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青の稲妻・3

 午後の授業は教師にそれなりの意欲を見せつつ、適当にさらっと流す。特に、ハクラ先生には。担任になったからかは知らないけれど、最近、監視の目が強くなってる気がすんだよなあ。ちょっと迂闊なところを見せたらお小言が待っている。

 高等部になってから授業の内容もやや難しくなったが、それは絶対的。僕の基準では簡単の部類に入る。試験前に一夜漬けでどうにでもなる。というか、これまでしてきた。クラスメイトからは「【お兄さま】が勉強嫌いでは示しがつきませんのよ?」などとしばしば注意されるが、それでクラス一位の成績なんだからいいじゃないかよぅ! 「結果」が蔑ろにされて、耳触りのいい、努力という名の「過程」が重視される世間の風潮、僕は大嫌いだ! と、破魔に言ったら引かれたことがある。

 放課後になり、僕と諫早の二人は、中庭にあるテニスコートへ来ていた。

 こういった活動も、元々の目的は「父探し」の一環だ。倶楽部を通して仲良くなっておき、諫早父の情報を、それとなく探りを入れてみる。五月に入ろうとしている今、この方法でおよそ全体の二割の調査が終了、といった進行具合だ。残り一カ月。ペースを上げなければ。

 ……が、ちょっとずつ、僕も彼も軌道がずれてきているような気がしてならない。

 顕著なのが、諫早もノリノリで活動できる、運動系の倶楽部においてだ。

「よし、今日も負けねえからな梨山」

 現在二時三十分。六時間目は二時にはもう終わるが、運動系の倶楽部は着替えの時間なども必要なので、遅いと三時頃に始めるスタートだ。四時が門限なので、実質一時間くらいしか活動できなかったり。僕らは体操服に着替えたりはしなかったので、一足先にテニスコートへ来て、準備運動代わりに一試合。

「大人気というか男気がないよね、君って」

 そう言いながら、僕は彼のサーブを受ける。予想していたのか、打ち返したボールの落下点まで既に移動している。思い切り振りぬかれては、僕は追いつけない。

「先手必勝! 気ぃ抜いてるんじゃねえぞおい!」

 燃える男だなあ。女相手に。しかし僕も負けてばかりはいられない。同じようなコースに入ってきたボールを打ち返し、打ったと同時に前へ出る。彼はこれを当然の如く打ち返す。ネット際での攻防。僕は来たボールを叩きつけるように振った。彼はそれに反応できない。なんとか点を取る。

 そうこう読み合いをしているうちに、1ゲームが終わった。

「ふう。少し休憩させてくれ」

「ちっ、しょうがねえなあ」

「性格すら変わってるような」

 こと勝負になると、彼はキャラが安定しなくなる。眼鏡を外したら云々という定番のパターンにしてくれるなら、見た目で分かりやすくて有難いのだけれど。

「お兄さまぁ諫早様ぁ。ドリンク飲みますぅ?」

「ありがとう。頂くよ」

「サンキュ」

 中等部の娘からスポーツドリンクの入った水筒を貰う。ペットボトルや缶なんてものはアオナシにはないから、粉から作らないといけない。そのスポーツドリンク用の粉だって、運動部の地位が低いために、あまり仕入れてくれない。貴重品だったりする。

「なんだかんだで伯仲してるのはぁ、梨山お兄さまって感じですよねぇ」

「ははは。でも本気じゃない諫早の相手でさえこの様だからなあ。情けないよ」

 暴れ馬の手綱を握るのは難しい。諫早も年頃男子であるので、たまには伸び伸びと身体を動かしたいのだと。しかしそれが例えスポーツであろうが、本気になった男性に敵う生徒なんてアオナシに居るはずがない。仕方がなく、僕が真っ向から挑まないといけない。大体、七:三くらいで負けている。……頼むから誰か、健闘してると言ってくれ。なまじ【お兄さま】なんかをやっているせいで、「男性対男性。対等な条件で負けてるなんて情けない」とか破魔に言われ続けてるんだよぅ。僕はそれが悔しいんだよぅ!

 こんな感じで休みを入れながら彼の猛攻を凌ぎつつ、僕の放課後は終わるのだった。この日の勝敗? 最終的には勝ったよ。勝てちゃったよ。

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