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実行力。そこだけには目を見張るものがある。

 ききょうから帰ると、「あんた入学式初日から活動的ねぇ〜」と、至極母親らしいことを言われながら俺は風呂に入って沢山考えた。


 考えなきゃいけないことは2つ。


 ①桜さんと桔梗さんの2人が、俺を気にせずに仲良くなって、最高の物語を生み出してくれる本来のルートに乗ること

 ②椿さんがちゃんとギャルになって、ちゃんと当て馬的な役割をすること(その後のメンタルケアも課題とする)



「……課題が大きいな……」


 風呂場に反響した声は可愛いもので、そういえば自分は今女子高生だったと思い出す。


 自分のことも大きな課題だが……今はもう少し、この世界の楽しみに目を向けておこう。


 ①、主人公2人のルートは、そう簡単に戻れるものではないと思うが、最も大事な出会いの時点で俺という邪魔者が入ってしまっている。


 桜さんが桔梗さんと仲良くなる過程の中で、俺がただの友達枠になれれば良いのだが……


 問題は、桜燈というキャラクターが、自分の1番仲の良い、そして特別な時間を過ごした時間の多い桔梗奏を、その友達関係の延長線上にあるものとして恋愛感情を抱いたという点である。


 つまり、俺が友達として仲良くなりすぎると、本来の桔梗奏がなるはずのポジションに俺が行ってしまうという、BAD ENDがあり得てしまうのだ。


 仲良くなるのは良いが、桔梗奏の枠には入らないようにしないと……



 そして、②。椿蕾がギャルになる方法である。

 本来のルートでは、2学期からギャルになった椿蕾は周りの人に声をかけまくるが距離を置かれまくる。しかし桜燈だけは仲良く話してくれてどんどんメンヘラ化。次第に桜燈と1番仲の良い桔梗奏に敵対意識を芽生えさせて行く……のだが。


 最初から俺が話しちゃったからメンヘラ化するとしたら俺に対してだし、そもそもまだ誰からも距離を置かれてないから、メンヘラ化もしないんじゃないか……?


 そもそも、このままだとギャルになる前提条件としてのお姉さんへの相談も発生しないぞ……?


 ただ、椿さんにメンヘラ化する素質があるのは確かなのである。それだけ、1人の人に傾倒できる力はあるはずだろうから……



 ……よし!


 ここは俺が一肌脱ぐしかないか!今全裸だけど!


「神様〜!どうにか、きてくれませんか〜!!」


 ともすれば精神の何かを疑われかねないが、神様を呼ぶことにした。


 来てくれるかは分からなかったが、すごい優しい神様は、すごい優しいから来てくれた。


「なんじゃ、神使いの荒いモブじゃのう」


「ほんとに届いた!」


「まあずっと見ておるからな」


「え!覗き!?」


「滅多なこと言うでないぞ!?帰るぞ!?」


「ごめんなさい」


 すごい優しいからダル絡みをしてしまって申し訳ありません神様。お願いする側の態度ではなかったことを反省しつつ、したかった話をしてみることにした。


「神様は、俺に対して、どこまで手を加えることが可能なんですか?」


「どこまでとな?まあ、魂の形が変容したり、姿形をそのまま別のものにするようなことはできないな」


「……なるほど。それなら、可能ですね」


「……?なにをじゃ?」


 姿形を変えたり、俺の魂?を変えるようなことをせず、上手いことこの世界の歪みを元に戻す方法。


 日陰者の俺にはしんどい話だが、人生数少ない勇気の出しどころは、ここだろう。



「……ギャルになる方法、教えてくれませんか?」




 ____________




 次の日の朝。


 今日から通常授業が開始となるシェルノ女学院では、生徒たちは各々登校していた。


 その中で、一際目立つ存在が1つ。


 学力が高く、比較的真面目な生徒の中では特別目立つ金髪に、一般スタイルの体では無理があるほどのスカートの丈。

 絶対に早起きしてしてきたであろう完璧なメイクに、ゆるい校則を逆手にとったネイルやアクセサリーの数々。


 すれ違う同じ制服を着た他の生徒は、避けるように廊下の端へ寄っていく。


 ある教室ドアに手をかけると、勢いよく開ける。


 自身の席に近づくと、挨拶をした。


「よっす〜」


 そして、空気を凍らせた。




 ーーーそんな目立つ存在とは、紛うことなく俺のことである。



 なにが『よっす〜』だよ!昨日までおはようございますって言ってただろ!!


 てかスカート短い!!女子であることに違和感はないけど、スカート短いのは違和感あるよ!!

 あと爪長いよ!スマホ触りづらいよ!!魂の形変えれないっていうのは、こういうところに出てくるのね!!



 そして、日陰者である俺が目立ちながらも挨拶をして、結果凍った空気の中で俺も挨拶したまま固まった。


 ひゅうぅ!やべぇ!俺、死にたくなってきたぜ!!


「……」


 挨拶した相手である桜さんも、固まっていた。


 うぉ!やべ!死ぬ!そろそろ死ぬ!


 言い訳代わりに作戦を説明させてもらおう。


 その名も、『俺がギャルになって全部解決作戦!』である。


 ①ギャルになって、男が好きだーってアピールすれば、多少距離置かれると思うし、恋愛にはならないだろう。

 ②椿さんには俺に憧れてもらえるように頑張って、その俺がギャルになれば椿さんもギャルになるんじゃないか?(当て馬になれるかはわからない)


 こんな考えのもと、俺がギャルになることにした!


 ちなみにこの髪色や化粧などは、昨日の夜から神様が特別な力を使わずに徹夜でやってくれた。ちゃんとブリーチした上で染めてもくれた。頼むから神様の力を使って下さい。


 説明&現実逃避終わり!目の前で起こっていることに思考を移そう。


「よ、よっす〜?」


 もう一回挨拶してみた。すると。


「す、すごいです……!なんだが、昨日までとはまた違った雰囲気で、かっこいいです!!」


「え?」


 桜さんは、『何こいつキモ』の目じゃなくて、感動の目をしていた。


 よ、よかった〜!


 安心して着席した。周りをキョロキョロすると、桜さん以外は俺の方をチラチラ見つつ、目が合いそうになったら視線を下される。


 クラスでは浮いてるみたいだけど、それは前世と一緒だ!泣


「あの、おはよう、ございます……!」


 横から声がかかる。椿さんだった。


「お、よっす〜!」


 優しい…….!と感動しつつ挨拶した。いや『よっす〜』ってなんだよ。多分ギャルじゃないよこれ……!と思うけど、突っ走るしかない。


 すると、教室のドアがまた開いて、今度は桔梗さんがやってきた。


「……えっ?アンタ、なんで……?」


 当然驚いていた。

 そりゃそうだ!昨日の夜会ったんだもん!!


「お、おはよ〜?」


 恥ずかしくなってよそ見しながら挨拶した。


「そういうのって2日目にやる……?」


 ホントにそうです!!普通は1日目にやるよね!入学式で一旦出席した次の日にギャルになるって変だよね!


 恥ずかしいんだけど、それも含めて作戦だから!


 俺は強がるしかできない。

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