驟雨
地面を叩きつける雨。
けぶるふたつの人影。
竹林を抜ければ国道にでる。
ぽつぽつと現れ始める民家。
その中の一軒、椿に囲まれた平屋。
庭に入れば、敷き詰められた砂利が鳴る。
勢いよく引き戸を開く。
「ただいまー」
「誰か居るん?」
「たまに」
「へぇ」
広めの上がり口の先には低めのタンスが置かれている。
引き出しからタオルをふたつ取り出し、ひとつ手渡す。
「この間、いとこが連れ込んでた」
「……まじですか」
元々は祖母の家だったものを相続した。
法事で使うか夏期休暇にしか来ることがない。
叔母に預けた予備の鍵をいとこが勝手に持ち出しているのだ。
田舎あるある。
手渡したタオルにはでかでかと土建屋の屋号がプリントされている。
広げてまじまじ見ている様子が可愛い。
「おー、レトロ」
「今もやってるっての。こういうやつのが使いでいいんだよなー」
無駄口を叩きながらふたりしてガシガシ頭を拭く。
「シャワー浴びてこいよ」
「んー」
扉越し、風呂場に入るのを確認して脱衣所に入る。
洗濯カゴにはべちゃべちゃに濡れた服が放り込まれている。
浴室では絶え間ない水音。
「タオルと着替え、置いとくー」
「おー」
柱にぶら下げてあった栓抜きと冷蔵庫から取り出したガラス瓶を掴む。
エアコンの除湿をかけ扇風機をまわす。
「おさきー」
「飲みもん、ここ置いとくから後は適当にやってて」
「んー」
返事もそこそこに畳の上に寝転ぶ。
しじらの浴衣姿がししどけない。
ガラス瓶を手に、ぐっと飲む。
ふっと甘さが来たと思ったら、青みのある渋さが炭酸とともに一気に口の中に広がる。
後に残るは、わずかな苦み。
「なに、これ」
「ティーソーダ。ここら辺で国産紅茶作ってんだよ」
「へぇー、おもしろー」
瓶を眺めると紅い液体の中、炭酸の泡沫が浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返している。
「ふふっ、至れり尽くせりー」
顔を上げ一言。
あざとい、わざとか。
「まぢ、嫁にほしー」
「オコトワリデス」
「ひどい、即答?」
おどけて拗ねるフリは失敗している。
本人は気付かない。
しゃがんで顔を寄せ、耳元で囁く。
「俺、もらうほうがいいんで」
「……」
触れるか触れないか、そんな距離。
「シャワー、あびてくる」
立ち上がって風呂場に向かう。
さて、この先どうしよう。
外が明るい。
じき、雨があがる。




