↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定!】外れスキル《毒消し》で世界一の料理を作ります!~追放令嬢の辺境カフェは今日も大人気~  作者: 青空あかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/40

第33話:お母さんのお話

〔〔……おいしい〕〕


 お母さんとラウエルさんは、静かに呟いた。

 一口一口を味わうように、丁寧に食事を楽しんでいる。

 スープを飲み、ロブスターの身を食べ……記憶の中にあるお母さんの食事風景と重なった。

 私にとってはもう二度と見られないと思っていた光景……。

 いつまでも感傷に浸っていたくなる。


「ど、どうかな……美味しくできた?」


 お客さんに出すときはそんなことないのに、なんだか恥ずかしかった。

 たどたどしく尋ねると、すぐさまお母さんたちは満面の笑みになる。


〔ええ、もちろんよ! おいしさに感動して言葉を忘れてしまうくらい。……腕を上げたわねぇ、レベッカ〕

〔今まで食べた食事の中で一番おいしいお料理です。食材全てが主役と言っても過言ではありませんね〕

「ありがとうございます、良かったです……」


 やっぱり、おいしいと言ってくれるのが一番嬉しいね。

 料理人として、努力が報われた感じがする。

 お母さんとラウエルさんは、食べながら感想を伝えてくれた。


〔まず、このロブスターだけどふんわりしているのに、ギュッと身が引き締まっているのが見事ね。火加減の調整が大変だったでしょう〕

〔噛めば噛むほど味が染み出してきます。スープに至っては食材の旨みが凝縮されて、海そのものを飲んでいるかのような満足感がありますね〕


 二人とも本当においしそうに食べている。

 感想も嬉しいし、その楽しげな様子を見るだけで私も温かい気持ちになれた。


〔アサリも砂のジャリっとした感触もないし、トマトのちょっぴり辛い味が絶妙なアクセントだわ。辛すぎないのがレベッカの腕ね〕

〔このキノコだって他の食材に負けないくらい、旨みが濃縮されています。まさしく、大地の恵みをいただいている気分です〕


 お母さんもラウエルさんも、おいしかったポイントを細かく伝えてくれる。

 楽しかった食事も進み、お決まりの<ポイズンハーブ>のお茶を出す。

 二人が飲んでいるを見ていたら、忘れていた寂しさに襲われた。


「お母さん……」


 考えないようしたけど、とうとう耐えかねて涙が零れてしまった。

 奇跡の時間はこれで終わり。

 亡くなったお母さんと会える時間は、お終いが近づいている。

 我慢しようとしても涙が零れた。

 だって、お母さんとはもう会えなくなる。


「お母さん、さようなら。私、お母さんに会えるなんて思ってもみなかった。会いに来てくれて本当にありがとう。今日のことは一生忘れないから……」


 涙を堪えて感謝の気持ちを伝えることができた。

 私の後ろからは、みんなのすすり泣く音が聞こえる。

 “カフェ・アンチドート”の仲間も、私たちの別れを悲しんでいてくれた。

 みんなの優しい気持ちを感じ、悲しい思いは少し和らいだ。

 ラウエルさんは温かい目で見守ってくれている。

 そして、お母さんはそっと告げた。


〔じゃあ、また来月また来るわね〕

「…………え?」


 お母さんはさらっと言った。

 そう、本当にさらさらっと。

 私たち“カフェ・アンチドート”一同がポカンとしていると、お母さんは不思議な顔でさらに告げた。


〔あら、聞こえなかった? 来月また来るって言ったのよ〕

「あ、いや、そうではなくて……」


 昔から、お母さんは少し天然なところがある。

 答えを聞くのが怖いけど、きちんと聞いてみよう。

 緊張しながら恐る恐る尋ねた。


「に、人間界に来られるのは今回だけじゃないの? また来れるの?」

〔ああ、はいはい、そのことね。来られるわよ〕


 あまりにも普通に言われポカンとする。

 天界に住んでいる人が人間界に来るって、よくあることなのかな?

 いや、でも、互いに別々の世界だし……。

 頭の中であれこれ考える私を見て、ラウエルさんが苦笑しながら説明してくれた。


〔サラさんは人間界でも天界でも善行を積んでいるので、一月に一回くらいのペースであれば降りて来れるんですよ〕

「そ、そうなんですか。善行を積めば……」


 まさか、天界にそのようなルールがあったとは思わなかった……。

 はぁ~っと感心していたら、ハッと嬉しい事実に気づいた。

 ゆっくり少しずつ、もどかしいほどじわじわと身体の奥底から喜びがあふれてくる。


「じゃあ、またお母さんに会えるんですね!」

〔そういうことになりますね。今後もよろしくお願いします〕

「やったー!」


 ラウエルさんの言葉を最後まで聞かず、お母さんに抱きついてしまった。

 また涙があふれる。

 でも、今度は嬉し涙だ。


〔ほらほら、みんなが見ているわよ、レベッカ〕

「だってぇ」

「よがっだ~! よがっだね、レベッガ~! また、おがあざんに会えるよ~!」

『親子の愛は世界を超えるんだニャ! 愛は不滅……不滅なんだニャ!』

「私ば心の底から嬉じい! レベッガだぢがまだ会えるなんで嬉じい!」


 頭の上からお母さんの呆れた声が、私の後ろからはみんなが号泣する声が聞こえる。

 私はお母さんからすぐに離れられない。

 恥ずかしさより、嬉しさの方が何十倍も何十倍も強かった。


□□□


〔では、私たちはそろそろ失礼いたします。人間界にいられる時間が迫ってきましたので〕

〔みなさん、今日は本当にありがとう〕


 私たちの涙も治まり、お別れの時間がきた。

 でも大丈夫。

 また会えるのだ。

 二人をお店の外に見送る。

 お母さんはネッちゃんたちと最後の握手をしていた。


「あの、すみません……」


 魔法陣らしき絵を地面に描いているラウエルさんに話しかける。

 お母さんとの再会に泣きながらも、ずっと考えていたことがあったのだ。


〔はい? 何でしょうか?〕

「天界にも銀行ってありますか?」

〔ええ、あるにはありますけど……何か預けたいのですか?〕


 背中に担いだ袋から、金貨に砂金、レア魔石……数々の宝物を差し出す。

 こっそり隠し金庫から取っておいたのだ。


「これらの貴重品を預かっていただきたく……」

「預からなくていいです!!」


 天界で預かってもらおうとしたけど、ロールちゃんに光の速さで回収されてしまった。

 ロールちゃんは我が子のように、貴重品類を強く抱きしめる。

 まぁ……預けなくても別にいいか。


〔あっ、そうだ。思い出しました。まだお食事のお礼を渡していませんでしたね〕

「いや、別に要らないですよ」

〔そういうわけにはいきません。その辺りはちゃんとしておかないと。人間界のお金は持っていませんので、代わりに天界にしかないアイテムでよろしいでしょうか?〕

「あっ、はい。もちろんですが……」


 ラウエルさんはゴソゴソとポケットに手を入れている。

 ちょっと、待って。

 まさか、この流れは……。


〔“天使の涙”です。傷につけると、どんな大けがもたちまち治してしまいます。人間界の価値で言うと、金貨1000枚はあるでしょう〕


 差し出されたのは、小さな小瓶。

 中には半分くらい透明な液体が入っている。

 人間界で手に入らないアイテム……。

 これはまさしく貴重品だ。


「いや、さすがにこれは……」

「ありがとうございます! いただきますね! ……はわわ…………」


 お断りしようとしたけど、やっぱりロールちゃんに回収されてしまった。


「じゃあ、お母さんまたね。元気でね……って、天界に住んでいる人に言うのは変か」

〔いいえ、嬉しいわよ。レベッカの顔を見たら、元気があふれてきたわ。またね……私の大事な大事なレベッカ〕


 お母さんはチュッと私の頭にキスしてくれる。

 それを見計らったかのように、地面の魔法陣が光り輝いた。

 お母さんたちは光の柱に包まれる。


〔さようならー、美味しいお料理を本当にありがとうございましたー〕

〔“カフェ・アンチドート”の皆さん、レベッカのことをよろしくねー〕


 お母さんとラウエルさんは手を振りながら、空へと昇っていく。

 私たちも大きく手を振り返す。

 姿が見えなくなるまで、ずっと。


 ――お母さん、私はこれからも頑張るからね……。


 晴れ渡った空を見上げながら、私は心の中で強く強く決心した。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!

評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップするだけでできます。

★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。