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姉はズルい

姉妹は【白銀の剣】を目の前にして息を呑む。


「ねえちゃん、抜いて」

「なんでよ、あんた抜きなさいよ」

「いや、だって、あたし剣あるし」

「私、使い方がいまいちわかんないのよ」


急に姉妹が喧嘩を始める。


「喧嘩なんて余裕じゃない!!!」


全てを無茶苦茶にされ、蛇の化け物のような顔を晒したスタグナが叫ぶ。

大きな氷塊を作り出し、二人にぶつける。


「〈火壁(ファイアウォール)〉! ねえちゃん、今のうちに!」


アンジェリカが火の壁を作り出しスタグナの攻撃を防ぐ。


「あーもう! 分かったわよ!」


コルネリアはヤケクソ気味に白銀の剣を引き抜き、構えをとる。


「行くわよ!」

「うん!」


しかし、その瞬間。動きを止められてしまう。


「また、これなの!?」

「こんなの、反則だよ!」


蛇の長い舌をチロチロさせ、スタグナが近寄る。


「もう遊んであげない。あんたたちはつまんないから遊んであげな~い。……一撃でとどめをさすわ」


突然、目を据わらせたスタグナが大きな炎を嵐を生み出す。

十分に魔力を練って大きく大きくした嵐を振り下ろそうとしたその瞬間。


「〈幻惑(イリュージョン)〉!」


黒い光が姉妹の横をすり抜け、スタグナにぶつけられる。

すると、姉妹の身体が崩れていく。


「動ける!?」

「なんで?」


不思議に思っていると、今度はスタグナが叫ぶ。


「小癪な真似を! どこ! どこに行ったああああ!」


スタグナはアンジェリカたちが見えてないかのように叫びまわっている。


「二人とも! こちらに!」


振り返ると、エリザを支えながらミーアが叫んでいる。


「ミーア!」

「エリザ!」


姉妹が駆け寄ると、ミーアはほっとしたような笑顔を浮かべた。


「間に合って、よかったです」

「ねえ、ミーア、どういうことなの?」

「それは、私が説明します」


ミーアに肩を借りてようやく立っているようなエリザが話始める。


「まず、先に。私は、この世界のことを知っています。で、あの魔女のことも知っています。あの魔女は、目で見た者の動きを止めます。その攻略法が闇の魔法〈幻惑〉です」


〈幻惑〉の魔法は、少し見た目を変えられる遊び魔法のような感じで乙女ゲームの中では存在した。しかし、実際は対ラスボスで実力を発揮する魔法であった。


「私は、それを知っていて闇魔法を習得してます。今なら、魔女を攻撃できます。でも、私も彼女もあの魔女に有効な攻撃手段を持っていません。だから!」

「エリザ……ありがとう。必ずあたしたちが倒す。そしたら、乙女ゲーの話、一緒にしようね」

「え? もしかして……」


アンジェリカの『にぱー』笑顔に、エリザは驚いている。


「ネーちゃん……私にはこれくらいしか出来ないけど……」


ミーアは、コルネリアの手を握り、自分の魔力を渡す。


「十分だよ。ありがとう。」

「わたし、ネーちゃんと一緒に学校に行きたい! 楽しい学校生活送りたい! だから、絶対勝ってきてね」

「……私に任せときなさい」


コルネリアは、ミーアの頭を撫で優しく微笑みかける。

そして、アンジェリカと頷きあい、狂ったように魔法を放つスタグナの元へ向かう。


「ねえ、ねえちゃん」

「なに?」

「なんで、あの主人公、ねえちゃんのことねえちゃんって呼んでるの?」

「……なんで怒ってるのよ。言っておくけどね、あんたが人前で呼んだからそれを誤魔化すためにああなったんだからね」

「え!? う、うう、それは、ごめん。でも、でも、ねえちゃんは私のねえちゃんであって」

「あーあー、うるさい妹」

「あと、なんで主人公の頭ねえちゃんが撫でたの」

「いや、あの流れだと撫でてあげるでしょ」

「あたしも撫でてよ」

「え? このタイミングで?」

「撫でて」

「もー!」

「えへへ」

「っていうか、あの子主人公なの!?」

「おっそ! そうだよー! っていうか、ねえちゃん学校行くの?」

「いや、初めて聞いたわよ。多分、お父様が根回ししたのよ。飛び級的な?」

「ああ、ねえちゃんがいたら家でのびのび出来ないから」

「まあ、いなくてものびのびなんてさせないけどね」

「こわ」

「ねえ、もう撫でるのやめていい? もう目の前なんだけど」

「終わったら撫でてね」

「はいはい」


立ち止まる二人。

魔力を高め、全力の攻撃を放つ。

コルネリアは四大属性の融合魔法〈四つ花〉を全力で四回放つ。

四色の光が入り乱れ世界を鮮やかに染め上げていく。

その光を縫うように、アンジェリカは〈火壁〉を道のように伸ばし、その上を〈火脚〉で滑りながら加速し、全力の一撃を縦横無尽に跳ねながらスタグナに見舞う。


その間、姉妹の会話はなく、『ただなんとなく』で完璧な阿吽の呼吸を見せた。

崩れ落ちるスタグナに、ほっと胸をなでおろすアンジェリカたちだったが、途端に世界が藍色と黒のマーブル模様に染め上げられる。


「最後の魔法よ……これで、あんたたちを終わらせる終わらせる終わらせる! 〈後悔の魔〉」


藍と黒のマーブルの魔力がアンジェリカたちを包み込んだ。




「ねえちゃん!!!!」


振り返ると、妹が息を切らせて、膝に手を突いていた。


「どした? 杏奈?」

「あの! 琴音……姉ちゃん! あの、今日家にけ、ケー……!」


妹は必死な顔もかわいいなあ。

うんうん、横から光が当たる顔もかわいい。


光!?


見るとトラックがふらふらと近づいてくる。

うそでしょ!

そういう不幸は妹には似合わないんだって!

私は慌てて、地面を蹴り妹に近づく。

左側を見つめて動けなくなってる妹の手を握り引き寄せ間に合っ……

ぐらりと身体が揺れる。世界が傾く。

あ、やべこれ入れ替わってるな。

いや、やばくはないか。

幸薄女のエンディングとしてはドラマチックなほうか。

妹よ、そんな顔するな。通帳には結構ある。黙っててごめん。

そして、これからは苦労させるごめん。

駆け寄ろうとする妹の二重の美しいアイドル顔、指、手、腕。

それらよりも早く左から衝撃。まっくら。

ごちゃとみたいな音と共に私は闇の中に。


駆け寄ろうとする妹の二重の美しいアイドル顔、指、手、腕。

それらよりも早く左から衝撃。まっくら。

ごちゃとみたいな音と共に私は闇の中に。


駆け寄ろうとする妹の二重の美しいアイドル顔、指、手、腕。

それらよりも早く左から衝撃。まっくら。

ごちゃとみたいな音と共に私は闇の中に。


駆け寄ろうとする妹の二重の美しいアイドル顔、指、手、腕。

それらよりも早く左から衝撃。まっくら。

ごちゃとみたいな音と共に私は闇の中に。


駆け寄ろうとする妹の二重の美しいアイドル顔、指、手、腕。

それらよりも早く左から衝撃。まっくら。

ごちゃとみたいな音と共に私は闇の中に。


「なるほど」


妹の悲しそうな顔が目の前で何度も繰り返される。

これが、あの魔女のやり方か。

『一番後悔している瞬間』を見せ続け心を折る。

確かにね。このあとの苦労を考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいで胸が張り裂けそうだ。悪夢だわ。


「でもね」


『コルネリア』は、思い切り拳を引き付け、『琴音』にぶつける。


その瞬間、世界が色を取り戻す。


目の前には、いやらしいにやつきから驚愕の表情に変わる魔女。


「この悪夢は、毎日毎日見てるのよ。散々後悔し尽くしたのよ!!」


コルネリアは、白銀の剣を振りぬく。

慌てて腕で防ごうとするスタグナが吹き飛んでいく。


「私は! もう後悔しない! 今! あの子と出会えたから! 今のあの子を大切にする! もう後悔しないために! だから!! あの子の不幸は全部私がぶっとばす」


コルネリアは自分の四色の魔力を剣に乗せる。カラフルに輝く剣はどんどんと大きくなっていき、コルネリアの十倍の長さになる。


「んで、私があの子を幸せにしてみせる」


コルネリアがにやりと笑い、剣を振り下ろす。

スタグナは絶叫を響かせながら、鮮やかな光に包まれていく。

最後の力を振り絞ったコルネリアは白銀の剣を地面に突き刺し、なんとか立っていられる程度だった。

ミーアたちがこちらに駆け寄ってくる。目を腫らしている。二人も最悪の後悔を見せられたのだろう。


「あんたの後悔は今この時だよ~」


コルネリアが振り向くと、黒い小さな影が針のようなものを突き出そうとしている。

が、コルネリアは動けない。いや、『動かない』。

最愛の妹がきっと助けてくれる。


じゅわあという音の後、影が叫ぶ。

現れたアンジェリカの〈火壁〉によって防がれたからだ。

影がアンジェリカを見ると、悪魔のような顔でこちらを覗いている。


「よくも……ねえちゃんを何回も、殺したな」


アンジェリカは、コルネリアほど考えてはいない。

単純に、夢の中で魔女が琴音を殺し続けたと考えていた。

そして、それは『杏奈』にしてはいけない禁忌の行為であった。


〈火脚〉によって高く跳びあがったアンジェリカは、落下しながら地面に向けて〈火壁〉を作る。その〈火壁〉と地面の間には魔女の残滓。


「潰す」


冷たく言い放つアンジェリカの言葉を聞こえたのかどうか、影は完全にこの世界から消えてしまった。


「ねえちゃん」


アンジェリカが振り返る。

コルネリアは口をひくつかせる。


(いやいや、あんた……あれだけのド迫力顔見せておいて振り返りざまのそのにぱーっとした笑顔は反則でしょ。かっこいいしかわいいしかっこいいしかわいいし……本当にお姉さまは、ズルいなあ)


コルネリアが耐えきれず、口角を思い切りあげて笑うと、今度はアンジェリカが背を向けてしまう。


(ねえちゃんかっこいいねえちゃんかっこいいねえちゃんかっこいい! え? 何? さっきの台詞! 私があの子を幸せにする!? いや、ちょっと待ってちょっと待って! それはえええ~!? も~! ねえちゃん、ズルい~!)


こうして、姉妹の破滅は完全に潰された、はずだった。


お読みくださりありがとうございます。

楽しいだけで書いています! が、もし同じように楽しんでいただけているならば、嬉しいです!

次でラスト!終わらせます!

また、ブックマーク登録や評価してくださった方ありがとうございます。

少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。

よければ、☆評価もしていただけるとなお有難いです……

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