第30話:七人目のお客さんは……
「ロールちゃん、金貨も砂金もレア魔石も宝石もダイヤも水晶のナイフも真珠のネックレスもしまおうね~。危ないからね~」
『どんどん歯止めが効かなくなってきてるニャよ』
「はぁぁ~」
いつものように、貴重品類を隠し金庫の中にしまう。
ロールちゃんはいつまでも真珠のネックレスを握り締めていたけど、それもしっかり回収した。
「お~い、またうまそうな食材を見つけたぞ~」
ロールちゃんを揺すっていると、キャンデさんが狩りから戻ってきた。
今日は食材採取に行ってくれたのだ。
「ほら、ロールちゃん、キャンデさん帰ってきたからね。シャキっとするんだよ」
『いつまでもそんなんじゃみっともないニャよ』
「あぁぁ~」
貴重品が増えたからか、最近のロールちゃんは余韻が長い。
前まではすぐこちら側に戻ってきてくれたのに。
このままではまずい。
宝石とか金貨は街の銀行に預けようかな。
ここは宿屋なのだから、必要最低限の資産があればいいわけだし。
そんなこと言ったらロールちゃん怒るかな。
「ほらっ、こいつが今日の収穫だ」
キャンデさんがドサッと置いたのは、大きな赤いロブスターだった。
両手でようやく抱きかかえられるくらいの。
浮き出た紫色の斑点模様が毒食材であることを示す。
それを見た瞬間、胸が躍りテンションが上がり、居ても立っても居られなくなった。
「そそそそれは毒食材の女王(レベッカ談)とも言われる、<プワゾンロブスター>じゃないですか!」
その硬い殻には尾の先から爪の先に至るまで、ぎっしりとおいしい身が詰まっている。
味だって、普通のロブスターより何倍も濃厚なのだ。
言わずと知れた超高級毒食材!
……私しか言っていないけど。
「いったいどこで採ってきたんですか? <プワゾンロブスター>なんて高級食材、久しぶりに見ました」
「今日はちょっと足を伸ばしてな。海まで行ってきたぞ」
「「海!?」」
『ニャんとまぁ!?』
キャンデさんはさらりと衝撃的な発言をかます。
海……。
それは憧れの存在。
漂う潮の香りと深い紺碧の空。
幼い頃、実の母と一緒に海へ行った記憶は今でも鮮明に覚えている。
「この近くに海があるんですか? 今度見に行きたいんですが」
「わたしも初めて聞きました。てっきり内陸にいるもんだと……」
「近くといっても常人だと片道で半日はかかるだろうな」
「「半日!?」」
『それは近くじゃないニャ』
キャンデさんは近いというけど、冒険者の中では近い感覚なのだろうか。
「私の足だと、ちょっと本気を出せば一時間程度だな。魔法で強化すればすぐだ」
「『はぁぁ~』」
キャンデさんはパンパンッと足を叩きながら説明する。
やはり、そういうわけか。
こ、これがSランク冒険者。
彼女の身体能力はピカイチなのだ。
「ついでに貝もいくらか採取しておいた」
ジャラっと置かれたのは重そうな袋。
中を覗いてみると、大粒の黒い貝がたくさん入っていた。
「ここここれはぁ! <フカイアサリ>ぃいい! この貝から作ったスープは絶品ですよぉお!」
「お、お前は相変わらずだな」
『深いのか浅いのかよくわからない食べ物だニャ』
みんなでわあわあと盛り上がっていると、扉がカチャっと開かれた。
お客さんかな。
そう思って振り向いたら、思わず見入ってしまった。
入ってきたのは、二人の女性。
人間と同じ風体なのだけど、彼女らの身体は薄らと光っており、さらには少し透き通っている。
私たちの世界とは違う場所に住んでいる存在なのだと直感した。
言われなくてどうしてわかったのか不思議だけど、そう感じたのだ。
〔ここが“カフェ・アンチドート”ですか。天界から見るよりずっと立派なお店ですね〕
前にいるのは、白いローブに身を包んだたおやかな雰囲気の女性。
透き通るような銀色の長い髪を、膝の下くらいまで伸ばしている。
〔まさか本当に来られるとは思いませんでした……どうしましょう。私……泣いちゃうかもしれません〕
そして、後ろにいるのは、私と同じ黒い髪をショートカットにした女性。
どういうことかわからず、しばしの間ポカンと佇んでしまった。
でも、黒曜石みたいに澄んだ黒い瞳を見ていると、少しずつ実感が湧いてきた。
「…………お母さん!」
黒髪の女性に思いっきり抱き着く。
“カフェ・アンチドート”の七人目のお客さんは…………死んだはずのお母さんだった。
お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます
【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】
少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!
評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップするだけでできます。
★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!
ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。
どうぞ応援よろしくお願いします!




