。そろそろお風呂……」
「撫でてくれなきゃ離れない」
「もうっ……」
「んにゅ~♪
裕香がひばりの膝で猫の様に丸くなって、ひばりはしょうがないなあと言う表情で、裕香を撫でてやる。
そして一通り撫でた後は、2人で風呂に入り一緒のベッドで就寝。
「すぅっ……すぅっ……」
「旅行、かあ……良いなあ。朝霧兄妹と家族気分で、見知らぬ土地に果てない景色を眺めたり、たくさんの初めてを一緒に見て回ったり」
裕香が寝息を点ててる隣で、ひばりは眠れないまま、今日の話に想いを馳せていた。
「――考えてみたら、お父さんにお母さんは、取材やお仕事で遠くに出掛ける事はあっても、家族で出かける事なんてなかったよね。2人とも忙しいから、仕方がないけど……お母さんは、どう思うかな?」
ひばりは最近、母の心情を思い浮かべるようになっていた。
裕樹に母の事を話し、心境の変化があってか最近は母の言葉をうのみにする事はやめ、自分で考えるようにしている。
「お母さん、あたし――応えても、良いのかな?」
ポツリと呟き、ひばりは眼を閉じ――寝息を立て始めた。
「おっ、来た来た」
「ひばり姉ちゃん、早く早く!」
「もう裕香ちゃん。そんなに引っ張らないで」
「列車の席、空いてると良いなあ」
「――そんなことより、絶好の旅行日和だなあ。こんな日の景色を眺めながらの旅路なんて、それだけで贅沢気分ってもんだ」
「そうですね――裕樹さん、たくさん思いで作りましょう」
「ああっ」
朝霧兄妹と、旅行に行く夢を見ながら。




