第27話:六組目のお客さんたち
「はぁ~……何度眺めてもキレイだなぁ~。お気に入りは何と言っても特大のダイヤ~」
「ロールちゃん、金貨も砂金も魔石も宝石もダイヤもしまおうね。そこだけ別世界になってるよ」
『すっかり貴金属の魅力に魅せられてるニャ』
ロールちゃんの手から貴重品類を回収する。
また、はわわ……な毎日となってしまった。
以前より貴重な品々が増えているので、より気を付けなければ。
下手したら、お店の前で見せびらかすとも限らない。
隠し金庫にしまうと、ロールちゃんはシャキっとなった。
「よしっ! レベッカ、ネッちゃん、食材探しに行きましょうか!」
「良かった、元に戻ってくれて」
「え? なにが?」
『いつの日か、こちら側に戻れなくなる日が来そうで怖いニャ』
今日の午前中は、森で食材集めの予定だ。
開店は昼前から。
お肉とかお魚はキャンデさんが狩ってきてくれるけど、野菜やキノコなんかはなるべく自分たちで採取していた。
そこまでお世話になるわけにはいかないからね。
三人で森に足を踏み入れる。
探索するのはもう何回目かわからないけど、毎回新しい発見がある。
この森は生態系が複雑らしく、多種多様なキノコや野菜が育っていた。
警戒心が復活したロールちゃんは険しい顔で呟く。
「だいぶ探索にも慣れたけど、注意して進もうよ。レベッカも食材見つけてもハイテンションにならないでね」
「大丈夫、心配しないで。いくら私でも、食べ物を見つけただけで叫ぶことはな……あー! あれは<ドキドキノコ>―!」
「『レベッカ!』」
「こんなところで会えるなんてー!」
木の下にこじんまりと生えているのは<ドキドキノコ>。
茶色くて丸くて、一見するとマッシュルームみたい。
だぁが、しかし!
「その毒は胸を強烈にドキドキさせてしまうのだー!」
「『だから、静かに(ニャ)!』」
その反面、栄養満点で焼くとカリッと香ばしい。
触っただけでも毒が取り込まれるので、事前に毒消し。
鞄にしまったところで、視界の隅に赤い実が目に入った。
ちょうど、百歩ほど奥に行ったところだ。
「野生の<ホットマト>があるじゃなーい! ここは毒食材の宝物庫かー!?」
「あ、足、速っ……! つ、ついていけない……」
『レベッカは毒食材を見つけたとき、昔から身体能力が上がりすぎなんだニャ……』
なぜか、ロールちゃんとネッちゃんは、はぁはぁ……と遅れてやってきた。
でも、毒食材を見せればすぐ元気になるだろうね。
目の前にある赤くて小さい実は<ホットマト>。
トマトのくせにピリッと辛いのだ。
もちろん、この不思議な食材にも毒はある。
食べたら身体がものすごく熱くなってしまうのだ。
胸もドキドキしちゃうぞ。
とりあえず、毒消し。
「さーって、他にも食材ないかなぁ……あったぁああー! 我らが<毒ゼンマイ>のお出ましだぁあー! 紫のくるくるが美しいぃいー!」
「ど、どこ……?」
『ネッちゃんにもそんなの見えないニャ……』
西に二百歩ほど進んだ先の地面に、<毒ゼンマイ>がちらほらと生えている。
昔から毒食材を探しているときは視力が向上するんだけど、みんなもそうだよね?
二人とも、見えないなんてウソは吐かなくていいんだよ?
<毒ゼンマイ>はほんのりとした苦みが特徴的。
しばらくどんな食べ物も苦く感じる毒があるけどね。
こいつも毒消し。
「いやぁ、今回もたくさん集まったねぇ。食材が増えて何より何より」
「『はぁ……はぁ……』」
「ほら、二人とも、毒食材だよ。これ見て元気出して」
「『押し付けられても別に元気出ない(ニャ)……』」
毒食材を触ってもらいながら、“カフェ・アンチドート”に戻る。
キッチンでさっそくレシピを考案。
「<ヴェレーノ牛>のあまりが残っているから、ホットサンドにしようかな」
「カフェらしくていいね。軽食が食べたい人にもピッタリ」
『でも、肝心のパンはどうするんだニャ? 街に買いに行くのかニャ?』
ネッちゃんは心配そうにしているけど大丈夫。
パンもちゃんと用意できる。
「ジャジャジャジャーン! この前の遠征で、毒食材の小麦をゲットしたのでーす! しかも、もう小麦粉にしてありまーす!」
「『おおお~!』」
山の麓で<トキシン小麦>の小さな群生地を見つけた。
二人はついてきていなかったから知らなかったのだ。
食べると毒で、体中の水分が抜き取られてしまう。
しかし、そこはさすがの毒食材。
この小麦で焼いたパンは、もっちりぷにぷに、あら美味しいとなる。
作りますかー! と思った時、ガチャリ……と扉が開かれた。
お客さんかな? と思う間もなく、一組の男女が入店する。
『すみません……お店開いてますか?』
「えぇ~、マジ古い店~」
男性は全身がモフモフ、頭の耳は犬みたく三角にとんがっている。
ぐ~んと前に突き出したお口には鋭い牙が何本も。
ギョロッとした目がちょっと怖い。
女性は赤いずきんを被り、赤いスカートを履いている。
ずきんからはみ出た金色の髪と、白いハイソックス、そして小っちゃなブーツがかわいいね。
“カフェ・アンチドート”六組目のお客さんは、狼男と赤いずきんを被った女の子だった。
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