白雨
驟雨の裏側。
地面を叩きつける雨。
けぶるふたつの人影。
竹林を抜けると車道にでた。
ぽつぽつと現れ始めた民家。
その中の一軒、椿に囲まれた平屋。
促され、中へと踏み入る。
勢いよく引き戸が開かれた。
「ただいまー」
「誰か居るん?」
「たまに」
「へぇ」
ここ、ほぼ空き家って言ってなかったっけ?
法事か長期休暇宿代わりに使う位だって。
「この間、いとこが連れ込んでた」
「……まじですか」
なんとなく、気まずい。
手渡されたタオルを見るフリをして、火照る顔を隠す。
でかでかとプリントされた土建屋の屋号。
「おー、レトロ」
「今もやってるっての。こういうやつのが使いでいいんだよなー」
無駄口を叩きながら、ふたりしてガシガシ頭を拭く。
「シャワー浴びてこいよ」
「んー」
風呂場に入って、速攻でシャワーを浴びる。
雨で冷えた体が温まりひと心地する。
扉越し、脱衣所に入って来たことがわかる。
「タオルと着替え、置いとくー」
「おー」
風呂場からでて、着替えに手をかける。
……ん、なにこれ?
浴衣??
「おさきー」
首にタオルをかけて胸元を隠す。
「飲みもん、ここ置いとくから後は適当にやってて」
「んー」
返事もそこそこに畳の上に寝転ぶ。
とてもじゃないが、はだけすぎてどうしていいかわからん。
ガラス瓶を手にぐっと飲むしぐさが破壊力抜群。
イケメン、爆発しろ。
そんな内心はおくびにも出さず。
「なに、これ」
「ティーソーダ。ここら辺で国産紅茶作ってんだよ」
「へぇー、おもしろー」
ちらっと見上げる。
なんか、いいな。
こういうの。
「ふふっ、至れり尽くせりー」
顔を上げて、一言。
「まぢ、嫁にほしー」
「オコトワリデス」
本心を潜ませた言葉は速攻で叩き落とされる。
「ひど、即答?」
ヤメテ、冗談でも傷付くわ。
キュッと胸が軋んだ。
そんなことを考えていたらすぐそばに、奴がいた。
「俺、もらうほうがいいんで」
「……」
耳元で囁かれる、そんな距離。
ナニヲ イワレタ
「シャワー、あびてくる」
固まったまま置き去りにされる。
外が明るい。
じき、雨があがる。
驟雨白雨ともに急にどっと降りだして暫くするとやんでしまう雨、夕立などですが、驟雨には馬が駆けるような疾走感、白雨には雨が白っぽく見える様子と少し違ったものらしいです。
ふたりの見え方の違い、みたいにできたらと頑張りました。




