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保安部の風景(食堂編)

保安部の訓練の参加者には、夕食が支給される。

「……なんでここの晩飯って、こうもバカを通り越した大盛り何だろうな?」

「綾香はまだ良いでしょ? 女性は僕達のより少ないんだから」

「少ないの範疇にはいるんならな」

 本日の夕食は4kgのステーキで、ポテトサラダがまるで山脈のそばに転がる石ころの様にぽつんと添えられ、ボリュームはたっぷり(笑)。

 ドンと眼の前に置かれた香ばしい香りを放つ、塊と言える質量のステーキに、鷹久も綾香も珍しくたじたじとしていた。

「うっめー♪」

「確かに美味しいけど……はあっ」

 焼き肉が好物な裕樹は、舌鼓を打ちながらご機嫌で食事をとり、その対面する位置に座っている辰美は、流石にきつそうだった。

「おいおい、大丈夫か? 高峰ちゃん」

「へっ、平気……です」

 小柄な高峰光にもキツイ量であり、近くに座っていた榊龍星が心配そうに水を手に、背をさすっている。

「…………」

「……その中でも、やっぱり光一が一番きついみたいだね」

「てか、魂飛んでやしないだろうな?」

 ぼんやりと虚空を眺めながら、ステーキを切りわけ口の中へ。

 ナイフとフォークを動かす手と、咀嚼する口以外は機能している様に見えない動作で、光一は黙々と食事していた。

「……ここの食事は美味しいんだけどね」

「……それは同感だけど、こればっかりは流石にあたしもきついな」

 細身の鷹久と、男勝りと言えど女性の綾香にもキツイ内容で、2人の手は遅い。


 数十分後。

「……うーっ、気持ち悪い」

「……しばらく肉はノーサンキューだ」

 何とか食べきった2人は、ぐてっとテーブルに突っ伏した。

「おいおい、大丈夫か?」

「……ユウさん良く平気だな?」

「いや、俺もきついって。と言うか……」

 ちらりとトイレの方向に目を向け……

「弱音吐けねーだろ」

「……確かに」

「光一生きてるかな?」

「北郷が付き添ってるから、死にはせんだろ」


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