浮き出た悪意・7
まだ嫌がらせは続いている。なのに、その現場を取り押さえられた者はただの一人としていなかった。我らが【獅子宮】、手伝ってくれると公言してくれた坂君の【双児宮】、全員が僕んい惚れている、破魔のクラスの【白羊宮(中一)】、それらと僕のファンを用いても。
こういった事件に関しては、僕についてきてくれるのが【獅子宮】というクラスの性質だから、内通者がいるわけでもない。むしろ【獅子宮】は全体的に【巨蟹宮(高一)】と敵対している節すらある(僕と布浦後輩ほど陰湿ではないにせよ)。唯一、布浦会に所属している娘が一人もいないクラスが【獅子宮】だ。三人しかいない、【処女宮(高三)】だって一人は布浦会。
「はあ。うまくいかないねえ」
「俺もだな。ちっとも進展がねえや」
お互い、別々のことで悩んでいるものだ。
諫早の手伝いはそこそこに控えている。あまり突っ込まれて真相を暴かれたくもないし、かといって協力すると宣言した手前、全く動かないのは、といった心情もある。こうして今も変わらず調査という名の遊びを二人でしている。
「……よく耐えられるよな、梨山。傍から観察してるだけの俺でもイライラしてくるのに」
彼が箸で僕を指す。「行儀悪いよ」と注意すると、「わりぃ」と謝りすぐ引っ込めた。
今日の昼休みの食堂も、僕たちの周囲には、僕のファンが集まっていた。屈託のない笑顔の数々。僕と居るだけでこんなに幸せになってくれる。自分の担っている役職の意味を再三確かめずにはいられない。
「なにがしてえんだろうなあ。それが気持ち悪い」
「分かったら苦労しないよ。僕だって、もしも布浦後輩と分かりあえているなら、こんな問題はそもそも起きないって自覚してるんだから」
これを解決できたら、僕の精神は、政略結婚の道具制作工場に留まっているような器ではないと自負する。それほど不可能なのだ。その程度の器でしかない。
「大体、そういった諸々の問題を解決されたら、むしろあっちの評判が下がって、梨山の人気があがるのは目に見えて――あ」
彼は間抜けな声を出した。ぽかーんと口が開いている。なにか粗食している最中でもなかったので、僕は注意もできなかった。彼の目線は……何を捉えていたのだろう。何かを見ていた、そんな気がするのだが。
「すまん梨山、あることに思い至った……おっせえな俺……ここじゃないどこかで話し合わないか? 味方にだってなるべく手の内を明かしたくない」
「…………? いいけれど、人目につかないところに連れ込んでくれないと、拒絶するよ」
僕がそう言うと、周囲のファンがそこだけ抜き取って「まあ。もしかして御二人は……」などとひそひそ話しあう。まあ「二人きりになろうね」と誘ってるも同然なわけだし、事情を知らなければ、その反応は間違ってると僕は言わない。問題としては、現在この辺りに居る娘は、全員僕の味方のくせに、この反応をしていることだ!
「分かった。約束は取り付けたからな」
その瞬間、「キャー」という黄色い悲鳴。勝手に僕の恋人かなにかに認定された諫早は、納得のいっていない表情をした。失礼な。




