アスカのライブ!(4)
“熱狂”
ライブを表す言葉はその一言。
アスカのギターが終焉を告げ、ほんのわずかな時間の静寂
そして、時間差で襲って来る大歓声――そして。
『ギィィイイイイッ!!』
違法改造された電子召喚獣の襲撃。
「うっ、うわああっ!!」
「なんだ!?」
熱狂していた客達も突如の襲撃に驚き、全員が伏せる。
学園都市の個人イベントでは、上位になればなるほど襲撃は多く、割と襲撃慣れしており慌てる様な事はない。
「きゃああああっ!」
「なっ、なんれしゅか一体!?」
「奏、みなも、慌てるより伏せろ!」
――一部例外はいる物の大きな混乱は出ていない。
「イっちゃん!」
『ブルルっ!』
ただ、狙われいる側までそうと言う訳でもない。
アスカがイクシオンを呼び出し、メンバーもろともにその後ろに隠れ――。
『ギガっ!!?』
それと同時に、ステージ裏から裕樹が飛び出し、襲いかかってきた違法召喚獣を切り払い、アスカ達を守る様に立ちふさがる。
「ユウ!」
「早く舞台裏に!」
「うん、わかった! イッちゃん!」
『ブルルっ!』
アスカ達はイクシオンに半ばしがみつく形で、ステージ裏に避難する。
裕樹のカグツチと、宇佐美に裕香が出迎えたのを見届け、裕樹は周囲を見回す。
「ウイウイ!」
『ウ~イ~』
アスカが避難出来た所で、違法召喚獣達は観客をターゲットに定め、襲いかかろうとするが、ことごとく大輔のウイウイが展開した甲羅の盾で遮られていた。
「各個撃破しつつ、避難経路を確保しろ! 経路確保を優先にするんだ!」
「「「了解!」」」
指示を受け、部隊員が一斉に駆けだし経路確保と違法召喚獣との戦闘に入る。
「――やーれやれ、こりゃ保安部舐めてたか」
「足止めメインだロ? 目的達成じゃねえカ」
光一達の真後ろに降り立った2人――その声を聞いて、光一と龍星が臨戦態勢に。
犬神彰、毒島晃の両名は、共にイベント襲撃及び傷害を行う学園都市の裏稼業“ハンター”を生業とする、S級手配犯。
そして、この2人が属するハンター組織“暴食の獏”は、その動きでランキングが左右するとまで言われている、最大規模のハンター組織。
「やっぱお前らか」
「――アスカちゃんのイベント、そして光一の気配を察知できるほどとなれば、お前らが動いてる可能性は高かったが」
光一は電子ツールの銃と、自身のコクテイを展開し、龍星が煌炎を従えながら構えを取る。
「お前らが来てんのは誤算だったから、ちっと計画修正はしなきゃなんなかったが――」
「まあ、問題はありゃしねえゼ――勝算がない訳じゃあねエ」
彰が拳を鳴らしながら、雷獣型電子召喚獣キテンを展開し――キテンが彰の身体を覆う鎧になって行くように一体化した。
そして晃の八岐大蛇型電子召喚獣オロチマルも展開され、晃の背に張り付き9つの頭がそれぞれの武器を吐きだす。
「――互いに厄介な融合系能力の電子召喚獣ときたもんだ」
「言えてるな――この手のタイプは、人間の身でも電子召喚獣の力を手に入れられるのが、メリットだ。俺は犬神をやるから光一は毒島を」
「了解――ただ、忘れちゃいけないのが」
「つぐみ達を守ることが前提、だろ? ――早くケリつけるぞ。“あいつ”が来る前に」
「――旦那も気付いてたか」




